とはずがたり

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”To wear a mask, or not: that is the question”

2020-03-30 10:09:23 | 新型コロナウイルス(疫学他)
ウイルス性呼吸器感染症におけるマスクの有用性については疑問視する意見もあり、特にマスクをつける習慣に乏しい欧米ではインフルエンザが流行する時期でも(病人以外は)ほとんどマスクを着用しません。WHOも無用なマスク着用は推奨しない、というようなメッセージを出しています。もちろんマスクに呼吸器感染予防効果があるかどうか、というようなRCTが行われている訳ではないので、「マスクをしてもウイルスは通過するので無意味。そもそもエビデンスはあるのか」と言われると、答えは「ありません」ということになります。
しかし1918年のスペイン風邪パンデミックの際に、サンフランシスコでは保健委員会委員長のウイリアム・ハスラー博士を中心に制定された「マスク着用条例」が施行され、「公衆の行き来する街頭やすべての公共の場、もしくはどのような形であれ人々が集会を開いたり2人以上の人が集まる場所に行く者はみな、食事をするとき以外、バター・クロスあるいは目の細かいガーゼのような素材を4枚重ねにしたマスクで鼻と口を覆うこと。ただし、家庭で同室の家族が2人だけの場合はこの限りではない」というような厳しい規定が設けられました。その結果、インフルエンザ感染者のみならずジフテリア、麻疹、百日咳の報告数も急激に減ったと報告されています(アルフレッド・W・クロスビー著「史上最悪のインフルエンザー忘れられたパンデミック」より)。
当然当時はディスポのマスクはなく、布マスク(+ガーゼ)だったわけですが、この事例のメッセージは「無症状感染者も含めて全員がマスクを着用することで、飛沫感染を減らすことができる(可能性がある)」ということです(エビデンスレベルは低いですが)。ご存知のように新型コロナウイルスにおいても無症状感染者による周囲への感染波及が問題になっています。したがって自分を守るためではなく、「自分が無症状感染者である」という前提で、他人への飛沫感染を防ぐために、再使用でも良いのでマスク着用を徹底すべきだろうと思います。


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