「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

■小説「傾国のラヴァーズ」67・うつむく聖名

2023-10-05 07:25:00 | 傾国のラヴァーズその61~70
 もう俺は咎めなかった。

 どうせ俺の言うことは決まっていたし 聖名の答え も想像がついていたからだ。

 聖名はなかなか 浴室から出てこなかった。
 
 そのうち洗面所からドライヤーの音が聞こえてきた。
 髪が長いので彼のドライヤーの時間は長い。
 仕事が多い時は 生乾きのままパソコンに向かうと、いつだったか聖名は笑いながら言っていた。
 
 しかし今日は随分と長く感じられた。
 まあ、きっとしっかり乾かしているのだろう。

 ようやく 部屋着の聖名で出てくると、冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを2本出して、1本を俺の前に置いてすすめると自分も一口飲んでいた。
 俺は飲む気がしなかった。
 
 沈黙の後、聖名は諦めたように俺に尋ねてきた。

「それで話というのは? 」

「社長、さっきのように私に黙ってどこかに行かれるのは困ります。
私に不満があるというなら私に直接もしくは 会社の方に相談していただけませんか。
私と違って ベテラン の者もおりますし、上司なら適切なアドバイスができるかと思います 」
「… 」
 聖名は下を向いてしまいそのまま 震える声で

「センパイに不満なんかないよ…」



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