Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2009年2月号 UNHCR現地事務所の目的は難民保護

2009年07月06日 | 人権
【写真】UNHCR現地事務所スタッフとの面会を待っている難民

UNHCRの難民キャンプ現地事務所は、人権保護という彼らの役割を、実際に果たしているのだろうか? 難民は確信が持てない。

現地事務所は、苦情の申し立てや権利の主張について、UNHCRの職員と難民が直接コンタクトできる窓口として設けられている。難民の待遇を監視し、権利が保護されているかどうか確認するのも現地事務所の仕事である。しかし多くの難民は、最も大切な危機管理でこのシステムは機能していないと思っている。

キャンプのUNHCR“前線基地 ”

UNHCRのスタッフは、定期的に現地事務所を訪れ、難民の苦情を聴取し、フィードバックを適宜行い、必要なケースを担当官に提出している。難民のUNHCR組織との接点は非常に限られており、この現地事務所は、難民がUNHCR職員に直接自分たちの保護を訴えることができる、唯一公開の場である。

UNHCRカクマの保護活動報告によると、現地事務所の視察目的は、難民取扱の状況を監視し、彼らの人権が守られているかを確かめることである。「現地事務所におけるプロテクション・スタッフの常駐は……個人のケースを監視することで……関係する支援者の助けを得て、代替できる安全確保の方法がないか探ることを視野に入れて、当事務所が継続的に危ない立場にいると見られる人を識別することにある」(p.1)

UNHCRフィールド・ユニットは現地事務所における活動を運営し監視している。UNHCRプロテクション・ユニット(PU) やコミュニティー・サービス・ユニット(CSU) の代表者が、現地事務所1と現地事務所3を毎月曜日と水曜日に訪れている。ルーテル世界連盟(LWF)も平和構築、紛争解決、ジェンダー、子どもの保護ユニットを通して現地事務所に参加している。

UNHCRの本国帰還と再定住ユニットは、現地事務所を訪れない。しかしUNHCRの匿名希望の職員によると、これらのオフィスに関するケースは、フィールド・ユニットによって時々集められている。

様々なコミュニティーからのケースワーカー達は、LWFコミュニティー・サービス・ユニットと、UNHCRオフィスを結びつける支援をしている。この点に関するケースワーカーの役割は、コミュニティーの様々なケースについて評価することである。評価後のケースは、それぞれ関係するオフィスに、文書によるレポートとして提出される。

現在カクマ・キャンプで活動している現地事務所は2つしかないが、ダダーブからカクマに移されるソマリア難民の為、カクマに新たな現地事務所が開設される予定である。

「恐るべき状況」

難民認定、家族の結束、自殺未遂等で状況が複雑になりUNHCRの支援を求めてきた、あるエチオピアの夫婦は、現地事務所が把握している、話せば長い物語の一例である。

この夫婦は2003年にカクマ・キャンプに着き、登録され、配給カードを渡された。彼らは4年間キャンプに居たが、難民認定を貰う為の認定インタビューに一度も呼ばれることはなかった。この間に、二人の子どもが生まれた。

2007年、夫婦は認定インタビューを受けたが、却下されてしまった。上訴したものの、再び却下された。その後、UNHCRの方針により配給カードは無効になった。

不思議なのは、カクマ・キャンプで生まれた二人の子どもには、10歳以下の未成年者なのに、配給カードが与えられている。

UNHCRの方針によれば、却下された申請人は、配給カードが無効になり、30日以内にキャンプを出ていかなければならない。そして、あらゆる援助を受ける権利はなくなる。この状況で、この夫婦は深刻な窮地に追い込まれ、強烈な失望感を感じ、夫は妻との離婚を決めた。

取り乱した母親は、生きぬいて行くため、そして子ども達を育てるために別の男と結婚した。これを書いている時点で、彼女は妊娠しているが、再び離婚している。

キャンプで法的に無視されている状況は、とうてい耐えられるものではなく絶望的だと悟り、この母親は何度も自殺を試みた。一番最近の自殺未遂は2009年2月5日である。

このケースに関係するケースワーカー達は、どのオフィスも彼女の危険な状況に気をもむこともなく、何の手も打たなかったと報告している。この件が現地事務所に提出された時のUNHCR職員の反応は素っ気ないものだった。ケースワーカーは「大惨事とは言わないまでも、なんとも怖い状況だ」とコメントしている。

