無言電話にこんなに緊張したことはなかった。
しかし、聖名以外の人間が聖名のそばにいることをわからせてやろうと、もう一回言った。
「もしもし」
すると、中年の女性の声で、
ーあの、鈴崎さんの携帯ではないですか?
「はい、鈴崎は弊社の社長ですが」
すると びっくりすることを言われた。
ー私、聖名の叔母の矢野と申します。聖名に代わっていただけませんか?
「おばさん? 矢野さんですか?」
俺が驚いていると聖名はまた慌ててそれを引き取った。
「もしもし おばさん? 非通知だったからわからなくって…」
楽しそうに話しながら聖名は俺をちらっと見て何事か
ジェスチャーを送ってくる。結構必死だ。
あーなるほど。上半身にも服を着ろってことか。
聖名 はこんな時もきちっとしてるな…