理系母の療育と自閉症児の成長の記録

3歳で自閉症スペクトラムと診断された息子。約3年でDQ57→97。14歳で診断が外れ,高校受験を経て通常学級デビュー。

電子母とリアル母

2021-07-07 17:31:03 | 育児

電子母の進化」の続き

 

息子が小学5年生の3学期末から6年生の1学期にかけて,コロナ休校がありました。

学校の休みは息子にとっては嬉しいものでも,母にとっては地獄。

息子がもてあましている暇を,フルタイムの仕事をこなしながらどうコントロールしたものか。その闘いは突然に始まりました。

 

ただ幸いなことに,AmazonのAIスピーカーEchoを介してじじ(私の義父)による宿題の見守りを続けていたおかげで,サポート体制の下地は整っていました。

じじも協力を快諾してくれました。

問題は息子です。

天から降ってきたような自由な時間。その誘惑を退けて勉強しよう!とはならないのが子どもの心理。家で学校と同じだけの勉強をこなすことは困難なので,少しでも自ら勉強に取り組む姿勢をつけることを最初の目標としました。

 

宿題以外で最初に取り組んだのは社会の参考書の音読です。

社会を選んだのは,社会のテストが他と比べて悪い,というか,その間違え方から判断して社会に出てくる語彙の覚えが悪く,語の使い方がめちゃくちゃだったからです。

本人の興味のなさにも一因はありますが,うちには新聞もテレビもなく,ニュースは私も夫もそれぞれがネットやラジオで個別に確認しているため,時事ネタを息子が耳にする機会がなかったことも影響していたと思います。

そこで,用語に慣れるという意味で,参考書を音読するのをじじに聞いてもらうことにしました。参考書はGakkenの「?に答える小学社会」を用いました。

 

これはテーマとしては非常によかったのですが,息子の滑舌が悪かったり読み間違いがあったりして,それをじじが指摘するたびにけんかに発展(というか息子が怒り出す)してなかなかうまくいきません。息子は指摘された間違いをうまく受け入れられず,そんなこと言っていない!と言い張ったり(言ったつもりはなくても,そう聞こえてしまう場合もあるよね,って諭しても受け入れ不可),自分で勝手に聞き間違えておいて怒られた!と被害者的に受け止めたりと,困難続きでした。

しかしながら,そういった争いの全部が全部,息子に否があるというわけではなく,例えばネット通話の音声品質の問題だったりとか,じじ側の思い違いというのもなくはありません。

 

これらの問題は,本当に些細なことですが,そもそも勉強なんてしたくないと思っている子どもにとっては非常に大きな障壁となります。家庭勉強を続けてもらうためにはそういった些細なことを一つ一つ解決していくほかありません。

 

ネット通話の音声品質に関しては,夫がネット回線などを調べて改善してくれました(前記事「電子母の進化」を参照。

じじの方の誤解をなくす,というか息子が文章をきれいに読み上げられなくても正しい文章をじじが確認できるように,同じ参考書をネットで注文してじじに送りました(欲しい本が注文翌日に必要な人に届くって,すばらしい時代ですよね!)

 

こうして本当に少しずつ問題を改善し,最初は10〜20分だった勉強時間が,1学期が終わるには30分くらいに増えていきました。

 

最初は勉強内容も参考書の読み上げだけでしたが,読売KODOMO新聞の音読も始めました。これも,同じものがじじの家に届くように,こちらから手配しました。

 

受験勉強開始!

そして2学期に入る頃,息子が近所の中高一貫校を受験したいというので,急遽,受験勉強を開始することにしました。見学に行った際に見た食堂でお昼ごはんを食べたい!という程度の理由でしたが,きっかけは何であれやる気になったことが大事ですので,勉強量を増やすことにしました。

受験する!とはいっても基礎学力が十分ではなかったので,4教科の総合学習を進めることにしました。使った教材は学研教育出版の「中学入学準備 小学の総復習全科 英語つき」です。

これも息子用とじじ用,それぞれに用意しました。

 

私は毎朝,宿題としてどのページをやるか(1日1〜2単元くらい),付箋で指定したテキストを息子に渡し,じじにはそのページを連絡。息子は放課後等デイサービスもしくは帰宅後にその課題をやり,じじと夜,決まった時間に答え合わせ。その後,じじはその日の正答率や勉強態度をこちらに報告,私はじじの報告とテキストの実物を見て息子の理解度をチェックしつつ次の課題を出す,という流れを繰り返しました。

 

この指示出しが大変な作業で,毎日4時起きで対応しました。

しかし,息子もそれ以上にがんばり,2学期から3学期の始めまで,毎日1時間以上勉強を続け,先の問題集も4回終わらせて受験に挑みました。

受験の結果は残念ながら不合格でしたが,本人にとって大きな成長になったと思います。

 

また,母としても,塾に行かずに家で勉強してくれたおかげで仕事を続けることができたので本当によかったです(息子は過集中タイプで周囲をちゃんと見ないので,送迎なしには塾に通わせられなかったので)。

 

このような勉強スタイルを確立できたのは,電子母=Echoというデバイスがあったからこそです。でもその電子デバイスで人間をコントロールするには,まだまだ人間の補助が要ります。電子デバイスがもたらす革新的な変化に比べたら,私のやっていることは本当に地味で,息子の前に転がった小石を一つ一つ取り除くような作業です。ただその単純な除去作業が息子を歩き出させる結果につながったのかな,と自分では思っています。

 

電子母ありがとう。リアル母もがんばりました。

もちろん,じじにも大大大感謝です。

 

 

 

次回は,この勉強で,中学生になった息子の浅知恵に対抗する小技を紹介します。


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電子母の進化

2021-07-05 14:34:33 | 育児

前回の記事「電子母」では,母の仕事を電子デバイス(AmazonのEcho)に肩代わりしてもらう方法について紹介しましたが,それでもなお手が足りないことはいくらでもあります。

今回は電子デバイスをさらに活用した対策を紹介します。

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Echoのリマインダー機能を導入してからというもの,私が息子に口やかましくあれこれ注意することは圧倒的に減りました。

しかし,呼びかけはあくまで機械から息子への一方通行なため,息子の行動を促すことには有効でも,してほしくない行動の抑止力としては働きません。宿題から逃れようとする息子を止めるのに,リマインダーは無力でした。

Echoの導入をしたのは小学校4年生で,息子の宿題の量も増えていました。これを息子が自ら進んでやるはずもなく,宿題をやりとげるのに見守り,というか見張りがいります。

とはいえ,私が仕事から帰ってくる時間は18時〜19時すぎ,そこから夕食を準備して食べさせて片付けて……となると,家事をこなすだけで精一杯。手が回りません。

さらに,息子には7歳離れた幼い弟がいて,この2人をどうにかしつつ,家事を終わらせるのは至難な技です。

息子を机に座らせた後に弟に別室で動画を見させて夕食の片付けをしていると,息子がいつの間にか席を立って,弟の幼児向け番組を覗き見しているではありませんか。注意して何度席に戻しても同じことの繰り返し。

息子を机につなぎとめておいてくれる人がほしい……,そこで思いついたのがじじ(義父)の存在です。

 

じじの家は飛行機に乗らなければ行けないほど遠く,ちょっと家に来て息子を見張ってくださいとは簡単には言えません。そこで再びEchoの力を借りることにしました。

 

