日本人は何も特別な事をしなくても”日本人” 転載
作成者: 京免 史朗さん
日本人は何も特別な事をしなくても”日本人”
自分達が満足出来る物を普通に作ってたら世界の一流品!
江戸時代、伊万里を輸出する時に”浮世絵”を包装資材で使ってたら「日本人は美術品を美術品で包装して来やがった」とビックリされたと言う逸話が有りました。
そんな日本人の何気ない”凄さ”が日本の強さでしょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ブランド名『日本』は優しさのブランド」
2006-07-27
カテゴリー: 日本の良い話
「世界が認めた日本の品格、戦略なき優しさが愛される」ウシオ電機会長 牛尾 治朗 氏
時代の端境期にあって「日本ブランド」が再評価されている。
完璧を求める几帳面な国民性が「共生の時代」にベストマッチ。
戦略なき底抜けの楽観と素朴な優しさが信頼と安心の源だ。
世界を見渡しても類まれな格差なき幸福の国、ニッポン――。
木漏れ日の差す21世紀にこそ、その品格が際立つ。
本誌(日経ビジネス編集部、以下同) 「ニッポン」というブランドが、
世界の中で希薄化していくのではないかという見方があります。
牛尾 そうかな。僕はそうは思わない。逆ですよ。これからの時代、
日本人が生まれながらにして持っている特質が世界でいよいよ高く
評価されるようになるんじゃないかな。
本誌 どういうことですか。
牛尾 クルマや機械、電子部品、デジタル製品など、日本製品は世界で
高く買ってもらえます。それは、壊れにくくてメンテナンスに手間とお金がかからない、
すごく信頼性の高い良い製品だからです。そういう優れた製品を生み出しているのは、
やっぱり、几帳面な完璧主義と言うのかな、緻密で、時間厳守で、傷1つ許さない、
何でもピカピカに磨き上げないと気が済まない、そんな日本人が
元来持っている気質ですよ。メーカーでは、経営幹部までが生産の現場が
気になって気になって仕方がない。だから現場に行く。理屈じゃないんです。
欧米ではエグゼクティブが工場に入り浸ってあれやこれやと
指示を出すなんて考えられないことでしたが、1980年代前半に懸命に学んだんです。
日本型生産、現場主義というものが製造業にとって正しいやり方だということをね。
現場主義の仕組みは何とか80%ぐらいのところまで導入したんでしょう。
でも、集団で協力する、集団で喜びを分かち合うというような国民性までは
真似することはできなかった。衣服の裏生地にまで手をかけてしっかり縫製する、
靴の見えない所まで糸のほつれがないように作る。そういう丁寧さが結局、
モノを長持ちさせる。世の中が変わり、自然と共存するとか、
人間に優しいということが経済や企業活動に求められるようになってくると、
日本人のような完璧主義でないとオールラウンドに通用することができないのです。
本誌 ただ、かつては「日本製品は良いが、日本人の“顔”が見えない」などと
揶揄されました。
牛尾 確かにそういう時期はありました。世界中で好んで日本製品が使われているのに、
日本人はどっちかというと敬遠される。 海外で日本人セールスマンが
売り込みに行くと、かえって売り上げが落ちると言われたことさえありました。
でも、最近は違うのです。米メリーランド大学と英BBCが世界で実施した調査で、
「世界に最も良い影響を与える国」の第1位に日本が選ばれたんです。
33カ国のうち31カ国で、回答者の過半数が日本のような国の存在が
世界にとって好ましいと答えたわけですよ。 ちなみに、「好ましくない」が
過半数を超えたのは、韓国と中国だけでした。
牛尾 なぜ日本は、世界からこんなに高く評価されているのか。僕は考えたんですが、
日本って約束したことは必ず守るし、実行する国だからじゃないのかな。
世界を見渡してみてください。こんなに正直な国民が集まった国は
ほかにありませんよ。昔、故大平正芳(元首相)さんが同じようなことを
言っていたのを思い出します。確か、外務大臣の時です。
「インドのネール首相やエジプトのナセル大統領がやったようなことを
日本人が真似しようというのは間違いだ。日本人というのは、国際会議で決めた約束は
必ず守る。だから世界から信用される。この信用さえあれば、
国際社会の中で生きていける」僕はその時、はっきりと意味が分からなかったんですが、
