たまゆら夢見し。

気ままに思ったこと。少しだけ言葉に。

我が背子 大津皇子26

2019-01-19 19:55:09 | 日記
山辺皇女と何度も肌を重ね、甘美なひと時を得てもかの姿が大津の脳裏に浮かぶ。
大津…優しい声で我を誘う。伊勢にいるのにはっきりと聞こえる。

しかし目の前には情炎に酔いしれている山辺皇女の白い身体が横たわっている。
かの声を聞きたくて大津は山辺皇女に求めた。
山辺皇女は白い肌で大津を受け止めた。「大津さま、どうぞ私を離さないで。」

大津は思わずその唇を塞いだ。
寂しい思いをさせていたのは我のせい…
申し訳ないが今、我は。
そなたに不憫な思いをさせず、そなたのそばに出来るだけいるようにするから。
心だけはどうぞ縛らないでくれ。

山辺皇女の絹のようなきめ細かい肌を大津は離さなかった。山辺皇女もたくましい軀を離さないよう大津を受け入れた。


「大津さま、引き取りました児らが斎王さまの無事を祈り布を織りましたの。お送りしても良いでしょうか。」見事な白い生地で織り上げられていた。
「素晴らしいな。姉上は児らの話をするととても喜んでいた。母上を早くに亡くした我らにしてもとても他人ごとでないと言われていた。」
「よかったですわ。児らも喜ぶことでしょう。」と山辺皇女は無邪気に喜んでいた。

この織物が姉上の肌を包むのか…我でさえ知らぬかの肌を。

大津は布地にでもなりたいと思った。

思わず山辺皇女の腕を掴んだ。悩ましい思いを抱きながら、山辺皇女を再び求めた。
山辺皇女も素直に受け止めた。