「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

■小説「傾国のラヴァーズ」その55・気になる男

2023-05-24 18:41:15 | 傾国のラヴァーズその51~60
 案の定、 聖名はぐったりと ソファーにもたれかかって座っていた。
「俺がやるから休んでろよ。カフェオレの方がよくないか?」
「あ、そうかも。お願いします」

 カフェオレをひと口飲むと聖名は、

「矢野会長がとうとう 上京してくるんだって。俺を説得するために」

「え? いつ?」

 俺は覚悟していたはずなのに、 言われると驚いた声をあげてしまった。

「2週間後…ごめん、 詳しいことは後で話すよ」
 そこまで言うと、すぐに聖名はその場で目をつぶって眠り始めた。

 俺は聖名の部屋から厚手の毛布を持ってきてかけてやった。

 一人で寝るのが嫌だったように見えたからだ。

 それで俺は彼のそばに座っていることにした

 新聞を広げるのもうるさいだろうと俺は、スマホでニュースをチェックすることにした。

 色々見ていくうちに、「与党のプリンス」とか「総理大臣候補」と書かれた、どこかで見た男性の写真とインタビューが出てきた。

(あ、さっきのニュースで見た人か…)

 瀧川伸一郎。53才。

 聖名と同じ某一流私大を卒業して…農林水産大臣…外務副大臣…最近ではLGBT問題に取り組む…など経歴は華々しい。

(でも、何か頼りなさそうに見えるなあ…)




●小説「傾国のラヴァーズ」その54・聖名はフリー?

2023-05-23 16:03:31 | 傾国のラヴァーズその51~60
「俺がいるからこの1ヶ月 は遊びに来ないんだろうな って思ってた」
「でもさ、オレに付き合ってる人間がいたら、最初から一緒に先輩に守ってもらうと思わない?」
「そういやそうだな」
と何気なく返事をしてから、俺ははっとした。

「でもびっくりした。聖名が フリーだなんて…」

「うーん、大学に入って2年くらいから、起業の準備を始めたら付き合う暇なんてなくなって自然消滅…って、やっぱり縁がないってことだよね」
「そうだな…」

 俺が 次の話に困っているとテーブルの上の聖名の携帯が鳴った。
「あれ? 横浜のおじさんだ。もしもし…」
 聖名の育ての父の矢野氏なのだろう。

 聖名は動くのが辛いだろうと、俺はコーヒーカップと携帯を持って自分の部屋へいったん引き上げた。

 …部屋の中で 俺は身構えていた。

 聖名に用事を言われたらいつも以上に早く動きたかったからだ。

 それにしてもこんな時間に電話なんて 矢野会長 絡みの話としか思えない。

 電話は長かった。

〈ごめん。コーヒー入れなおすよ〉
と、聖名からLINEが来たので、俺は急いで部屋を出た。




★小説「傾国のラヴァーズ」その53・運命の相手が欲しい

2023-05-22 10:27:23 | 傾国のラヴァーズその51~60
 聖名は、

「そうか…運命の出会いか…」

と言うとグラノーラを口に運んで黙り込んだ。

 俺の口は勝手に質問していた

「聖名はどうなの?」

しまった、と思って俺は慌てて謝った。

聖名は前を向いて一瞬困っていたようだったが、

「いやセンパイが話してくれたから いいんだけど、そうだな 、そう言われれば、告白されたからなんとなく付き合っただけだったな…」

 そしてうつむくと、

「確かに運命の相手は 欲しいね」

そこで俺はまた何を思ったか

「えっ? 今いないの?」

と尋ねてしまった。

「いないよ 付き合ってる相手なんて。気がつかなかった?」




◆小説「傾国のラヴァーズ」その52・白紙の恋愛経験

2023-05-21 21:03:13 | 傾国のラヴァーズその51~60
「とにかく大丈夫だよ。俺はやり方知らないから」

 すると 聖名は目を丸くして、それから なぜか気を取り直したように、
「それじゃあオレが女の子だったら危なかったの?」

そう言いながらも 実は グラノーラの方に夢中 のようだ。

「いやそれも無理。その俺は女の子の扱いも経験ないから分からないし」

 わざわざ言うのも 変なものだが。

 しかし 聖名 はびっくりして、

「えっ? どういうこと?」

さっきも言ったろ 俺はそういうの 興味ないって

「うーん…」

聖名は 何だか困っていた

「それって先輩は全く恋愛に興味ないってこと? それとも 運命の出会いみたいなのがあったら付き合いたいってこと?」

と言ってから、 立ち入ったことを訊いてごめんと真剣に謝ってきた。

「いや いいよ。あまり考えたことなかったけど カップルとか見ても他人事なんだよな。こんな俺でも告白されたことは何回かあったけど、そういえば、そうだ。 この人じゃない気がするって思って断ったんだ」

 そして、男性に告白された時もそうだった、と口走ってしまった

 あ…男性の話は NG だ…と思ったが、 聖名は、

「俺も、男からも 告られるタイプだから気にしないで」

と言ってくれた。それでなんだか安心してしまって

「だから俺、後者 なんだよ。ただ一人の人を待ってるんだろうな」




■小説「傾国のラヴァーズ」その51・センパイならいいかも

2023-05-19 21:52:44 | 傾国のラヴァーズその51~60
 聖名が無表情なのが怖かった。
 でも俺はどうにか、

「あ、グラノーラな。今用意するよ」
 すると、聖名はわずかな笑みをたたえて、
「先輩も一緒に食べない? 朝飯まだでしょ?」

 聖名の気遣いに甘えて、 俺も相伴することになった。しかし、いつもと違い 俺の横に聖名は座ったので 表情は横からしか見えない。

 聖名はそのまま正面を向いたままで、

「先輩 ごめんね。とっさのことで 先輩ってわからなくて。わかってたらあんなに騒がなかったんだけど」

そして 重い口を開き始めた。

「…実は大学生の頃 襲われかけた経験があって」

予想が当たって俺は黙り込むしかなかった。

 友達の知り合いの家で飲んで、酔ったみんなは潰れた聖名のことを忘れて帰ってしまい、その家の主と二人きりになったところを襲われたという。

「まあ、抵抗しきれるかなとは思ったんだけど、友達が偶然忘れ物を取りに来て、助けてくれて…」
 
 すると聖名はうつむいて、

「だからセンパイがずっといてくれる ここ最近がすごくありがたくて…」

 そう言われて俺は本当に嬉しかったが…

「でも センパイにならオレ、襲われてもいいかなぁ…」
 目をそらしてではあったけど、冗談にしてくれてよかった。
「そうだな、俺が心霊に変身できるようになったらな」
「何だよそれ~」
 ようやく聖名は俺の目を見て笑ってくれた。