今思えば、さすが大平さんは達見でしたね。
国連でちゃんと負担金を払っているのは日本だけですよ。
スマトラ沖地震に伴う津波被害の義援金をきちんと振り込んだのも日本だけ。
アフリカで飢えた子供がいると聞けば、気の毒にと思って進んで募金する。
優しくて思いやりはある。だけど、戦略性があるとはお世辞にも言えない。
日本のODA(政府開発援助)は戦略性がないってよく言われますよね。
確かにカネを出しても何の利権も得られないようなことが多い。
でも、戦略がちらつかないから相手に信用されている部分もあるんですよ。
本誌 ずる賢さがない。
牛尾 そう、ずるくないんです。日本人が「好ましい」と見られているのは、
要するに相手に不安感を与えないということです。 親切で、素直で、金持ちで、
戦略性がないというか、侵略性がない。先の大戦では侵略国と言われているけど、
欧米列強みたいな帝国主義的なイデオロギーなんてなかったんですよ。
満州(現・中国東北部)の建設あたりからうぬぼれてしまったんだね。
敗戦で非常に反省をしました。今も日本には戦略がないんです。それがいいんです。
根っこのところに、ものすごい楽観論があるんです。世界のどこかで紛争が起こって
石油の供給が絶たれるようなことになれば、経済も国民生活も麻痺してしまう。
でも、日本にだけは誰かが売ってくれるだろう、自分たちが優しくしているんだから
相手も優しくしてくれると思っちゃうような。もし他国から軍事的に攻め込まれても、
みんなが守ってくれるだろう、特に米国がと信じている国ですね。
現実はそうそう甘くないのだけれども、平和憲法を掲げる国としては、
ひょっとしたらものすごく大事なことなのかもしれません、これは。
本誌 それが日本の良さだと。
牛尾 うん。日本が約束したことは世界が信用するからね。
これは、日本製品の信頼性とも相通ずるところがあります。僕もかつては、
戦略とか思想をもっと身につけなければならないと叫んでいたけれど、
考えてみれば国民の大多数が本当に楽観的で、絶対大丈夫だと信じているんですから、
なかなか身につかないはずですよ。
牛尾 哲学者の和辻哲郎によれば、日本というのは木の文化であり、
大きな台風に見舞われるたびに壊れてしまう。でも日本人は、また木を切り出してきて
作り直せばいいんだと開き直る。石の文化は自然と闘うけれども、
木の文化は自然と共生するというわけです。
長い目で見ると、日本の文明が2000年にわたって生き長らえたのは、
ダメになったらもう1回やり直せばいいんだというこの性格ですよ。
世界から、日本のそういうところの価値が認められ始めているんじゃないでしょうか。
困った人は目的もなく助ける、その代わり自分が困った時には
助けてもらえると信じる。必ずやり直せるんだという楽観と、生きることへの達観。
そういう国民性は世界的に珍しい。
本誌 日本人はもっと自信を持てと。
牛尾 そう、『国家の品格』の藤原正彦さんみたいなところまで行っちゃうと、
あれだけどね(笑)。もっと、ぐっと引いて、日本人には本来そういう
特性が備わっていて、そりゃ良い面も悪い面も両方あるということを
知っておこうというぐらいですよ。アングロサクソン系とは明らかに違うんです。
彼らにとっては戦略的に動けない人間というのはレベルが低いわけですよ。
遠くから見知らぬ人間が馬に乗ってやってくると、敵か味方かが分かるまで
みんなが銃を持って放さないという文化です。日本は誰が来ても、
縁側に座らせてお茶を入れてあげるというお国柄ですよ。
生い立ちがまるっきり違うんです。でも、東西、民族の対立、
いろいろな差別がなくなり、地球環境を大切に守りながら人間と自然が
共生していこうという時代になっていくと、いよいよ日本人の良さが
際立ってくるはずです。僕は、そういう日本人の良さをそのまま経済や政治、
国際関係での主張に素直に持っていくのが一番いいんじゃないかと思っている。
これから20年ぐらいは、「日本的なもの」が世界に受け入れられやすい
時代になりますよ。製品だけでなく、日本人も。日本人なら安心だ、信頼できるぞと。
そういう日本人の本性を曲げて、欧米型の近代化に適応させるための教育を
僕らは受けてきました。 でも、やっぱりそれは本筋じゃない。
民族が重ねてきた歴史というのはそんなに軽いものじゃない。
世界に発信しようということで立派な「日本ブランド」なんてものを
