下記は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です
テレワークの導入や自粛生活で、「歩く」機会がガクンと減った分、増えた体重を気にしている人は多いだろう。しかし、歩かなくなったことで気にするべきなのは、体重だけではない。足の健康、ひいては全身の健康状態だ。
「足のむくみ、だるさ、冷えは、あなたの体が発信している『危険信号』です」と注意を促すのは、日本で唯一の「足の総合病院」、下北沢病院の副院長、長﨑和仁氏。とくに通勤で歩いていた分、1日の歩数が激減したオフィスワーカーは要注意だという。
足のトラブルを放置するのが危険なワケと効果的なセルフケアについて、長﨑氏の最新刊『足の先生! 足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤 どうすればラクになるか教えてください。』より一部抜粋・再構成してお届けする。
足のむくみ、だるさ、冷えは「血行悪化」のサイン
私は足の専門医として、さまざまな足のトラブルを診てきました。むくみやだるさなど、足のトラブルに悩んでいる人は、実にたくさんいます。しかし、症状を自覚していても、がまんしたり、放置したりしている人もたくさんいます。
足のむくみ、だるさ、冷えは、足の「血行」が悪化しているサインです。何も対処せずに放っておくと、症状が進んで、大変なことになってしまいます。さらに、「下肢静脈りゅう」になって、足が凸凹になってしまうかもしれません。下肢静脈りゅうは、血行の悪化が進んで、血管が壊れてしまう病気だからです。
一般的に、下肢静脈りゅうは命に関わるような病気ではありませんが、つらい症状や外見の醜さで悩んでいる人がたくさんいます。そして、自然治癒することがなく、何もせずに放置していると、どんどん悪くなってしまう、厄介な病気でもあります。
とはいえ、早いうちにきちんとケアすれば、お金をかけずに「足の健康」は保てます。日常生活の中で、足の血行をよくするように心がけることで、足の不快なトラブルを解消したり、下肢静脈りゅうの発症や進行を遅らせることが可能です。
なぜ足の血行が悪いと、足のトラブルが起こるのでしょうか。それは、人間が立って歩く生活をしているからです。人間が立っているとき、足は心臓よりもはるか下にあります。当然、心臓から送られた血液は、重力に引っぱられて戻りにくくなります。足には、重力に逆らって血液を心臓に送り出すための原動力がなさそうに見えます。けれども、血液は無事に足から心臓へと戻っていきます。
足をきちんとケアするためには、足の血液を心臓に送り返す仕組みを知っておくことが大切です。ここで、押さえてておくべきポイントが2つあります。
・ふくらはぎの筋肉が心臓と同じ働きをする
・静脈に逆流防止弁がある
歩いているとき、ふくらはぎの筋肉は収斂と弛緩を繰り返します。すると、そこに挟まれた静脈内の血液が押されて、上方向に送られます。このように、ふくらはぎの筋肉は、動かすことで、足の血液を心臓に送り返すためのポンプのような働きをします。ふくらはぎが「第2の心臓」と呼ばれるゆえんです。同時に、静脈内の弁が、血液が重力に引っ張られて下方向に逆流するのを防いでいます。
静脈の逆流防止の「弁」は壊れやすい
多くの人が、動脈と静脈は同じような管でできていると思っていますが、それは違います。動脈は、心臓の力強い拍動で送り出される血液を受け止めるために、弾力に富み、とても丈夫にできています。一方、静脈は、動脈に比べると薄くできていて、わずかな圧力の差で血液を心臓に戻せるような作りになっています。
そして、動脈と静脈の最も大きな違いは「弁」の有無です。静脈には血液の逆流を防ぐための弁がついています。
動脈は心臓の力強いポンプとしての圧力を受けていますが、静脈にはそれがありません。そのため、血液が逆流せずに心臓まで流れるように、静脈の中には逆流防止の弁があります。この弁は両足で100個くらいあります。
静脈の弁は膜のような組織なので、あまり丈夫ではありません。強い力が長時間加わると、簡単に壊れてしまいます。しかも、爪や皮膚とは違って、いったん壊れてしまうと再生することがありません。
静脈の弁が壊れると、その部分で血液の逆流が起こり、血液がたまってしまいます。そして、静脈が膨張したり、蛇行したりする病気が「下肢静脈りゅう」です。
下肢静脈りゅうは、足がむくんだり、痛くなったり、だるくなったり、コブのようなデコボコができたり、足の表面に見苦しい模様が浮かんだり、さまざまな症状があります。
ふくらはぎが「第2の心臓」と呼ばれていることはよく知られていても、ふくらはぎの運動不足がさまざまなトラブルを招くことをご存じの方はまだ多くありません。さらに、静脈には弁があり、それが壊れることで下肢静脈りゅうが起こることは、医師に言われてはじめて知る方が多いようです。