Echoはリマインダー機能のほかに,他のAIスピーカーにはない優れた機能がついていました。「呼びかけ」という機能です。これは,Echo同士で顔を見ながら対話ができるというもので,同一アカウントであれば片方からの呼びかけで自動的に接続できる,つまり相手が応答するといったリアクションをとらなくても向こうの様子を見ることができるのです。

 

Echoを息子の机に1台,じじの家に1台設置する必要があるので最初は投資がいりますが,この問題を解決できるならと早速導入することにしました。じじの家のEchoの設定は,夫が直接出向いて行いました。家にEchoを導入してから2カ月後,小4の3学期から遠隔の見張りを開始しました。

最初はとにかく机の前に生きた目を置くことが目的で,勉強があまりはかどっていなさそうのときに,適宜声掛けをしてもらうようにしました。

 

この作戦は,家の中に手が増え,じじにとっても孫の顔を見られる機会が増えて一石二鳥!と完璧に思えたのですが,そんなにすべてが順調に運んだわけではありませんでした。

 

宿題の量は,低学年から比べたら増えたと言っても,集中すれば10〜20分で終わるような量。それがすぐに集中して時間通り終わることもあれば,気乗りせずまったく進まないこともあり。それに対し,じじが声掛けをしても反発してけんかになったり,と,日によってできたりできなかったりの繰り返しになりました。

 

オンラインでの見守りは,対面式と異なり,ネット回線や機械の問題で音がとぎれとぎれになってしまうこともマイナスに働きました。

オンラインでの対話は,互いに相手の話を聞く意思のある者同士が話せば,たとえ聞き取りにくい場面が合っても成立しますが,息子はもともと人の話を聞くのが苦手。日本語の理解も柔軟性にかけるため,一つの言葉だけ聞きかじって勝手な解釈をして怒り出したりと,息子の性格上,難しいところがありました。

 

しかしながら,うちにはほかの選択肢がなく,Echoを介した見守りにかけることにしました。夫は,けんかの原因となりがちな音声品質の低さを改善するために,ネット回線をチェックしてくれました。調べてみたら,家のネットが遅かったのは電話回線の差込口(モジュラーコンセント)とモデムをつないでいたモデムケーブルが悪かったらしく,新しいものに取り替えたら通信速度が上がり,音声品質も安定しました(ケーブル,通信速度のキーワード検索でいろいろ情報がでてきます)。夫実家のケーブルも,夫が取り替えに行きました。

私の方も,けんかがあったときにじじと本人の双方に聞き取りを行うなどして,対策を考えました。

 

こうして何とか宿題の見守りを軌道に乗せることができました。

こうなるとEchoは電子母ではなく電子じじとでも呼ぶべきでしょうか。

機械の中身が実は人間,という仕事を「メカニカルターク」と呼ぶそうです。

Echoは進化して,メカニカルタークをこなすようになりました。

 

 

こうして1年以上が経過した頃,コロナの影響で学校が休校になり,このメカニカルタークが大活躍!となりそうですが,そうそう簡単にはいきませんでした。

自主勉強やその他の勉強が定着するまでには,かなりの工夫と労力がいりました。次回はその詳細をお伝えします。

 

つづく

*2021年7月6日,一部修正


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電子母

2021-05-12 17:20:10 | 育児

子どもを育てていると何かと忙しいですよね。

 

母子手帳には「家族や周囲の協力を得ましょう」と書かれていますが,協力者がいる状況だったらこんなに困っていないと思ったことはありませんか?

 

手が回らない,もっと手が欲しい,と思っても手は増えないし,自分でできることと動ける時間には限界があります。そこで,母のタスクの一部を電子デバイスに肩代わりしてもらうことにしました。今回はその一部を紹介します。

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息子Hは,勉強やテストはほどほどにできるのですが,自分の管理,とりわけ時間の管理が苦手です。時計を見ながら決まった時間までにお風呂に入って歯磨きをして寝るとか,決まった時間までに学校の準備をして決まった時間に家を出る,ということができません。どんな行動も親の声かけが必要です。

 

これが本当に骨の折れる仕事で,ぶっちゃけ学校に持って行く物の準備なんかは私が自分でやってしまった方が早いのですが,子どもの成長のためにも何とか自分でできるようになってもらうことが重要で,その手助けをしなくてはならないのが難しいところです。あれやって,次はこれやって,と息子を見張りつつ指示を出す。しかもその指示を一回で聞いてくれないので,何度も何度も何度も繰り返さなければなりません。「何で私がこんなこと何度も言わなきゃいけないのか……」と思わずため息がでます。

 

多くの場合,「何で私がこんなこと……」というときは「子供が自分でできればこんな苦労しないですむのに」といったことを意味していると思います。しかし息子の場合,その「自分でできない」というところが障害なので,そこを嘆いても問題は解決しません。ただ,「こんなことをする」のは「私」でなくてもいいはず。「私」に代わって息子のペースメイキングをしてくれる人がほかに家にいればいいのですが,夫(同じく理系研究職)は帰りが遅いので,やはり頼める「人」はいません。そこで夫が「人」の代わりに「機械」を用意してくれました。AmazonのAIスピーカー「Echo」です。(写真は旧型)

AIスピーカーはGoogleなど他社製品もありますが, Echoには決まった時間に任意の文章を読み上げられるリマインド機能があり,Echoに声かけを肩代わりしてもらうことにしました。導入は今から2年以上前,息子が小学4年生のときです。

お風呂,お風呂上がりに保湿剤を塗る,布団に入る,学校に行く,など1日の決まったイベントが,決まった時間にスピーカーから音声で流れるよう,夫が設定してくれました(設定はAlexaアプリで行います)。

この電子母による声かけの最大の効果は,薬の飲み忘れが減ったことです。息子は花粉症,ハウスダストとアレルギー持ちで,通年,抗アレルギー剤を服用しています。これを飲み忘れると,ずっと目をこすっていたりして集中できず,生活の質が落ちまくって大変です。なのに息子は自分で服用することを覚えていられないし,私もチェックしきれず,飲み忘れが半分くらいありました(薬ケースや罰金×ご褒美制度など手を尽くしてもその精度でした……)。しかし,このリマインダーの導入後,飲み忘れは1割くらいまでに減りました。

ただ,電子デバイスも完璧ではありません。時間も読み上げ内容も完璧で間違えることはありませんが,毎日同じように繰り返されると音声に慣れてしまい,スルーされることが増えます。なので電子母にすべてを任す,ということはできないのですが,それでもやはり存在価値は大です。というのも,息子にスルーされても,私自身のリマインダーにもなりますし,私が自分の口で何度も注意していたことの最初の1回,2回,をEchoがやってくれると,そのあとに私が注意する回数を減らせる効果があり,私も心に余裕を持って息子に声かけをすることができるようになりました。

注意の回数と親の怒りは相関があると私は考えており,注意する回数が増えれば増えるほど注意する側の怒りレベルも上がり,親子関係が悪化しやすくなります。

(下記図参照)

なかなか言うことを聞かない子どもに対する有効な指示法として,端的な指示を淡々と繰り返す「ブロークン・レコード(壊れたレコード)」という方法があるそうです。

親が怒りで壊れる前に,壊れた機械の役割は優秀な電子デバイスに任せた方がよろしいかと。

 

電子母の進化」につづく

 

追記:

Googleのスピーカーやディスプレイでも,1日のスケジュールにあわせて通知ができる「ファミリーベル」という機能が2021年からできたそうです。

https://support.google.com/assistant/answer/10011399?hl=ja&co=GENIE.Platform%3DAndroid