わざわざでっち上げる必要はないんですよ。戦略性はないけど、いい人の集団で、
几帳面で現場が大好き。しかも歴史という文化的な深みと奥行きがある。
そういう日本人の本性こそが、実は世界の中での確固たるブランドになっているんです。
僕はそれを一番言いたい。
本誌 でも、人口は減っていくし、国力という面では中国、インドという
新興大国に追い抜かれていく厳しい時代を迎えます。国内の格差も拡大する。
牛尾 そりゃ、野球をやる時に9人のチームと20人のチームでは、人数が多い方が
有利に決まっています。20人で守られたらヒットなんか打てないですよ、
ホームラン以外は点が入りません。そういう強さが人口大国にはあるのは確かです。
インドなんかでは、日本人に来てほしい、日本企業に来てほしいと、
ラブコールがすごいんです。僕はちょっと楽観的過ぎますかね(笑)。
日本にも格差社会が来ると騒がれていますが、世界的に見たら、
こんなに格差がなくて、みんなが平均的に割といい生活をしている国というのは
日本以外にないんじゃないですか。日本に格差があると言ったら、
世界中の格差は目も当てられないほどひどい。
牛尾 世界史を振り返れば、常に日の当たる民族なんてありません。
アングロサクソンが世界を支配している歴史は、もう250年ぐらい続いていますが、
それはアングロサクソンのほんの一部の層が権力を行使して
富を享受しているだけです。
英国も米国も戦略国家として強さを維持してきましたが、そこに暮らす国民は
平均的に幸せなんでしょうか。僕は日本人の方がよっぽど幸せだと思いますよ。
これからは、目映い光がさんさんと降り注ぐというわけではないかもしれない。
薄日が差し込むぐらいもしれない。でも日が暮れて真っ暗に
なるというわけじゃありませんよ。
本誌 そうすると、日本人は今の姿をあまり変えない方がいいと。
牛尾 変えるか変えないかという選択肢はないんです。変えられないんですよ、
体に染みついているんですから。でも、努力してもっと高みを目指す、知識を積む、
高い志を持つ、思考力を高める、伝統を尊重する、月を見て感動するような感受性を
決して失わない。そういう方向で自分たちを見つめ直すんでしょうね。
作成者: 京免 史朗さん
日本人は何も特別な事をしなくても”日本人”
自分達が満足出来る物を普通に作ってたら世界の一流品!
江戸時代、伊万里を輸出する時に”浮世絵”を包装資材で使ってたら「日本人は美術品を美術品で包装して来やがった」とビックリされたと言う逸話が有りました。
そんな日本人の何気ない”凄さ”が日本の強さでしょう。
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「ブランド名『日本』は優しさのブランド」
2006-07-27
カテゴリー: 日本の良い話
「世界が認めた日本の品格、戦略なき優しさが愛される」ウシオ電機会長 牛尾 治朗 氏
時代の端境期にあって「日本ブランド」が再評価されている。
完璧を求める几帳面な国民性が「共生の時代」にベストマッチ。
戦略なき底抜けの楽観と素朴な優しさが信頼と安心の源だ。
世界を見渡しても類まれな格差なき幸福の国、ニッポン――。
木漏れ日の差す21世紀にこそ、その品格が際立つ。
本誌(日経ビジネス編集部、以下同) 「ニッポン」というブランドが、
世界の中で希薄化していくのではないかという見方があります。
牛尾 そうかな。僕はそうは思わない。逆ですよ。これからの時代、
日本人が生まれながらにして持っている特質が世界でいよいよ高く
評価されるようになるんじゃないかな。
本誌 どういうことですか。
牛尾 クルマや機械、電子部品、デジタル製品など、日本製品は世界で
高く買ってもらえます。それは、壊れにくくてメンテナンスに手間とお金がかからない、
すごく信頼性の高い良い製品だからです。そういう優れた製品を生み出しているのは、
やっぱり、几帳面な完璧主義と言うのかな、緻密で、時間厳守で、傷1つ許さない、
何でもピカピカに磨き上げないと気が済まない、そんな日本人が
元来持っている気質ですよ。メーカーでは、経営幹部までが生産の現場が
気になって気になって仕方がない。だから現場に行く。理屈じゃないんです。
欧米ではエグゼクティブが工場に入り浸ってあれやこれやと
指示を出すなんて考えられないことでしたが、1980年代前半に懸命に学んだんです。
