治療薬などの臨床試験では、通常厳密な組み入れ基準(適格基準eligibility criteria)が決められているので、その薬が実際に使われるようになっても、臨床試験の適格基準から外れた患者は治療適応にならないことがしばしばあります。例えばeGFR<30の患者は通常骨粗鬆症の臨床試験から除外されるので、実臨床でそのような患者に対してどのような治療を行うかは悩むところです。この論文では肺小細胞癌に対する過去の臨床研究データを用いて、適格基準を緩和した時にどのような効果が得られるかをAI (Trial Pathfinder)を用いてシミュレートしたというものです。その結果適格とされる患者プールは平均で2倍以上になり、全生存期間のハザード比は平均0.05減少しました。適応を拡大するために臨床試験を行うことについてはお金も時間もかかるので、中々製薬会社も良い顔をしないのですが、このようなアプローチが広がれば、より多くの患者に恩恵がもたらされる可能性がありそうです。
Liu, R., Rizzo, S., Whipple, S. et al. Evaluating eligibility criteria of oncology trials using real-world data and AI. Nature (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-021-03430-5
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