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数をおぼえてから算数が得意になるまで

2021-04-26 14:30:24 | 発達障害

「数をおぼえる」までの続き

 

先の記事で述べましたが,10までの数はいろいろな知育アプリなどを使って4歳5〜6カ月で数えられるようになり,20までの数もそれから1カ月くらいで数えられるようになりました。

 

数量や数値の概念の獲得に知育アプリによるところが大きかったのはもちろんなのですが,同時期に入れた「Hey Day」という農園アプリも影響したと思います。

これは知育でもなんでもない,一般向けの娯楽アプリで,小麦を蒔いて収穫して増やす,といった単純なものですが,息子はものすごくはまっていました。このアプリでは自分の所有している農作物の量が数で表示されたり,作物の売買などでお金が増えたり減ったりして,数を意識することが多かったと思います。計算することはなかったかもしれませんが,どっちが多い少ないといった概念はここでしっかりしました。

 

こうして数の概念が定着したころに,初歩的な算数アプリをipadにいくつか入れてみました(4歳10カ月頃)。最初に入れたのは「りんごの足し算」(今はないようです)というアプリで,数字のボタンをおすと,その数だけりんごがゴロゴロと出てきて,さらに数字を押すと違う色のりんごが出てきて,さてりんごは全部でいくつ?というのを数えながら答えさせるというもの。1+2=のような数式は出ませんが,電卓のような数字ボタンと「+」と「=」のようなボタンがあったので,ここでなんとなく計算に必要な記号を認識したようです。

 

ただこれですぐに算数に目覚めたわけではありませんでした。転機が訪れたのはそれから1年近く経ってからのことです。年長の夏休み,1歳年上のお友達がうちに遊びに来ました。このころはタブレットやスマホが今ほど普及していなかったので,その子はうちのipadに興味津々。小学1年生ということもあって,すでに入れてあった算数アプリ「おサルさんの算数−空飛ぶアドベンチャー」をサクサク解いて披露してくれたのです。これに息子は釘付け。ゲーム性もあって,息子もどはまりしました。その後,このアプリにのめり込むほどに恐ろしい速さで計算能力を獲得し,就学前までには九九をほぼマスターするまでになっていました。

 

このアプリの優れていた点は,ゲーム性もさることながらステージの設定にあったと思います。例えば足し算から始まって,問題がランダムに出るのではなく,「+1」の問題をひたすら解いたあと,「+2」のステージに移行するといった具合です。いくら数の概念が定着していても,いきなり色々な数の足し算がランダムに出てくるようなアプリだったら,足し算のとっかかりとしてはハードと言えるでしょう。このアプリで1つ大きい数(+1),そして次に2つ大きい数(+2)がイメージできるようになって計算ができるようになったのだと思います。

 

その点をよくおさえたくもんの幼児ドリル「はじめてのたしざん」シリーズは優れもので,ものすごく簡単な問題から作られているので計算の概念が得やすいのと,簡単な構成だったので,息子に「オレ,できるぜ!」とその気にさせる効果もありました。これらのドリルは先のおサルさんアプリと並行して進め,小学校就学前に「たしざんのおけいこ2」まで終わらせました。

 

そういうわけで,小学校に入学したときには自分でも算数が得意という自信ができていたように思います。入学したのは支援級ですが,計算力があることを担任の先生も理解してくれたので,学校に慣れた2年生から普通級で算数の授業を受けるようになりました。

 

息子のように「得意」が突然目覚めたのはたまたまかもしれませんが,いろんなベースやきっかけが下地にあったことが重要だったと思っています。そのきっかけの1つを作ってくれたお友達には今でも感謝しています。


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数をおぼえるまで

2020-12-12 20:46:33 | 発達障害

小6の現在,息子の得意科目は算数です。

特別支援級に在籍しながら普通級の授業を受け始めた科目も,体育についで算数でした(2年生〜)。

アスペルガータイプは算数が得意な子が多いので,息子も最初から算数が得意だったと思われる方もいるかもしれません。

ですが,そうではありませんでした。今回は,まったく数に関心を示さなかった息子が,算数が得意になるまでの経過について紹介したいと思います。

 

数の概念は普通,何歳くらいからできてくるのでしょう? はっきりはわかりませんが,遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表には「数の概念がわかる(3まで)」が3歳6カ月に位置付けられています。

一緒に(というか母が一方的に)数を数えたり,というようなことは物心ついたころからずっとしていたのですが,ほぼ無反応でした。数についてちゃんと教え始めたのは4歳2カ月ごろ,自閉症の診断を受けてから(3歳9カ月)しばらくたってからのことです。

 

ここで整理をしておきますと,ただ数といっても,数量としての数の概念と文字としての数字の認識は別物なので,まずは数量としての概念を覚えてもらうことを目標にしました。

 

このころはコミュニケーションもままならなかったので,こちらから授業形式で数について教えるというのは困難でした。

しかし,そんな息子でも,こっちにまっすぐと向き合ってくることがありました。

それは,自分の要求を通したい──自分の食べたいものを食べたいと訴えてくるときです。

卵を焼いてほしい,袋に入ったお菓子を食べたい,そんなときこそチャンスです。訴えられたら「何個ほしいの? 1個ね」,と数をはっきりと強調して伝えるようにしました。

 

ここで気をつけたのは,最初に1という数量をしっかり定着させることです。

たくさんほしがられても,渡すのは1個だけ。さらに欲しがったらまた1個を渡すというのを繰り返しました。

また,息子が関心のあることがらについては,こちらからも「1個とって」などと,1単位で指示を出したりしてみました。

 

1という数量を理解するのにどれくらいかかったか,正確な記録がなく,すみません。ただ何週間とはかからなかったと記憶しています。

1がしっかりと定着した時点で2を教えました。「何個ほしいの? 1個,2個ね」といった感じで,ほしがるものを数えながら渡しました。こうして2が定着したら3を,といった具合に,各数量の概念が定着したら1つ大きい数に移行していきました。

 

数を数えることになれてきたらしめたもの。

ipadのアプリには数量を数える知育アプリがたくさんあるので,いろいろ与えてみました。「みんなで数をかぞえよう 123 - 数えることを学ぶ」や,「Counting with the Very Hungry Caterpillar」(はらぺこあおむしの数えるアプリ,今は利用できないようです),「かぞえる〜る」(こちらも残念ながら今はないようです)を喜んでやっていました。

 また,数量理解と並行して,数字を覚えるのにもやはりipadアプリを使いました。息子が一番気に入っていたのは,数字の形の道に沿って列車など乗り物を走らせる「モジルート」ですが,それ以外にも点つなぎ系のアプリも気に入っていました。また,写真に隠れた数字を探す「数さがし」も親子で楽しめてよかったです。

 こうして数を教え始めてから4カ月後には,10までの数が数えられるようになっていました。

 

 

数をおぼえてから算数が得意になるまでにつづく

 


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知能検査(KABC-2)結果詳細

2020-11-08 12:35:59 | 発達障害

今日は直近で受けた(といっても1年近く間が空いてしまいましたが……)知能検査(KABC-2検査)の結果の詳細についてお伝えしようと思います。

 

検査時の実年齢は11歳5カ月で

認知総合尺度 98

習得尺度 78

という結果でした。 

 

認知総合尺度は勉強とは別の認知能力の評価で,地頭みたいなものでしょうか。

それに対し, 習得尺度は勉強することで獲得した学力を評価するもので,認知総合尺度より習得尺度が低いのは、持っている認知能力レベルに比べて学力が低いことを意味するそうです。