日本型生産、現場主義というものが製造業にとって正しいやり方だということをね。
現場主義の仕組みは何とか80%ぐらいのところまで導入したんでしょう。
でも、集団で協力する、集団で喜びを分かち合うというような国民性までは
真似することはできなかった。衣服の裏生地にまで手をかけてしっかり縫製する、
靴の見えない所まで糸のほつれがないように作る。そういう丁寧さが結局、
モノを長持ちさせる。世の中が変わり、自然と共存するとか、
人間に優しいということが経済や企業活動に求められるようになってくると、
日本人のような完璧主義でないとオールラウンドに通用することができないのです。
本誌 ただ、かつては「日本製品は良いが、日本人の“顔”が見えない」などと
揶揄されました。
牛尾 確かにそういう時期はありました。世界中で好んで日本製品が使われているのに、
日本人はどっちかというと敬遠される。 海外で日本人セールスマンが
売り込みに行くと、かえって売り上げが落ちると言われたことさえありました。
でも、最近は違うのです。米メリーランド大学と英BBCが世界で実施した調査で、
「世界に最も良い影響を与える国」の第1位に日本が選ばれたんです。
33カ国のうち31カ国で、回答者の過半数が日本のような国の存在が
世界にとって好ましいと答えたわけですよ。 ちなみに、「好ましくない」が
過半数を超えたのは、韓国と中国だけでした。
牛尾 なぜ日本は、世界からこんなに高く評価されているのか。僕は考えたんですが、
日本って約束したことは必ず守るし、実行する国だからじゃないのかな。
世界を見渡してみてください。こんなに正直な国民が集まった国は
ほかにありませんよ。昔、故大平正芳(元首相)さんが同じようなことを
言っていたのを思い出します。確か、外務大臣の時です。
「インドのネール首相やエジプトのナセル大統領がやったようなことを
日本人が真似しようというのは間違いだ。日本人というのは、国際会議で決めた約束は
必ず守る。だから世界から信用される。この信用さえあれば、
国際社会の中で生きていける」僕はその時、はっきりと意味が分からなかったんですが、
今思えば、さすが大平さんは達見でしたね。
国連でちゃんと負担金を払っているのは日本だけですよ。
スマトラ沖地震に伴う津波被害の義援金をきちんと振り込んだのも日本だけ。
アフリカで飢えた子供がいると聞けば、気の毒にと思って進んで募金する。
優しくて思いやりはある。だけど、戦略性があるとはお世辞にも言えない。
日本のODA(政府開発援助)は戦略性がないってよく言われますよね。
確かにカネを出しても何の利権も得られないようなことが多い。
でも、戦略がちらつかないから相手に信用されている部分もあるんですよ。
本誌 ずる賢さがない。
牛尾 そう、ずるくないんです。日本人が「好ましい」と見られているのは、
要するに相手に不安感を与えないということです。 親切で、素直で、金持ちで、
戦略性がないというか、侵略性がない。先の大戦では侵略国と言われているけど、
欧米列強みたいな帝国主義的なイデオロギーなんてなかったんですよ。
満州(現・中国東北部)の建設あたりからうぬぼれてしまったんだね。
敗戦で非常に反省をしました。今も日本には戦略がないんです。それがいいんです。
根っこのところに、ものすごい楽観論があるんです。世界のどこかで紛争が起こって
石油の供給が絶たれるようなことになれば、経済も国民生活も麻痺してしまう。
でも、日本にだけは誰かが売ってくれるだろう、自分たちが優しくしているんだから
相手も優しくしてくれると思っちゃうような。もし他国から軍事的に攻め込まれても、
みんなが守ってくれるだろう、特に米国がと信じている国ですね。
現実はそうそう甘くないのだけれども、平和憲法を掲げる国としては、
ひょっとしたらものすごく大事なことなのかもしれません、これは。
本誌 それが日本の良さだと。
牛尾 うん。日本が約束したことは世界が信用するからね。
これは、日本製品の信頼性とも相通ずるところがあります。僕もかつては、
戦略とか思想をもっと身につけなければならないと叫んでいたけれど、
考えてみれば国民の大多数が本当に楽観的で、絶対大丈夫だと信じているんですから、
なかなか身につかないはずですよ。
牛尾 哲学者の和辻哲郎によれば、日本というのは木の文化であり、
