<きみまち恋文大賞>(1編 )
「天国のあなたへ」 柳原タケ
秋田県・80・無職
娘を背に日の丸の小旗をふって、あなたを見送ってから、もう半
世紀がすぎてしまいました。たくましいあなたの腕に抱かれたのは、
ほんのつかの間でした。
32歳で英霊となって天国に行ってしまったあなたは、今どうし
ていますか。
私も宇宙船に乗ってあなたのおそばに行きたい。あなたは32歳
の青年、私は傘寿を迎える年です。おそばに行った時、おまえはど
この人だなんて言わないでね。よく来たと言って、あの頃のように
寄り添って座らせて下さいね。お逢いしたら娘夫婦のこと、孫のこ
と、また、すぎし日のあれこれを話し、思いっきり、甘えてみたい。
あなたは優しく、そうかそうかとうなずきながら、慰め、よくがん
ばったねと、ほめて下さいね。
そして、そちらの「きみまち坂」につれて行ってもらいたい。春
のあでやかな桜花、夏、なまめかしい新緑、秋、ようえんなもみじ、
冬、清らかな雪模様など、四季のうつろいの中を二人手をつないで
歩いてみたい。
私はお別れしてからずっと、あなたを思いつづけ、愛情を支えに
して生きて参りました。もう一度あなたの腕に抱かれ、ねむりたい
ものです。力いっぱい抱きしめて絶対はなさないで下さいね。
*主人は昭和14年9月に中国山西省で戦死しました。当時の軍
事郵便は検閲されました。今回そのころ自由に書けなかった思
いの万分の一を書きました。すっきりして若返ったような気持
ちです。
英霊に贈る手紙
http://youtu.be/9CU22-OTVyo
宇宙で一番 すてきなあなたへ
ありがとう。
ごめんなさい。
許してください。
愛しています。
2014.9.29 ryuru