とはずがたり

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皮膚創傷治癒に筋膜線維芽細胞が重要

2020-03-13 16:52:09 | 発生・再生・老化・組織修復
皮膚の創傷治癒は感染予防という意味でも重要な生体反応ですが、凝固カスケードによって局所に形成される肉芽組織の上に周囲の真皮から線維芽細胞が遊走し、マトリックスを形成することで生じると考えられています。しかしこの論文で著者らはある程度の大きさ以上の欠損の場合には筋膜fasciaに存在するengrailed 1陽性の線維芽細胞(EPFs)が瘢痕形成に重要な役割を果たすことを明らかにしました。皮膚に損傷が生じると筋膜に存在するEPFsが損傷部位に遊走してくるのですが、この過程で、やはり筋膜に存在する血管、マクロファージ、神経とともに細胞外マトリックスを損傷部に引き込む役割を果たします。この時真皮と筋膜との接触をpolytetrafluoroethylene(PTFE)シートによって物理的に阻害したり、あるいは筋膜内のEPFsをdiphtheria toxinで殺した場合には、瘢痕形成が著しく阻害されます。この結果は。皮膚の被覆に筋膜皮弁が有用であるという臨床的な知見のメカニズムを明らかにしたものと言えます。真皮に存在する線維芽細胞と筋膜に存在する線維芽細胞の役割の違いを明らかにしたという点でも重要な研究結果です。 
Nature. 2019 Dec;576(7786):287-292. doi: 10.1038/s41586-019-1794-y. Epub 2019 Nov 27.
Patch repair of deep wounds by mobilized fascia.


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