「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

「傾国のラヴァーズ」その 2・寂しい生い立ち

2022-10-24 20:25:00 | 傾国のラヴァーズその1~10
 しかし、聖名の祖母の春子は愛人にしか過ぎず、聖名の母の光子も、成田が正妻をどうにか説得して認知はさせてもらったものの、成田の姓を名乗ることは許されなかった。
 そして光子が5才の時に、成田は脳溢血で急死してしまったという。
 その後、光子達母娘は成田の遺産で暮らしたらしい。

 …俺は本当は他に遺産争続の醜聞なども聞いていたが話すのは忍びなかった。

「…で、肝心の僕のことは?」
「あ…」
「本当に、遠慮しなくていいのに…」
と苦笑いしながら、彼は自分で語り始めた。
「僕の母は運命を呪い続けている人で、両親を恨んでいた。女性でも知識とか身につけて愛人になんかならないで名家の奥様になる、って言ってたんだって。なのに、結局祖父の遺産とコネで大学を出たんだよねえ。憎い父への復讐の一環とかまた言ってたみたいだけど」
 あれ、これは君に関係があるのかな? と、彼は苦笑した。

「そんなわけで、仲の悪い親のところを飛び出して母はOLの一人暮らしを始めたんだけどすぐに男ができて。でも祖母は相手の男が釣り合わないって猛反対」
 釣り合わないというのはお嬢様より格下という意味なのか?
「母はバカみたいに面食いで…その時の相手はモデルの男だったらしい」
 彼の祖父・貞次もなかなかのイケメンだったと、写真を俺は思い出した。
「まあ、親にしてみれば堅い商売の方がいいでしょうね」
「そうだよねえ。なのに母は強行突破のデキ婚をしてさ。その時に生まれた赤ん坊が僕ってわけ」



「傾国のラヴァーズ」その1・儚げな美青年社長

2022-10-23 23:09:00 | 傾国のラヴァーズその1~10
 彼は中性的で美しい、どこか儚げな青年だった。

 鈴崎聖名(せな)。俺より4つ下の24才。ベンチャー企業の社長だ。

 ボブの毛先に柔らかなウェーブの金髪。身長は185センチの俺よりはちょっと低い。

 そして俺は今日から彼のボディーガードだった。

 俺は警備会社から二人の先輩と交替で派遣されて、鈴崎社長の火曜と水曜の出勤から帰宅までをガードすることになっていた 。
 不思議なことに依頼主は社長本人ではなく社長の大叔父ということで、本人は必要を感じていない様子だった。

 社長室で…社長に引き合わされた時、社長は笑顔で迎えてくれたが、その瞳は笑ってはいなかった。二人きりになりソファに向かい合って座り、俺の簡単なプロフィールに彼は目を落とした。
「海原翔真(かいはらしょうま)さん…うーん、何だか僕にはもったいない経歴だな」
「いえ、とんでもないです」
 俺が否定すると彼は、
「それで、君の方は僕の経歴をどれくらいまで聞いてるの?」

 俺は言葉に困った。しかし、気をつかわなくていいよ。どこまで知っているのか知りたいだけだからと言われたが、俺はこの人に… その寂しそうな微笑みに、心を鷲掴みにされた気がした…それでどうにか遠慮しながら話し始めた。

 聖名は、唯一の北海道出身総理であり、昭和の総理の中でも特にカリスマ性があったと言われる「成田貞次」のただ一人の孫であること…
 でも聖名の祖母の春子は…