しかし、返事はない。
仕方なく、俺はもう一回ノックをしたが、返事がない。
やむなく、失礼します、と言ってドアを開けた。
部屋に入ってみると、聖名はベッドにもぐりこんでいて、羽根布団を頭まですっぽりとかぶってもぞもぞしていた。
「聖名、 大丈夫? 具合悪いの?」
すると 聖名は布団から顔だけ出して、
「うーん ゆうべ眠れなくて、湯冷めもしたのかな。なんか気分が悪い…」
「午後から出社とかできないの? あと 思い切って休むとか」
「そうだね…」
と、聖名は考えていたが、
「センパイ、スポーツドリンク持ってきてもらっていい? 水も飲めなくて…」
それは大変だと、俺が冷蔵庫の奥からスポーツドリンクのボトルを持ってくると、聖名は眠っていた。
しかし、なぜかはっきりと、
「…タキさん!…」
と寝言で叫んだのだ。
たきさん? 悪いが俺は少し笑ってしまった。
新規事業のために調査に行った畑で知り合ったおばあさんとか?
(なぜか俺はテレビでしか見たことのない、昭和の、もんぺ姿の地味な方を想像していた)
影響を受けてるのかなあ…
そこで聖名は目をさました。