事例と依頼人の範囲

現地事務所が受けるほとんどのクレームは、大別して4つに分類される。1)危険な状況に対するクレーム 2)性的およびジェンダーに基づく暴力(SGBV)或いは、コミュニティー内の社会問題 3)子どもの権利に対するクレーム、例えば早婚、性的暴行、子どもの誘拐など 4)UNHCRの官僚的方針についてのクレーム、例えば配給カードの現状、登録、事務官の判断、再定住、保護施設の必要性、など。

一般的な保護請求は、レイプ、暴行、女の子の駆け落ち、子ども誘惑、妻の相続、保護施設に関する争い、水に関する争い、そしてSGBV(性的暴力)である。この保護請求のケースのいくつかは、ケースワーカーやコミュニティー・リーダーの仲裁や斡旋によって解決されている。他の保護請求は、UNHCRプロテクション・ユニット(PU)に委ねられるが、「真正」保護請求でUNHCRの適格職員の仲介が必要とみなされるものだけに限られている。

現地事務所で扱われるものの中には、UNHCRの手続きやフィードバックに関し官僚的なケースが多々見られる。その中には、配給カードの再統合(家族のメンバーの失踪及び発見によるもの)、配給カードの分離(離婚などによる)、配給カードの有効化(UNHCRが配給カードを無効にした場合)、或いは配給カードの紛失などに関する請求も含まれる。

UNHCRによるフィードバックの長期の遅れによって、多くの難民は登録や資格検査の情報を現地事務所に求め続けなければならなくなる。例えば、多くの難民は資格審査のインタビューを1年以上前に終えているのに、UNHCRプロテックション・ユニットの資格決定を待ち続けている。こういう場合、申請者はUNHCRのフィードバックを「待ち続ける」よう指示される。

現地事務所のケースワーカーは、主に二種類の依頼人に関わっている。一つ目は、しょっちゅう危険な目に遭っているとか新たな問題が起きたと訴えてくる人たちである。彼らの発言は首尾一貫せず、全ての問題をケースワーカーに明らかにすることには消極的である。これらの依頼人は隠している問題を抱えているか不明瞭な目的を持っている。彼らは「恒久依頼人」と呼ばれている。

二つ目は、大部分の難民が持つ一般的な問題で、家庭内暴力、水の争い、保護施設の争い、そして貧困やキャンプでの長期滞在から生ずる多くのことについての訴えである。これらは、「真正のケース」と呼ばれている。

UNHCRの現地事務所に相談するこれ以外のグループとして、庇護希望者、新しく来た人達、そして、スーダン人で本国帰還したものの新規登録のため再びキャンプに戻ってきた人達がいる。

絶えることのない照会とあまりに少ないフィードバック

現地事務所で接する難民報告は、絶えることのない照会システムや正確なケース情報の欠如、フィードバックの不足により、多くの場合効率的とは言い難い。ルーテル世界連盟(LWF)と活動するあるケースワーカーの話によると、LWFとUNHCRの間にはコミュニケーション不足があり、適切な情報交換が欠けているとのことである。

ケースによっては、LWFとUNHCRの間で消え失せてしまうことさえある。たとえばケースワーカーがLWFコミュニティ・サ-ビスに提出したケースについて、ケースワーカーはLWFから、UHNCRに提出したと報告を受ける。ところが依頼人がUNHCRに照会すると、その件はまだ担当者に届いていないと言われる。

当該難民が無視されたまま、こうした状況が4年も放置されることさえある。この間、依頼人はLWFとUNHCRから、現地事務所で確認するように何回も要請される。

多くの難民はカクマ・キャンプに10年以上、時には18年間もとどまる。こんなに据え置かれると、多くの難民はフラストレーションがたまり、落ち込み、希望を失い、自殺に至ることまである。このような事態は、難民の諸問題に対するUNHCR担当者の回答の遅れや無回答によって、さらに悪化する。

忘れられ絶望的に

ケースの処理手続きに問題が生じると、権利を奪われた依頼人は、ケースワーカーが加担しているのではないかと疑い、ケースワーカーに険悪な態度をとったりする。このような強烈な絶望感はエスカレートすることもある。ケースワーカーがコミュニティーの依頼人によって激しい暴力を受けた例も二件ある。同じ理由で、大勢のケースワーカーが脅しや、嫌がらせを経験している。