 

認知総合尺度は,数字だけ見れば年齢相応の平均的な頭と言えなくもないですが,その中の能力にばらつきがあり,平均すると98という結果でした。

具体的には,物語を完成させたりやパターンを推理する課題で評価される「計画尺度」は116と高かったのに対し,言われた言葉の順番や手の動作の順番を覚えて再現する「継次尺度」は82と低めでした。後者は時間軸に沿って記憶しておく能力が試されるもので,確かに日頃の息子の苦手とかぶるものがあります。目的(夜9時までに布団に入って寝るなど)のために必要な課題(入浴,歯磨き,明日の学校の準備)を順番に終わらせるのが難しく,To Doリストを作ったり考えられるありとあらゆる手段を尽くしているのに,一つ一つ親や先生が声かけをしないと終わらせることができません。

そもそもそういうところが苦手だったのかとわかると納得もしますが,具体的な解決策についてはまだ見いだせていません。

 

習得尺度が低かったことについては,検査を受けた頃,精神面で不安定なことが多く,普通級での授業をあまり受けていなかったことが影響していたかもしれません。


習得尺度内の各尺度では大きな差はなかったそうですが,はっきりとした苦手も見られました。

例えば「算数尺度」では,息子が計算ミスの多い繰り上がりなどのある課題が出され,そのまま低めの評価になりました。これは継次尺度の苦手が関係しているかもしれないと言われました。

また,「読み尺度 」で文の理解に苦手があり,言われたことをジェスチャーで伝える課題でずれた解答があったそうです。

 

先の投稿「言語も伸びる」で言語能力の成長に触れましたが,伸びていること自体は実感として間違いなく感じています。ただ,以前の言語の検査で「柔軟性」に欠けると指摘されており,思い込みが激しく,一部を読んだり聞いたりして間違った考えを持ったまま修正がきかず,周りと衝突することが日常生活でよくあります。これも自閉症児に多い苦手なのかもしれません。

 

これについては試行錯誤しながら対策を検討中です。

ある程度まとまったところでまた報告させていただこうと思います。

 


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言語も伸びる

2020-07-19 07:36:15 | 発達障害

このブログでは息子の成長を発達指数(DQ)や知能指数(IQ)という指標で報告してきましたが(療育と発達検査の略歴),その中でいまいち伸び悩んでいたのが言語です。

 

読むのも書くのも小学校就学前からできてはいたのですが,口から発する日本語がとても不自然で,発達検査でも言語の項目はおおよそ2年遅れくらいという判定が続いていました。

 

言語は成長が難しいかな,なんて考えていたら,4年生から5年生に上がるくらいのときの言語検査(LCSA検査)で急に評価が上がり,読解能力(リテラシー指数)にいたっては114と,100を超える結果が出ました(10歳2カ月)。

 

この間,何をしたかというと,母としては特別な療育はしていません。

ですがこのことは息子の本を読む量が増えたことと関係していそうです。

 

学校の休み時間やデイで,外遊びに行かずただただ本を読んでいる。

家ではゲームもするけれど,ゲームをしてはいけない時間はやはり本を読んでいる。

 

本と言っても,最初に自分から夢中になって読んだのは,「コロコロコミック」と「でんじゃらすじーさん」など,正直,あまり言語能力には直接関係しなそうなものばかり(小学校入学直後)。ただそこで,本を読むことの楽しさを知ったのだと思います。

 

その後,エグスプロージョンの「本能寺の変」にはまったことから,織田信長の伝記漫画などを与えてみました(9歳0カ月)。最初はまったく読んでくれませんでしたが,1カ月後くらいに手に取るようになり,以降,いろいろな歴史漫画や伝記漫画を読むようになりました。

 

歴史や偉人に興味が出てきたところで,漫画でなく児童書も与えるようにしてみました。文章ばかりはきついかな?とも思いましたが,意外とすんなり読んでくれました。

 

「科捜研の女」がきっかけでミステリーにも興味を持ち,児童向けの「シャーロック・ホームズ」や「怪盗ルパン」シリーズも読んでいます。

今では科学本もかなり読みます。学研の「〜のひみつ」シリーズほか,漫画になっている歴史的名著「種の起源」なども気に入って繰り返し読んでいます。

 

興味を持ちそうな本をamazonで購入すると,次々と似たような本をサジェストされるので,amazonに提案されるがままに次々に本を購入して息子に与えました。

 

そういうわけで息子はすっかり本の虫。

 

本ばかり読んでいると「(療育的に)もっと運動した方が…」とよく言われたりしますが,本の虫もそれなりにいい面もあるのではないかなと母は考えています。


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最新の発達検査結果

2020-03-31 06:13:49 | 発達障害

過去記事「療育と発達検査の略歴」で去年並びに先日受けた検査の結果を追記しました。

結果に対する専門家のコメント等の詳細は近日アップします。

 

実年齢 10歳2カ月 言語検査(LCSA検査)

LCSA指数 91

リテラシー指数 114

 

実年齢 11歳5カ月 知能検査(KABC-2検査)

認知総合尺度(認知能力の評価) 98

習得尺度 (勉強することで獲得した学力みたいなもの) 78 


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支援級という選択3

2020-03-15 15:56:24 | 発達障害

支援級という選択2の続き

 

ほぼ1年ぶりのブログ更新。

自閉症児+発達障害疑い児のいる家庭でフルタイム勤務に加え在宅の兼業をしているため,ほんと時間が取れませんでした。すみません。

 

ブログを休んでいた間に息子も小学5年生が終わり,最終学年を迎えようとしています。

 

学校の成績は通常クラスの普通科目(国語,算数,理科,社会)でおおむね80点以上を維持しており,勉強面での課題はそれほど大きくありません。

 

でも,最終学年も引き続き特別支援級に在籍で,中学校も支援級に進学を希望しています。

 

で,なんでテストの点がそれだけ取れているのに支援級にいるの? と思われる方がいるかもしれません。実際によく言われます。

 

過去記事(支援級という選択1支援級という選択2)でもその理由にふれてきましたが,1番の理由をここであげます。

 

それは息子に障害があるから。

 

「障害」という言葉の定義は人によって違うかもしれませんが,私は最初,それは「できないこと」,「Disability」を指すのだと思っていました。

ですから息子が3歳のときに受けた発達相談で市の職員から「療育手帳を発行しますか?」言われた時には,息子を勝手に無能認定しないでほしいと憤りもしました。

 

でもその意味は息子を育てているうちにだんだんと変わってきました。

 

これまでブログで述べてきたように,息子は言葉を覚え,会話を覚え,学習することを覚え,今や知能検査や学校の成績だけ見れば平均的な小学生です。

でも,平均的な小学生のパフォーマンスを達成するに至るまでの苦労やその大変さは,普通の小学生とは全く比較にならない。その普通のレベルに達するまでのハードルが息子の「障害」

 

おそらく健常児を育てている親御さんの多くは,日本語は自然に獲得するものと思われているかもれません。

会話ができるようになるまでに,デジカメで息子の眼に映るあらゆるものを記録して話しかけたり,動詞のリストを作って1語1語チェックしたり,絵日記を作成して会話の練習をしたりなんてことは必要なかったでしょう。

 

ある程度会話が成立するようになってからも,苦労は続きます。

 

