田舎を離れる音人は成長と共に、胸に突き刺さるものがあった。
遠くへ遠くへ行けば何かが見つかると、幼き頃を思い浮かべれば、そこには安らぎの海原があった
あることを考え、真っ白に装った姿で海辺を歩く音人がいる。
音人を追いかけてくる、輝がいた。
「やっと追いつたよ」と輝は音人に、小さな呟きをした。
音人は無言のまま、輝を見つめている。
輝は音人の袖口を優しくつかみ、腕を組み海辺を一緒に歩いてる。
「海に入っちゃいそうだから」と輝は音人に優しい声をかけた。
音人と輝の居る冬の海は、水平線が薄ら見える、陽の出前の静かで穏やかな空の下の海だった
そして朝の陽の出を一緒に見つめている、音人と輝だった。
突然、音人は静かの声で、輝に別れの言葉を伝えた。
涙目になる輝、涙を流す輝、音人は別れの思いしかなかった。
ただ黙って消えていく音人、田舎を離れ首都へ向かう音人。
輝には何も言葉をかけずに、辿り着いた場所は決して眠らないの現実離れのネオン街だった。
音人は冷たいアスファルトに座り見つめているものがあった。
それは現実か幻想なのか、目のやり場のない動めくカラフルな人間模様だった。
音人は今の田舎の現実から自分を消してしまいたいと思っていたのかもしれない。
新しい世界で、新しい自分を見つけたいと思う音人は、輝きのある世界カラフルな世界のネオン街の人間模様が好きになった。
でも、目が眩しく目に違和感を感じるようになる音人だった。
音人が目にした人間模様は何かを伝えていたのだろうか。
カラフルな世界を好きと言える、そんな日々は続くわけがなかった。
いつしか音人は、新しい世界のネオン街に埋もれていくがそれは、いつの日か音人の心を悩ませることになる。
自分が導きだした道が、音人に迷いや混乱、悲痛や苦痛を与えていた。
音人のいない田舎にいる輝は願いながら、音人の帰りを待ち続けた。
心の中で輝は音人を探すが見つけられない。
音人は、もう見つけることができなくなって、音人と輝は、すれ違いの恋に終わってしまうのか。
ネオン街に埋もれていく音人を探し追いかけ続ける輝の心がある。
諦めきれない気持ちの輝は、音人を信じ抜いて待つしかない。
離れれば離れるほど、輝の思いは募るばかりだった。
いつも音人の後ろ姿を見つめる音人の背中の輝きは、輝には誰もが音人に見えてしまう。
輝は幾人に声をかけたいたのだろうか。
振り向くと人間模様、離れた場所で同じ道を輝は音人と歩き始めた。
そして、やっと見つけた、やっと見つけた音人の後ろ姿、音人が傷つきながら思う心。
それは、アスファルトに座る音人の姿だった。
輝は音人の心に声をかけようとすると、輝が見た光景は昔の音人ではなかった。
ただ黙ってネオン街の人間模様を見るだけの音人だった。
昔の音人の姿が薄くおぼろげに見えてしまう輝は、勇気をもって声をかけた。
音人は輝に何も答えてはくれない、それでも輝は幾度も音人に声をかける。
本当に変わってしまったのだろうか、輝は音人を見つめながら2人で良く歌った歌を唄い始める。
音人は何も聞こえないかのように、耳を塞ぎ再びネオン街の人間模様を見つめる。
輝は決して諦めることはなく、音人の隣りに座り優しく寄り添い音人と同じ姿に染まる。
音人は隣りに座る輝を静かな視線で見つめた。
そして音人が笑顔を見せたとき、輝も笑顔を見せた。
この時、輝のぬくもりを思い出していた音人であった。
いつまでここに、と音人と輝は思い会い、再会を果たした。
いつまでここで、ネオン街の人間模様を見つめるのか。
音人の心の中のぬくもり、輝は音人の気持ちが晴れるまで包み込むだけ。