2009年1月、LWF平和構築ユニットのケースワーカーが殺害の脅迫を受けた。息子をアルコールの過剰摂取で亡くした現地ケニア人が、そのケースワーカーの扱い方が悪かったからだと脅迫してきたのだ。このケースワーカーは、ケースワーカーが危険に曝されるのは深刻な問題だと報告する。「これは、とてつもなく大きな挑戦です。殺すぞと脅されたときは、私も人間ですから、本当に恐ろしくて、仕事を十分にすることが出来なくなりました。集中出来ませんし、行動範囲も限られてしまいます」

このケースワーカーが言うには、UNHCRプロテクション・ユニットは、こういう事態に対して何もしてくれず、依頼人から殺害の脅迫を受けても保護してくれない。「ケースワーカーに危険な問題が起きた時、UNHCRはケースワーカーの保護のために、速やかに何らかの行動を取るべきである。彼らはそれをしない! 彼らに無視され、我々は苦しんでいる」

このケースワーカーに、UNHCRはこういうクレームに対して、なぜ緊急に素早い対応を取らないのだろうと聞くと、こう答えた。「私には分からない。我々がUNHCRプロテクション・ユニット(PU)に報告してもなぜか何も行動してくれない」

しかし、ケース処理の遅れや、もどかしい照会システムで、依頼人が自暴自棄になるのはわかる。

ある事例で、コンゴ人の家族が、見知らぬ現地ケニア人から殺害の脅迫を繰り返し受けたことがある。家族の長であるファラジャ(仮名)によると、このケースは2006年10月にLWF平和構築ユニットに調査が委託され、2006年11月にUNHCRに移管されるはずだった。

現地事務所で何度かのインタビューを受け、ファラジャは、2007年2月にはUNHCRプロテクション・ユニットに移管されたと確信していた。LWF平和構築ユニットからは掲示板に名前が載るまで待つように言われた。しかしUNHCRから何も反応がないので、LWF平和構築ユニットは家族に、現地事務所を訪ねフィードバックを求めるよう助言した。

家族は、2007年の1年間ずっと、現地事務所にフィードバックを求め続けた。UNHCRの職員からは、もうすぐ面接の呼び出しがあるから待つようにと言われた。

2008年初頭、ファラジャは保護担当の職員に面会を求めた。ところがその面会で、このケースはまだLWF平和構築ユニットからUNHCRに照会されていないと言われた。

それからの9か月間、ファラジャは現地事務所にこの問題をフォロー・アップするよう持ちかけ続けた。LWF平和構築ユニットは、この問題はもうUNHCRに照合していると主張、一方のUNHCRは、まだ受け取っていないと言い張った。

ファラジャによると、このケースで、UNHCRプロテクション・ユニットの同じ代表者に2回会うことは難しいそうだ。最初の2年間、現地事務所に行って会うのはいつも新しいUNHCRの代表者だった。今日は女の人、でも来月はケニア人、その翌月は白人の女性かもしれないのだ。

今、家族は完全な困惑状態に陥っている。彼らのケースはLWFの手にあるのか、それともUNHCRに届いているのか、ひょっとして全部消えてしまったのだろうか? 現在のところ関係する職員は誰もそのケースの在処を知らない。2009年には家族のジレンマは3年目に入る。ファラジャは家族の絶望的状況を誰が助けてくれるのか分からないと言う。

UNHCRは現地事務所で様々な課題に直面する

ある匿名希望のUNHCRフィールド・ユニットの職員によると、UNHCRは現地事務所での効果的なサービスに関して多くの課題をつきつけられているという。そして依頼人に対するフィードバックの遅れや、登録手続きの長期遅延を指摘した。現在行われている難民認定は2003年から2006年にカクマ・キャンプに到着した人達のものだという。さらに、水や食糧、保護施設、健康管理、教育といった基本的なサービスにおける多岐に渡る課題も指摘した。

匿名希望のUNHCRプロテクション・ユニット職員によると、ほとんどの難民は現地事務所のサービス提供に失望している。難民はケニア人の人道支援スタッフを信頼せず、外国人スタッフに話を聞いて貰いたがる。国外から来た人道支援スタッフは、コミュニティーの問題で、より中立で信頼できると難民に受け止められている。

UNHCRの白人職員は、現地事務所ではいつもケニア人や現地スタッフに比べより多くの依頼人から相談を受けると言う。彼女は「皆、ムズング(スワヒリ語で白人)に会いたがっている」からだろうと思っている。

LWFの本件に関係する職員は、この問題に対するコメントを拒否した。LWFのプログラム・コーディネーター、ウイリアム・テムブ氏によると、「この報道に対して今後どう対処するかは、関係機関で構成する委員会の提案次第」だそうだ。


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