大きな台風に見舞われるたびに壊れてしまう。でも日本人は、また木を切り出してきて
作り直せばいいんだと開き直る。石の文化は自然と闘うけれども、
木の文化は自然と共生するというわけです。
長い目で見ると、日本の文明が2000年にわたって生き長らえたのは、
ダメになったらもう1回やり直せばいいんだというこの性格ですよ。
世界から、日本のそういうところの価値が認められ始めているんじゃないでしょうか。
困った人は目的もなく助ける、その代わり自分が困った時には
助けてもらえると信じる。必ずやり直せるんだという楽観と、生きることへの達観。
そういう国民性は世界的に珍しい。
本誌 日本人はもっと自信を持てと。
牛尾 そう、『国家の品格』の藤原正彦さんみたいなところまで行っちゃうと、
あれだけどね(笑)。もっと、ぐっと引いて、日本人には本来そういう
特性が備わっていて、そりゃ良い面も悪い面も両方あるということを
知っておこうというぐらいですよ。アングロサクソン系とは明らかに違うんです。
彼らにとっては戦略的に動けない人間というのはレベルが低いわけですよ。
遠くから見知らぬ人間が馬に乗ってやってくると、敵か味方かが分かるまで
みんなが銃を持って放さないという文化です。日本は誰が来ても、
縁側に座らせてお茶を入れてあげるというお国柄ですよ。
生い立ちがまるっきり違うんです。でも、東西、民族の対立、
いろいろな差別がなくなり、地球環境を大切に守りながら人間と自然が
共生していこうという時代になっていくと、いよいよ日本人の良さが
際立ってくるはずです。僕は、そういう日本人の良さをそのまま経済や政治、
国際関係での主張に素直に持っていくのが一番いいんじゃないかと思っている。
これから20年ぐらいは、「日本的なもの」が世界に受け入れられやすい
時代になりますよ。製品だけでなく、日本人も。日本人なら安心だ、信頼できるぞと。
そういう日本人の本性を曲げて、欧米型の近代化に適応させるための教育を
僕らは受けてきました。 でも、やっぱりそれは本筋じゃない。
民族が重ねてきた歴史というのはそんなに軽いものじゃない。
世界に発信しようということで立派な「日本ブランド」なんてものを
わざわざでっち上げる必要はないんですよ。戦略性はないけど、いい人の集団で、
几帳面で現場が大好き。しかも歴史という文化的な深みと奥行きがある。
そういう日本人の本性こそが、実は世界の中での確固たるブランドになっているんです。
僕はそれを一番言いたい。
本誌 でも、人口は減っていくし、国力という面では中国、インドという
新興大国に追い抜かれていく厳しい時代を迎えます。国内の格差も拡大する。
牛尾 そりゃ、野球をやる時に9人のチームと20人のチームでは、人数が多い方が
有利に決まっています。20人で守られたらヒットなんか打てないですよ、
ホームラン以外は点が入りません。そういう強さが人口大国にはあるのは確かです。
インドなんかでは、日本人に来てほしい、日本企業に来てほしいと、
ラブコールがすごいんです。僕はちょっと楽観的過ぎますかね(笑)。
日本にも格差社会が来ると騒がれていますが、世界的に見たら、
こんなに格差がなくて、みんなが平均的に割といい生活をしている国というのは
日本以外にないんじゃないですか。日本に格差があると言ったら、
世界中の格差は目も当てられないほどひどい。
牛尾 世界史を振り返れば、常に日の当たる民族なんてありません。
アングロサクソンが世界を支配している歴史は、もう250年ぐらい続いていますが、
それはアングロサクソンのほんの一部の層が権力を行使して
富を享受しているだけです。
英国も米国も戦略国家として強さを維持してきましたが、そこに暮らす国民は
平均的に幸せなんでしょうか。僕は日本人の方がよっぽど幸せだと思いますよ。
これからは、目映い光がさんさんと降り注ぐというわけではないかもしれない。
薄日が差し込むぐらいもしれない。でも日が暮れて真っ暗に
なるというわけじゃありませんよ。
本誌 そうすると、日本人は今の姿をあまり変えない方がいいと。
牛尾 変えるか変えないかという選択肢はないんです。変えられないんですよ、
体に染みついているんですから。でも、努力してもっと高みを目指す、知識を積む、
高い志を持つ、思考力を高める、伝統を尊重する、月を見て感動するような感受性を
決して失わない。そういう方向で自分たちを見つめ直すんでしょうね。