人工関節置換術は整形外科分野では最も安定した成績が期待できる手術の一つですが、人工関節の感染は極力避けたい合併症です。特に手術から何年もたって生じる遅発性感染は難治なことも多く、治療に時間がかかり、患者さんにも医療側にも大きな負担となります。現在の遅発性感染治療のゴールドスタンダードは二期的置換です。これはまず人工関節を抜去して徹底的に洗浄・デブリードマンを行った後に抗菌薬入り骨セメントを関節に留置し、感染が収まった段階で再置換を行うことが多いです。抗菌薬入りセメントは大きく分けるとarticulating spacer, static spacer, の2種類あります。前者は関節の可動性をある程度保ちながら再置換を待つタイプ、前者は関節の動きを制限するタイプです。この論文ではRCTでこの2種類の成績を比較しました。人工膝関節の遅発性感染に対して40 gの骨セメントあたりvancomycin 3 gとtobramycin 1.2 gを混ぜたものをスペーサーとして使用しました。起炎菌はMSSAが最も多く11例、MRSA2例、MSSE2例、MRSE6例などです。Articulating spacer 25例、Static spacer 24例を比較し、平均3.5年のフォローで、関節可動域やKnee Society Scoreなどを評価しています。結果としては予想通りArticulating spacerがいずれも有意に良好な成績を示しました(可動域は113.0±11.2 vs 100.2±14.0, p=0.001、KSSは79.4±17.1 vs 69.8 ± 14.1, p=0.043など)。それはそうでしょうという結果かと思います。ただArticulating spacerを使うために使う鋳型がdispsableのもの(StageOne system, Zimmer Biomet)で、我々も使っていますがこれが高いんですよねー。。できれば金属(セメントが取れやすいように表面をポリッシュして)でいくつかサイズを用意していただいて、再滅菌できるようにしてほしいものです。
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