例えばあいさつ。

健常児であれば2~3歳児でもできるあいさつが,息子は小学校入学後もなかなか定着しませんでした。

毎朝同じ時間にマンションですれ違う人も毎回無視。これを直すのに,まず挨拶することの大切さを延々と説教し,親子で挨拶の練習を繰り返し,ターゲット(挨拶すべき人)が来る少し前に母がリマインドし,ちょうど出会うタイミングで母が「今だよ!」と声掛けをして,やっと挨拶をする,というのを数週間繰り返して,なんとか挨拶率50%くらいになるという効率の悪さ。

 

1つのことを教えるのにこれだけ手間がかかるので,当然ながら全部は教えられない。だからできないままのことも多い。すると周りから「親が教えてないから……」みたいなことを言われ,母もダメージ大。

 

その一方で,不器用な息子の横で逐一指導をしていると「親が手を(口を)出しすぎるから(子供が育たない)……」といったような目で見られることも多数。

親が手も口も出さずに外から見守っていて,その子が自力で学習して成長するなら,その子は健常児だと思います。

息子の場合,時を止めて永遠に見守れるだけの時間をつくれでもしないかぎり,とても無理。親の介入なしに自力で成長できるような器用さはありません。

 

そういったわけで,息子はまだまだ障害が多いと感じています。

 

〔テストの点が取れるのは,紙面で聞かれたことに対してそれに集中して決まった答えを出すだけなので,アスペルガータイプの息子にとってはさほど難しくないのかもしれません。一方で,決まった時間までにある目的を達成する(例:寝るまでに学校の準備と宿題,歯磨き入浴を他の誘惑を退けながら終わらせる)というような,やりようがいくらでもあって,周囲とのやりとりを含むような課題の方が息子には難しいみたいです〕

 

障害のある子を育てるには,とにかく時間も足りないし,手も足りません。

学校も同じです。

 

30人1クラスの普通学級の担任と6人1クラスの支援級の担任が1人の生徒に費やせる時間を比較すると,単純に5倍。

 

とにかく手のかかる息子。

少しでも多くの援助を得るために,私は支援級を希望します。


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支援級という選択2

2019-04-12 23:33:59 | 発達障害

支援級という選択1の続き

 

その年の支援級の新1年生は1人という悲しい状況でしたが,やさしい上級生に囲まれ,息子は楽しく学校に通い始めました。

 

発達検査ではいろいろ伸びていたものの,人の話を聞くことがとにかく苦手だった息子ですが,そこは先生に逐一注意,指導され,授業態度も少しずつよくなっていきました。そしてちゃんと授業を受けられる姿勢が整ってきたところで,2年生から普通級で体育や算数などの得意科目を受けるようになりました。

 

支援級の担任の先生とよく相談しながら普通級での授業を少しずつ増やし,4年生では体育,算数,理科,社会,国語の5教科を普通級で受け,1日のほとんどを普通級で過ごすまでになりました。テストもほとんどは80点以上とれています(療育と発達検査の略歴参照)。

 

で,ここまで成長すると,じゃあ何でまだ支援級に在籍しているの? 普通級には行かないの? と思われる方もいるかもしれません。実際,あちこちでよく聞かれます。

 

でも私も息子も中学校まで支援級を希望しています。

理由は大きく2つあります。

 

まずは息子の居場所があるということ。

 

息子は入学してすぐ,学校併設の学童保育に入っていたのですが,1カ月もたたないうちに行きたくないと言って私に泣きついてきました。勉強やルールなどがあまりない学童保育であれば,自分勝手な息子でも健常児と一緒に遊べて交流できてよいかと思ったのですが,実はそうではなかったのです。

 

発達検査やテストの数字だけ見れば普通下位に位置する息子ですが,勉強よりも子ども同士の輪に入っていくことの方がはるかに苦手だったのです。トラブルはなかったと学童の先生からは説明されましたが,孤独を感じたのでしょう。すぐに学童をやめ,デイサービスに移りました。

 

で,支援級の話に戻りますが,学校は勉強の場ではありますが,休み時間や給食など,子ども同士で過ごす時間もかなりあります。息子が普通級に移ったら,子ども同士で楽しく時間を過ごせるのか,まだまだ不安があります。支援級であれば,トラブルがあっても,生徒の人数が少ない分,先生が小まめに間に入ってくれます。そのうえ,息子が空気を読まない身勝手な発言をしたときも,すぐに注意してくれます。普通級だったらそうはいかないでしょう。先生が間に入ることで,社会的な場での人との接し方,距離間を少しずつ学習していけるのが支援級のいいところです。

 

それに,支援級に通う子どもたちはみんなそれぞれ苦手があるので,お互い違うことを受け入れる心ができています。クラスメイトには息子のだめなところを受け入れてもらいつつ,息子自身も不得意のあるほかの友達を受け入れられる心が育っていっているように感じます。

 

そんなわけで,支援級はいろんな子どもがいるのに,みんな本当になかよしで,息子も居心地がいいようです。5年生に進級した今日まで,学校を嫌がったことはありません。

 

あるとき息子がこんなことを言っていました。「何で(普通級の)みんなはなかよし(支援級)に来ないんだろう?人気すぎて入れないのかな?」

それほどまでに支援級が楽しいようです。

 

 

 

支援級という選択3に続く

 

 


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支援級という選択1

2018-11-29 16:50:20 | 発達障害

息子は3歳半から就学までの間にDQだけみれば57から97と標準近くにまで伸びたのですが,小学校は特別支援級を選択しました。

そして4年生まで過ごしてみて,支援級を選択してよかったと私も息子も思っています。

 

今回はその支援級に入るまでの経緯と,よかったと思える理由について述べていこうと思います。

 

 

 

********************************************************************************************************************

 

年長の年の9月のはじめに,市の教育委員会との就学相談がありました。

小学校で息子の通うクラスをどうするのがいいのか,話し合うためのものです。

 

自由勝手な息子の性格上,普通級はいろいろと難しいように思いましたが,では特別支援級があっているのかというと,なんとも判断し難いところがありました。

というのも,以前,息子と支援学校を見学に行った時に,その場を息子がとても嫌がったことがあったからです。自分のことはさておいて,障害のある子どもと一緒にいるのを嫌がっているようでした。

 

直近の発達検査は田中ビネーでIQ75。

その検査は試験官とのやりとりがかち合わずに点を落としているようなところがあったので,実際にはもうちょっとIQがあるのではないかとも思いましたが,そういうのも含めての検査結果ですので,教育委員会には正直に結果を伝えました。

 

教育委員会の担当者からは保護者の希望も聞かれましたが,正直私たちにも判断がつかない,と答えました。普通級と支援級のあいだをとって,通級クラス(席は普通級におき,週1日程度その子にあった特別な授業を通級クラスに通って受けられる)はどうかと相談しましたが,通級クラスはまずは普通級に入ってしばらくしてからでないと受けられないと言われました。

 

その2週間後,市で指定された支援級に体験入学に行き,それからまもなくして教育委員会から,専門家との話し合いの結果,支援級を奨めるとの連絡がありました。

 

周りでは,教育委員会に支援級を奨められたら絶対に支援級に行かなくてはならなくなるからと,普通級を希望する親御さんのなかにはあえて就学相談を受けない人も多くいました。

 

しかし私は,息子を絶対に普通級に通わせたいわけではありませんでした。

私にとって大事なのは,どの環境が息子が最も成長できるか,です。

もちろん,普通級に入って普通に授業を受けて普通に友達と遊べるのならそれに越したことはありません。

でも息子はそうではありません。

まず,授業中,ちゃんと着席できるのか,そして先生の話をちゃんと聞いて指示に従えるのか,とりあえず先生に怒られない程度の行動ができたとしても,そこで何かを学べるのか?