優しく、優しく、そして、輝のぬくもりは音人の心の奥深くに向かう。
同じ時間同じ場所で2人の瞳にネオンの色彩が映し出された時だった。
だいぶ慣れて来たネオン街の人間模様に、輝は音人に声を掛ける。
「もう遅くなったよ」
ここに来た意味があったのか、と音人は輝に言ったが、輝は音人の瞳を見つめるだけだった。
僕は一体何をしに来てるんだ、と音人は心に抱き、自分の弱さを知った。
「なれないよ同じ思いになれないよ」と音人は辛い自分の思いを輝に伝えた。
「なれないの知ってるよ」と輝は音人の言葉に笑顔で答えた。
「強くなれないんだ」音人は輝の笑顔を見つめる。
「会いたい気持ち抑えられなかった」と輝は音人の驚きの姿を見つめる。
輝の心にある思いが芽生えた。
欲張りでもいい、欲張りと思われてもいいと輝は思った。
音人と輝は、同じ思いでいる事を伝えあう。
2人の心は、チグハグになっている事を、輝は知っていた。
でも、輝は心は動いているけど、2人の思いは続いてると信じてる事を見つめ合う音人の瞳に伝えた。
いつも一緒に笑い泣いた日々は、 音人の心の中には、もう消えてしまったのかもしれない。
心の部屋にはないけど、心のどこかで感じてる?
音人の隣に寄り添いながら、音人を信じるだけ。
本当に笑いたいとき、本当に泣きたいとき、輝は音人が昔を思い出すのを待ち続ける。
音人と輝は寄り添い、またネオンを眺め続ける。
隣に寄り添うと少しずつ感じる音人のぬくもり、輝は音人を信じて歩いて行こうと決める。
遠く、遠くに広がる世界がある、そこには歩き出す道があり、いつか導かれると、輝は導かれる事を信じることにした。
音人は寄り道をしているだけ、いつでも引き返せるように、輝は音人の隣に寄り添い、輝は音人の肩に顔をうずめた。
音人が立ち上がるまで、引き返せると気づくまで、と輝は思い続ける。
輝にとって音人は大切な人、輝にとって音人は失ってはならない人。
ずっとずっと音人の隣に寄り添う輝には、肩なのに音人の鼓動が聞こえるような気がした。
心のシャッターを閉めてしまっている音人。
輝は音人の知らないシャッターの音が聞こえたような、帰りたい戻りたいと故郷への思いを感じていた。
田舎の町には2人の思い出がある、音人は思い出し始める。
降り積もった雪の中で音人は輝と遊んでいた。
詩を歌い始めた輝に顔を向ける音人、故郷への思いが輝にある事を知った音人。
あの雪あかりが懐かしい、と音人と輝の涙が一粒ポツリと落ちた瞬間だった。
輝の詩には懐かしいものばかり、音人の瞳に映し出されるのは輝の笑顔があり、まるで音人は輝と故郷にいるようだ。
音人の瞳には街のネオンの色が消えて行く、音人の瞳には目の前を歩く人間模様が消えていく。
ただ寄り添い見つめ合う2人、輝の詩に音人は涙をこらえるも静かに流れ落ちていった。
「帰ろう」輝の言葉が迷う音人の心を振り向かせた。
「帰ろう」音人も輝の言葉に答える。
「故郷へ帰ろうよ」遠い道のりだけど。
音人と輝は手を取り合い歩き、道遠き故郷へ。
君を思い出すと安らげる自然の色彩に包まれる。
青い空、白い雲、真っ白な粉雪、緑の森、色彩豊かな木々、色彩豊かな果実、そして足元には大地の色、無色透明な透き通る風。
全てが目に優しさをくれる、そして体には暖かさをくれる。
そんな君と出会えて良かったと思うよ。…テル。いつまでも愛しテル。
お読みくださりありがとうございます。人は大切な人を失いたくないよね。
本気で愛してると言われたらどう?
嬉しくてたまらない?顔が赤くなるのかな?
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