私はこれまでに1万人以上の下肢静脈りゅうの手術を経験しました。けっして珍しい病気ではありません。15歳以上の日本人の43%がかかっているという報告もあります。
不可逆的に進行する病気ですから、当然、年齢が上がるほど発症率は上がります。30~49歳では55%、50~69歳では61%、79歳以上では75%と4人に3人という高率になっています。高齢のご家族がいらっしゃったら、この機会に足の状態を確認し、早めのケアをおすすめしていただけたらと思います。
歩くことで、足の血液が心臓に戻る
運動不足、とくに「歩かない」ことが、足の健康にどんな影響を及ぼすのでしょうか。ふくらはぎを収縮・拡張させる運動が足りないと、足の血液を心臓に送り出すポンプ作用が十分に働かず、足に血液がたまりがちになります。
たまった血液は足の組織にしみ出して、足がむくみます。血行が悪くなると、老廃物がたまり、足がだるくなります。筋肉を動かさないと熱の発生が足りなくなり、血行が悪いと十分な血液で熱を運ぶことができなくなります。
足に血液がたまった状態が続くと、やがて静脈の弁が壊れ始めます。弁が壊れると、血液が逆流を始め、静脈が膨れ上がり、下肢静脈りゅうを発症してしまいます。
そうなる前に、むくみ、だるさ、冷えを感じたら、しっかりケアしましょう。これが「足の健康」を保つための第一歩です。
足のむくみ、だるさ、冷えを防いだり、改善したりするためには、足の血行をよくするのが大切です。ふくらはぎを動かして、足の血液を心臓に戻してあげるようにしましょう。
・とにかく歩くこと
ムリなく足の運動をするには、1日8000歩の散歩がベストです。散歩の時間が取れない人は、通勤・通学時にいつもより多く歩くようにしましょう。
・同じ姿勢を続けない
長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしを避け、30分ごとに足の運動をするようにしましょう。かかとを上げ下げする「かかと上げ体操」を少し繰り返すだけでも効果があります。
・疲れた足をマッサージ
運動や立ち仕事・座り仕事で足がつかれたら、入浴後などに足をマッサージして血行をよくしましょう。足先から太ももに向かって3~5回ほど軽くもむ程度で十分です。
足が重だるい、足がよくつるなどの症状がある場合は、サイズの合った弾性ストッキングをはくと症状が軽減できます。
弾性ストッキングは、足を圧迫して、ふくらはぎの筋肉を締め付け、心臓に血液を戻すポンプ作用をサポートする医療器具の1つです。着用すると、その部分の静脈が圧迫されることで血流が速くなり、血行がよくなります。
弾性ストッキングは、ふくらはぎのポンプ作用を効果的にアシストするものですから、歩く、ストレッチをするなどのふくらはぎの運動と併用することで効果を発揮します。はいただけで運動をしないとか、寝ている間にはくなどは、あまり意味はありません。弾性ストッキングは、基本的に起きているときにはき、寝るときは脱ぎます。
下肢静脈りゅうに対する効果については医療用の弾性ストッキングがベストです。むくみを減らしたい、足の形を整えたいなどのニーズならば、市販の製品でもよいでしょう。弾性ストッキングとはどんなものかを知る入門用にもなります。
弾性ストッキングは、自分に合ったものを選び、ふくらはぎのポンプ作用を意識して日常的に運動を欠かさないことで効果を発揮します。
足のトラブルは早めのケアが大切
出勤や外出の機会が減り、歩かなくなったことで、足のむくみ、だるさ、冷えを感じるようになったら、それは足の血行が悪くなった最初のシグナルです。ここで何もせずに放置するか、早速ケアを始めるかによって結果は大きく違ってきます。
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足の血行をよくするには、1日8000歩くだけでよいのです。休みなく働いている心臓をサポートしながら、血行を促していくのですから、「第2の心臓」であるふくらはぎの運動もムラなくコンスタントに行いましょう。
『足の先生! 足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤 どうすればラクになるか教えてください。』では、「足の健康」はもとより、足のむくみ、だるさ、冷えの対処法、さらに「下肢静脈瘤」の治療法や手術のやり方など、皆さんが知りたいことにできるかぎりお答えできるよう詳しく解説しました。足のトラブル解消に、ぜひお役立てください。
長﨑 和仁 : 下北沢病院副院長
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