息子は,普通の子であれば周りから吸収して自然と学ぶようなことがとにかく難しい子です。DQが伸びたのも,息子に合わせた療育や保育園の先生の特別な配慮があってこそのことで,普通級に入ったら学校にいる時間のほとんどを先生に怒られるかほっておかれて過ごす様子が容易に想像できました。学校に行ってから帰るまでの1日6時間以上,週5日,それを6年間,その膨大な時間をただ耐えて過ごしているだけでは何も成長できません。

それよりはいくら勉強が遅れても,手厚く支援してもらって,少しずつでもいいから確実に成長ができる方がよいのではないか,と私は考えるようになりました。

 

その一方で,支援級を選択したら,息子は嫌がらないだろうかという心配はありました。

 

当時,私の住む市では,学区外の学校でも希望すれば通うことができたので,無理なく通学できる範囲の学校の支援級を2つ見学に行きました。

どちらもとても雰囲気がよかったのですが,そのうちの1校は落ち着いたやさしい上級生が多く,一見すると何の障害があるのかわからない子ばかりでした。しかも勉強もしっかりしていて,得意科目は普通級に受けに行ける「交流」という制度もありました。実際,上級生のなかには支援級から普通級に移った子も何人かいます。

 

結局,その支援級がある学校に就学希望を提出し,その希望が通ってそのクラスに入学することになりました。

 

この学校を選ぶまでの過程は,息子とは相談もせず,意見も一切聞きませんでした。親でもこれだけ悩むようなことを,なんの経験もなく見通しもない5〜6歳の子に判断ができるわけもなく,ほぼ私の独断で決めました(夫には確認程度に学校見学に付き合ってもらい,結論とその理由を説明して同意を得ました)。

そのかわり,息子が学校を嫌がったら,その時は柔軟に対応して別の最適な環境を探したり作ったりしていこうと,かなりの覚悟を決めていました。

 

そんなふうに,母としてはかなり気負っていたのですが,入学の1カ月ほど前,嬉しい出来事がありました。その支援級の担任の先生のはからいで,体験入学としてクラスに入ることができたのです。しかも先生はわざわざお楽しみ会の日を選んでくれたので,やさしいお兄さんお姉さんに囲まれてワイワイ楽しく過ごすことができ,息子も学校に対する明るいイメージがぐっと膨らんだようでした。

 

支援級という選択2」に続く。

 


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格安会議室で就学に向けた自主勉強会2

2018-10-05 16:11:21 | 発達障害

格安会議室で就学に向けた自主勉強会の続き

 

さて,なんとか場所を確保できたので,保育園の終わる16時ごろから公民館の会議室を借りて,保育園のお友達と一緒に勉強会を始めました。

 

この勉強会の目的は,学力の向上ではなく,机に向かってみんなで勉強するといった,就学したら必須になってくる課題に慣れることです。

 

勉強会の内容は,鉛筆を使うものでは市販されている学研やくもんの簡単なドリルやネットの無料学習プリント,ハサミを使った切り絵や貼り絵,カルタや絵合わせカードなどの知育・療育ゲームなど,10〜20分で終わる課題を1~3個,全体で30分〜1時間くらいやりました。そして勉強会の最初には必ず今日やる課題を黒板に書いて説明し(事前に説明することで心の準備をさせる),会の終わりにはみんなで掃除をしました。

 

また,徳島県の「発達障害早期介入・支援ハンドブック 平成21年2月」に紹介されていてる鳴門教育大学の「就学前指導教室グループ学習指導案」(38ページ)と,このサイトを教えてくれた義母の助言を参考に,プリント配布などの当番を設けたり,勝ち負けに慣れるためゲームは個人戦ではなくチーム戦(親子グループなど)にする,机を二人で運ぶ(共同作業に慣れる),掃除の当番(ほうき,ちりとり,ぞうきん)の当番表を作り,自分がやった当番をシールにつけるなどして,こだわりで同じ当番を連続してやりたがった場合などにこの前もやったのがわかるようにする,などの工夫をしました。

 

で,息子はというと,課題によっては気が乗らなかったり,好き勝手なことをしようとしたりと,完璧にできたためしはありませんでしたが,この勉強会の目的である「少しずつ慣れる」,という点では目的を達成できたと思います。

 

また,仲がいいお友達同士の限られた人数での集まりで,勉強会後は近所の中華料理店で一緒にご飯を食べるというおいしい終わり方をしていたため,息子はこの勉強会を楽しみにしていたようです。

 

勉強会は,お友達と時間の都合のつく範囲で無理ない程度にやっていたため,毎週できるときもあれば,月1程度のときもありましたが,小学校に入るまで1年以上続けました。

 

最終的に息子は普通級でなく支援級を選択したのですが,小学校に通い始めてパニックになったり生活が荒れるようなことは特になく(非常によくあるそうです),就学への移行はスムーズだったと思います。

 

普通級でなく支援級を選択した理由については,次回,「支援級という選択」で述べたいと思います。


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格安会議室で就学に向けた自主勉強会

2018-10-05 15:10:44 | 発達障害

8カ月ぶりの更新です。

仕事に追われ,執筆時間が取れずすみません。

 

息子が保育園の年中クラスの終わりにさしかかったころのことです。

3歳半の発達検査でDQ57だった息子も,家庭での療育がきいたのか2年弱でDQ88にまではなっていたのですが,小学校入学という一大イベントがだんだんと迫ってきていることを意識して,不安が募るようになっていました。

 

小学校で普通級に入る目安として,とある発達相談で言われたのが「DQ75」。

実年齢が6歳で4歳相当,2年遅れだと授業は厳しいだろう,というお話でした。

(あくまで目安としてうかがいました。お子様の性格にもよりますし,専門家によっても意見は異なります)

 

DQだけみればその値はクリアしていたものの,とにかく自分勝手で自由気ままな息子のこと,保育園でさえたびたび集団行動からはずれ,加配の先生にサポートしてもらっている状態なのに,小学校に入って着席して45分間,じっと先生の話を聞いていられるものだろうか。

 

周りの軽度の発達障害のある子の中には,受給者証を使って塾のようなところに通い,就学に向けた療育・勉強をしている子もいましたが,そういうところに行くには,その1時間の授業のために仕事を半日休まなければならず,いろいろと効率が悪いと判断しました。

 

かといって,これまでの家庭の療育は,とことん息子に合わせたものだったので,集団の中で周りに合わせたり,やりたくない課題でも指示されたらやる,といった能力を伸ばすことが難しいように思えました。

 

ではどうやったらこの課題をクリアできるか。

 

幸いにも息子の保育園には,同じクラスにやはり同じような発達の問題を持つ仲のいいお友達がいたので,その子と一緒に保育園が終わってから,どこか家とは違った場所で勉強会をできないかと考えました。

塾より優れたことができないとしても,保育園帰りにちょこっと勉強できたら頻度で多くをカバーできます。

 

そこで私は家の近くに貸し会議室がないか調べました。

「貸し会議室」と自分の住んでいる市の名前をキーワードにネットで検索すると,あるにはあったのですが,家や保育園から距離が数kmあるうえに,料金も1時間数千円と,勉強会を連続して行うには現実的ではありませんでした。

 

