下記の記事はダイヤモンドオンラインからの借用(コピー)です
高齢者の転倒
骨折リスク増大
2020年10月17日、日本スポーツ界のトップアスリートから絶大な信頼を得る順天堂大学スポーツ医学・再生医療講座齋田良知特任教授(いわきFCチームドクター)は、英科学誌BMJジャーナルで、新型コロナウイルス流行後にハードな運動を再開した際に、ビタミンD不足によるケガには十分気をつけるよう呼びかけた。
齋田医師は、アスリートのコンディショニング維持とパフォーマンスの向上を目的として、経年的にプロサッカー選手の血液データを解析している。今年は、例年と違った顕著な傾向が見られた。血中のビタミンD値が、大幅に低くなっていたのである。
日本では新型コロナウイルス流行に伴う2020年4月7日の緊急事態宣言により、行動制限や外出の自粛が求められた。アスリートであるプロサッカー選手も例外ではない。チームトレーニングの中止に伴い、屋外トレーニングが制限された。日照不足による血中ビタミンD濃度の低下が危惧された。
日本のプロサッカークラブに所属する男子選手(2018年23人、2020年24人)の血中ビタミンD(25-OHD)濃度を比較した結果、2018年シーズン開始の冬の平均29.7(ng/mL)が、春には36.0に増加していた。しかし、2020年シーズンは冬が23.8、緊急事態宣言後の2020年5月では21.8と減少していた。2018年と2020年、このクラブが活動している地域の日照時間には差はなかった。
2018年と20年では入れ替わっている選手も多いため、両シーズン共にチームに所属していた7選手のみに絞って解析をした。すると、2018年が26.8(冬)⇒34.8(春)、2020年が24.9(冬)⇒21.2(春)とやはり減少していた。緊急事態宣言の影響は明らかだ。外出やトレーニングが制限された2020年は、屋外で競技を行うスポーツ選手のビタミンD値が例年よりも低くなっている可能性が示唆された。
一般に、25-OHD値が30(ng/mL)より低値であると骨折や肉離れといったケガの発生リスクが高まるといわれている。コロナ長期化や第3波で、今後もビタミンD不足に拍車がかかる恐れがある。これはスポーツ関係者だけではなく、すべての人々に当てはまる。アスリートのトレーニング再開はもちろん、高齢者の転倒や骨折など、誰もがケガを防ぐために血中ビタミンDのレベルを維持することが肝心、と齋田医師は訴える。
2018年はシーズン開始時よりもシーズン中にビタミンD値が上昇。しかし2020年は逆に減少。同時期の日照時間は同等であった。
(注)25-OHD(25-ヒドロキシビタミンD)は体内のビタミンDステータスを最も正確に反映する指標。
3つのカンタン運動法
(適度な運動)
ビタミンDは、食事からの摂取や日光浴により合成される。アスリートだけでなく一般に日本人に不足しがちなビタミンだ。冬に入り日照時間が短くなる時期は、ビタミンD不足がさらに助長され、骨折や転倒によるケガが危惧される。私たち一般人にも、ビタミンDの摂取と可能な範囲での日中屋外での活動が推奨される。
適度な運動は健康長寿に欠かせない。足腰を鍛えたいなど、弱い部分、強化したい部分を意識し、そこを鍛えるための筋肉トレーニングを行う。筋トレは裏切らない。とくに腹筋は、日常生活で鍛えづらい筋肉のひとつ。加齢とともに衰えやすい。腹筋が衰えると骨盤の位置が変わり、腰痛や股関節が詰まる。すると、それをかばおうとして膝や足首に痛みが連鎖することもある。腹筋の強化は、健康的なカラダを作ることに直結する。
齋田医師は最新刊『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)で、「週に3、4日、10分間だけでも実践して欲しい」と具体的な3つの運動法(適度な運動)と、2つの注意事項(適度なペース)を、以下の通り紹介している。
◎齋田式簡単腹筋エクササイズ【腹式呼吸】
1.おへその下あたりに空気をため込むイメージで、お腹をふくらませながら鼻から大きく息を吸う。
2.口からゆっくり息を吐きながら、お腹をへこませる。
◎齋田式簡単腹筋エクササイズ【おへそのぞきこみポーズ】
1.横になって両ひざを立て、お腹の上に両手をのせて、あお向けに寝る。
2.息を吐きながらおへそをのぞき込むように頭を上げ、ゆったり呼吸しながら3~5秒キープし、元の姿勢に戻る。勢いをつけないように。
◎負荷の少ない水泳もお勧め
水泳は、肩甲骨の動きを良好にし、つながっている首回りの筋肉をほぐす。首の痛み、肩こりは和らぎ、姿勢が良くなり、ストレスも軽減される。水中は関節に負荷をかけずにトレーニングできるので、特に、足、足首、ひざ、股関節に悪い人に向く。
2つのカンタン注意事項
(適度なペース)
さらに同著で齋田医師は、「過ぎたるは及ばざるが如し」と適度な運動のペースとして、以下の2つを推奨する。
◎最大1.3倍の法則を守る
スポーツ医療の世界では、「過去1カ月に自分にかけた負荷に対して、その週自分にかける負荷を1.3倍までに抑えると、体を痛めることなく、効果的なフィットネスにつなげられる」と言われている。「1カ月分の運動量を1週間に詰め込んでさらに3割増し」まではOKともとれるが、無理は禁物。運動を続け、「もっとペースを上げたい」という気持ちになったときに、決して無茶をしないように、ペーシング・コントロールをしたい。
◎週1、2日運動を休む
週6日以上運動すると、1日おきに運動している人に比べて死亡率が上昇するという大規模調査結果がある。トップアスリートでも週1日は必ずオフにしている。スポーツの強豪校も週1、2日の休みを取り入れている。疲労を回復できないと、免疫機能を落とし、寿命を縮めてしまう可能性がある。
以上、「適度な運動を適度なペースで」と5つの具体策を紹介した。
いろいろ勧められても、なかなか実行できないときにはどうすればよいのか。
「自分一人でストイックに努力するよりも、趣味のスポーツサークルや、スポーツジムに通い、仲間と一緒にやるのも一案。相性の良いパーソナルトレーナーに巡り合うと、運動が長続きする例もある」と齋田医師。
2020年というコロナや爆暑など未曽有の年周りを節目に、何か1つでも行動変容をして、2021年を迎えてはいかがだろうか。
(監修/順天堂大学スポーツ医学・再生医療講座 特任教授 齋田良知)
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