そんな都合のいい場所はないか….とあきらめかけたとき,ふとひらめきました。

 

ある。それも近所に。値段も調べると2時間210円〜と破格の値段です。

 

そう,それは地元の公民館。

 

市の公民館は,息子の通う保育園の隣と,保育園から家までの帰り道に計2カ所あり,どちらにも会議室がありました。

 

私は次の日,帰り道にある公民館を訪れ,会議室を使ってみたいので,まずは部屋を見せて欲しいとお願いしました。

 

その公民館は会議室が3部屋あり,どの部屋も黒板,ホワイトボード,机,椅子といった学校のような設備がある上に,気を散らすような掲示物などが何もなく,子どもの勉強スペースとして理想的でした。

 

「今後,ときどきこの部屋を使いたいのですが,どのような手続きをすればよろしいでしょうか?」。私は案内をしてくれた館長さんにたずねました。

 

すると予想外の答えが。

 

「公民館の部屋は個人には貸せなくて,10人以上の団体でないといけないんです」。

 

10人……周りに3人だったら発達障害のお友達がいるけど,10人はちょっと,どうやっても……無理……

 

絶句していた私をみかねたのか,館長さんがしばらくしてからこんな助言をくれました。

 

「団体は,10人中9人が市内の人だったらよいので,ご自身とご主人,お友達のご夫婦,そしておじいさんおばあさんも入れてなんとか10人にして,団体の名前をつけてもらえば,(定期使用ではない)臨時使用として申し込めますよ。会議室を使うのはその全員でなくても使えます」。

 

そんな手があったとは! 友達夫婦,じじばば入れれば何とか10人はクリアできる!

 

公民館の臨時使用申込書は団体名とその構成員の人数,活動内容を書くだけだったので,私はすぐさま友達と自分の両親から了承をもらい,自分たちに適当な団体名をつけ,活動内容は子どもたちの学習支援ということにして,会議室を予約しました。

 

 

格安会議室で就学に向けた自主勉強会2に続く


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療育に役立った絵本2

2018-01-26 12:48:15 | 発達障害

療育に役立った絵本1」の続き

 

3. 自閉症児の苦手な考え方を変えるもの

・概念理解を助ける

どうぶついろいろかくれんぼ」ほか,型抜き絵本シリーズ,いしかわこうじ作,ポプラ社。

自閉症の子どもは一般に,個々の物の名前(トラ,タクシー,など)はきっちり覚えられても,それらを含むグループ名(動物,乗り物)のような概念の理解が苦手とされています。息子は,例えば様々な機種の飛行機を「ひこーき」として理解していたので,グループ概念のすべてが理解できていない,というわけではなさそうでしたが,4歳3カ月の時点で「動物はどれ?」の質問に対して適切な絵カードを答えられず,苦手はありそうでした。そこで,利用したのがこのシリーズ。

この絵本シリーズは,最初にページ一面に色や模様と描かれ,簡単なヒントとともに「なにかな?」「だれかな?」と問いかけがあり,ページをめくると切り取られた部分が輪郭となって答えが浮かび上がってくる仕組みになっています。普通に読むだけでも楽しめる本なのですが,例えば「のりものいろいろかくれんぼ」だったら,出題のページで「こののりものなんだろう?」とか,「次ののりものは何かな?」など,「のりもの」という言葉を強調して語りかけるようにしました。また,単純な色彩構成になっているので,「この赤いの何かな〜」など,色を強調して話しかけて色を教えるのにも使えます。

このシリーズは,息子が発達の問題を指摘される3歳以前から使っており,言語理解がそれほど進んでいない子どもでも理解できる,クイズ形式で次々出題されるので子どもが飽きない,といったメリットもあるので,まだ絵本の読み聞かせに慣れていないお子様にもおすすめです。

 

・人の視点に立って考える

どうぞのいす」,香山美子作,ひさかたチャイルド。(4歳4カ月〜)

 

自閉症児は一般に,心の理論(他者の感情や考えを自然と感じ取る能力のようなもの)の発達に問題があり,人の視点に立って物事を考えるのが苦手とされています。

たとえばそれを表す例として有名な「サリーとアン課題」と呼ばれるものがあります。サリーが部屋に隠したものを,サリーがいないときにアンが別の場所に隠してしまうところを子どもに見せてから,そのあとサリーがどこを探すかを子どもに推測させる問題で,自閉症児はサリーの立場に立って考えられず,アンの隠した場所を答えてしまう傾向があるそうです。

息子もそんな傾向を感じさせられることがありました。4歳ごろのことです。息子が祖父母と電話で話しているとき,自分の目の前にある飛行機のポスターを指差して「ひこーき!ひこーき!」と連呼。受話器の向こうにいる相手がこちらの様子が見えていないことがわかっておらず,自分が見えているもの=相手が見えているもの,と思っているようでした。

なんとかせねばと思い,これに関連したストーリーの絵本として「どうぞのいす」を教材に使いました。

ストーリーは,どんぐりの入ったかごを運ぶのに疲れたロバさんが,イスの上にかごをおいて昼寝をしていると,次々に動物がやってきてカゴの中身を入れ替えてしまい,目覚めたロバさんがカゴの中身にびっくりするというお話。

息子にとっての問題は,ロバさんがびっくりした理由を理解できるかという点です。

私はこの話を息子に読み聞かせるときに,ただ本文を読むだけでなく,各ページで動物が登場するたびに,「でもロバさんはまだ寝てるね〜。カゴの中身が変わっちゃったのにロバさん気づくかな?」と,ロバさんの視点で一緒に考える会話を入れました。

もちろん,この絵本1冊だけで他者の視点に立てるようになる,というものではありませんが,これはあくまでシチュエーション練習の教材として使い,日常でも同じように母の視点,父の視点を息子に伝えたり(母さんにはわからない,など),息子に考えさせる(父さんはどう思うかな?,など)練習をしました。

 

 

・物の見方や考え方は1通りではない

ねずみくんのチョッキ」シリーズ,なかえよしを作,ポプラ社。(4歳半くらい〜)

りんごかもしれない」,ヨシタケシンスケ,ブロンズ新社。(5歳半くらい〜)

 

上記の課題と関連しますが,見えているものや知っているものだけでなく,人の価値観や考え方は,みな自分とは同じではないし,正解が1つではないこともある,という当たり前のことを,健常児の多くは成長する過程で自然と学んでいくのかもしれませんが,息子の場合はそれを丁寧に教えていく必要がありました。

息子はこだわりが強く,自分の考えに固執する傾向があったから,という理由もありますが,私自身(自閉傾向高め),20代くらいまでは人の考えを受け入れるのが苦手で,自分の考えを人に押し付けていろいろと周りに迷惑をかけてしまったという反省があり,小さいうちに教えて欲しかったなあという思いもあったからです。

そういった感覚を教える導入編として,「ねずみくんのチョッキ」シリーズはとても重宝しました。ねずみくんの赤いチョッキ。ねずみくんにはぴったりだけど,ぞうさんは体が大きすぎて着られない……。同じチョッキが着る人によって違った感覚を生むことが,簡単な言葉と一目でわかるシンプルなイラストで書かれていて,想像する力が弱い子どもでも理解しやすい内容になっています。

ただ,自閉症児は「大きい・小さい」のように,同じ物をさしていても比べる物によって変わってしまう言葉(関係語)の習得が遅れる傾向があるそうなので,これらの本をお子様に読み聞かせるのであれば,そういった関係語がしっかり定着してからの方がいいかもしれません。

 

もう一方の「りんごかもしれない」は,1つのりんごを題材に,主人公のぼくがあれこれ憶測というか妄想するストーリーで,1つのものに対するいろいろな見方・考え方を提供してくれます。突飛な見方もかなり出てきますが,それはそれでおもしろく,この本をまねて親子で「これは〇〇かもしれない〜」とお互いに想像して意見交換をする練習をしたりしました。

これまで紹介してきた本と比べてやや難しめの内容なので,ある程度読み聞かせに慣れてきた子向けです。

 

 

 

・客観的に自分をとらえる,自己分析

ぼくのニセモノをつくるには」,ヨシタケシンスケ,ブロンズ新社。(6歳くらい〜)

人の視点に立つのが苦手な自閉症児は当然ながら,人から自分がどう見えるか,人から見た自分と自分で思っている自分が違うことを理解するのも難しいものがあります。そのために自分を客観的に評価する練習に使ったのがこの一冊。

やりたくないことをやらせるための自分のにせものを作ることにしたぼく。お手伝いロボットを自分そっくりにするために,自己分析して自分の情報をいろいろインプットしていく…というお話。

自分の名前や外見的な特徴,できることできないこと,以外にも,居場所によって役目が違うことや,友達や先生など周りから見たいろんな自分,自分の頭の中の世界など,日頃説明したり一緒に考えたりすることが難しいテーマがたんとつまっていて,それでいておもしろい本です。

各ページを読みながら,「じゃあH(息子)はどうかな〜?」と,一緒に自己分析をしたり,意見交換したりと,当たり前だけど大事なことについていろいろ親子で楽しく学べる教材として使えました。

ただ,これまで紹介したなかでは一番難しい本なので,読み聞かせに慣れ,ある程度対話ができるようになったお子様におすすめします。

 

************************************************ 

 

ここまで紹介した本は,数としてあまり多くありません。本を探すのにあまり時間がとれなかったのと,息子の興味や理解度にあったものになかなか出会えなかったのが主な理由です。

子どもにあった絵本を自力で探すのは時間がかかって本当に大変なので,もしお子様の課題にあわせてここに書かれた以外のテーマを教えられる絵本を探すのであれば,図書館のスタッフや読み聞かせボランティアのようないろんな絵本を知っている方に,◯歳児向けの〜といったストーリーの本がないか,などと聞いてみると早いかもしれません。

 


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療育に役立った絵本1

2018-01-22 12:58:43 | 発達障害

 

今回は,息子の就学前に療育に使った絵本を紹介したいと思います。

長くなるので2回に分けて紹介していきます。

 

前回のブログ「絵本を聞かない息子が絵本を聞くようになったきっかけ」でも述べましたが,息子がひとたび絵本を聞くようになってからは,本は新しい概念や考え方を伝えるのに非常に強力なツールになりました。

 

それらの絵本を大別すると,

1. 言語理解などに役立つもの

2. ソーシャルスキルトレーニング用

3. 自閉症児の苦手な考え方を変えるもの

に分けられます。

 

それぞれについて,息子に使い始めたおおよその実年齢を記載しておきますが,難しい内容のものもあり,ご自身のお子さんが理解できるかどうかの判断は,過去ブログ「発達検査の略歴」にある息子の発達年齢が参考になるかもしれません。

リンクはできるだけ出版元のを貼りました。

 

 

1. 言語理解などに役立つもの

 

・歌になっている絵本シリーズ

はらぺこあおむしエリック・カール作,偕成社

できるかな? あたまからつまさきまでエリック・カール作,偕成社

月ようびはなにたべるエリック・カール作,偕成社

音楽CDは別売りで,CD エリック・カール絵本うたとして発売されています。

(すべて4歳4カ月〜)

息子は話を聞くことは苦手でしたが,歌は好きで,歌を繰り返し歌うことで歌詞や内容を覚えられるので,本文が歌になっているこれらの絵本を利用しました。

 

このなかでも有名な絵本「はらぺこあおむし」は,ちっぽけなあおむしが蝶に成長するまでのあいだにいろんな食べ物を食べまくる,というストーリーが読んでいて楽しいだけでなく,数や曜日の概念が含まれているので,絵本を見ながら繰り返し歌うことを通じて多くのことを教えられます。

息子ははらぺこあおむしの絵本と歌をすごく気に入ってくれたので,はらぺこあおむしを題材にした数を数えるアプリ(「Counting with the Very Hungry Caterpillar」,現在は配信されていないようです)をipadに入れたところ,かなりはまってやっていました。

「できるかな? あたまからつまさきまで」は,動物の真似をしながら体の各部位を動かす内容なので,リトミックとしても使えます。体の各部位の名称を理解し,指示通りに動かす練習に役立ちました。

「月ようびはなにたべる」はアメリカのわらべうたがベースになっていて,月曜日から日曜日までそれぞれ違った食べ物を食べる,というだけの内容で,ストーリー性はありませんが,曜日を順番に繰り替えし歌うので,各曜日を覚えるのに役立ちました。

 

 

・マグネットになった絵を貼って使うマグネットブック

マグネットブック アニマルワールド,リーバン

(4歳11カ月〜)

この本には特にストーリーはなく,19匹の動物のマグネットと,それらの動物がどこにいるかという説明文があるのみ。場所を説明しながら動物マグネットを貼ることで位置関係を表す言葉(〜の上,〜の前など)を教えらえるのでは,と期待して購入しましたが,息子はあまり動物に興味を示してくれず,ほとんど活用できませんでした。息子の好きな飛行機のシリーズがあったらよかったのですが……。

なお,このマグネットブックは現在1歳の下の子には受けがよく,下の子に言葉を教えるのに利用しています。本文通りでなくても,動物の名前+「走ってる〜」「飛んでちゃった」などの簡単な動詞を教えたりと,マグネットを動かすことでいろいろな使い方ができます。

マグネットブックはずらしたり繰り返し貼ったりすることができる点でシールブックよりずっと便利です。ほかの出版社からもいろんなマグネットブックが出ているので,この本以外にもお子様が興味を持っているジャンルのマグネットブックを使ってみるといいかもしれません。

 

 

2. ソーシャルスキルトレーニング用

こんなとききみならどうする?こんなとききみならどうするどうする?,スギヤマカナヨ作, ひかりのくに

(4歳〜)

服を汚してしまったとき,友だちのクレヨンを折ってしまったとき,など,子どもの日常生活であるあるのトラブルを,ただ○×で正解を教えるのではなく,みんなであれこれ考えて一緒に解決していくストーリー。説教くさくないので息子の食いつきが非常によく,保育園などで社会生活を送る上での問題と対策を自分で考える訓練に使いました。

さらに,このシリーズの話の持っていき方が非常に効果的だったので,イラストの得意な私の父に頼んで息子の苦手な問題を網羅したオリジナルストーリーの絵本を作ってもらい,友達と遊ぶ時のマナーなどを教えました(内容と絵がまったくのパクリなので,家庭内でのみ使っており,これ以上ブログにアップできません。ご了承ください)。

 

こういったソーシャルスキル的なことをあらかじめ理解し,心構えができていると,保育園などで実際にトラブルがあった時に解決がスムーズになり,トラブルが起きて怒られて終わり,という失敗体験を重ねることを減らせます。この療育が効いたのか,息子が保育園の年中年長でほかの友達とトラブルを起こすことはほとんどありませんでした。

 

療育に役立った絵本2」に続きます。


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