徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

2012年10月 NHK公開セミナー@名古屋

2013年11月30日 | セミナー
2012年10月21日(日) NHK名古屋放送局
公開セミナー 大河ドラマ『平清盛』


ゲスト:磯智明CP 神木隆之介さん(源義経役)
会 場:NHK名古屋放送局 T1スタジオ  


<VTR 38&39話の「五条大橋」シーン>

※源義経人物紹介のあと、お二人登場。
MCより神木さんと磯CPのプロフィール紹介。


MC:今日はよろしくお願いいたします。お二人にまず名古屋について一言、印象をお伺いしましょう。

神木隆之介さん(以下K):先程ご紹介いただいたNHKのドラマで「心の糸」というがあって、それに出ていた時にこちらのスタジオセットに来た思い出があります。その時はひつまぶしを食べました(笑)。 あとは2005年の「愛・地球博」の閉会式でお芝居と歌を披露させていただいて、それが小学校高学年のころのことでしょうか。

磯CP(以下Ⅰ):私はNHK入局後、最初の赴任地が名古屋で4年おりまして、そのあとドラマ部に移ってプロデューサーとしても3年、合計7年間、NHKでの半分近くの時間を名古屋で過ごしました。だから思い出もたくさんありますし話すと長くなりますが、今日は神木君の話がメインだから。
(懐かしい場所ですか?と聞かれて)…でも(自分がいたのはこのビルができる前の話で、今オアシスがあるところに昔の放送局のビルがあった時代ですね。このスタジオもできてからもう20年くらいですか?さっき神木くんの話を聞いて、このビルよりも彼の方が若いんだ!って驚きました(笑)。

MC:ではここからゆっくりドラマについて伺いたいと思います。(3人ともソファに着席)神木さんは「葵徳川三代(平成12年/2000年)」「義経(平成17年/2005年)」「平清盛(平成24年/2012年)」と三作目の出演になる大河ドラマですね。大河ドラマというと独特の雰囲気があったりするのでしょうか?現場の印象はどうですか?

K:そうですね、大河ドラマはどの作品もぴりっとした気合の入った現場だな、という印象がずっとあります。 「葵」の時は小さかった(6歳くらい)からあまり覚えていないのですが、一つだけ、歩き方を徹底的に直されたのを覚えています。現代の6歳ぐらいの子の歩き方と、同じ6歳でも当時の武家の子が歩くのとは全然違うので、その時は真ん中に芯の通った歩き方をしないといけない、と。ちょっと(自分の歩き方は)ぴょんぴょんしていたので、歩き方を随分練習しました。


尾張と源氏の縁

MC:制作のお立場として磯さんにお聞きします。神木さんを義経役に抜擢した理由は?

I:そうですね、その前に…名古屋という土地について少し話をさせてください。名古屋は源氏とゆかりの深い地で、今日も名古屋で行うということで義経を演じる神木さんに来ていただいたわけです。熱田神宮司の娘であった由良御前と義経の父・義朝は夫婦でした。また今(10月中旬)義経はまだ(ドラマで)遮那王と呼ばれていますが、京から出て奥州に向かう途中に、ここ尾張の地で義経が元服したという言い伝えがあることなども、ここが源氏、ひいては武士に深い縁を持つ土地であったことを示しています。ドラマでも義経は尾張の地で元服した説に沿って話が進みます。
名古屋と言うと信長や秀吉など歴史上の人物を多く輩出した土地です。今日もすぐ外で「名古屋まつり」をやっていますが、三英傑よりもっと以前、平安時代の終わりごろからから武士とのつながりが深い土地だったんですよ。それもあって、神木さんにお越しいただいたわけです。 そして神木さんに義経役をお願いした理由ですが、義経に対するイメージとして、源平合戦のヒーロー、天才的な軍略家、人間的に裏表がなく、素直でまっすぐな性格の持ち主だけれども、戦場に赴くと活躍する「戦上手」としての一面がある、その「他の人とは違う」特殊性、バランス、そう言う役を演じられるのは彼しかいないんじゃないかな、と思いました。そう思ってこのドラマの始まった当初からオファーを出していました。(K:嬉しいです!)


純粋な人、義経

MC:戦上手というイメージを持っていましたが、今のお話だと「純粋な人」という面を強く感じました。

I:そうですね。義経には抜きん出た能力がありながら野心がない。後世に作られ語られた部分もあるとは思いますが、清盛も頼朝も成長して行くに従って野心を持ち、変容して行きますが、義経にはそういう要素が少ない、清盛が父親だと思っていたことも含め、兄の為、源氏の為、素直に生きて行く…神木さんの義経に持ったのはそんなイメージです。

MC:神木さんご自身と、義経のイメージがかぶるところはありますか?

K:いや、自分とは全然違うと思います!(笑)すごく探究心が強くて、義経という人物は兄のために戦い、尽くす、真っ直ぐな心の持ち主ですし、磯さんがおっしゃった「素直さ」とか…本当に尊敬しています。自分と重ねて、なんて恐縮します。恐れ多いですよ!(笑)

MC:でも、磯さんの描きたかった義経のイメージにはぴったりだったということですよね?

Ⅰ:そうですねえ。先に紹介された「心の糸」では、聴覚障碍者の母(松雪泰子さん)を持つ息子の役を演じていただいたのですが、ハンディを持つお母さんへの思いや年頃相応の複雑な感情を、素直に気持ちを切り替えて演じていらっしゃって、ことさら「演じる」でもなく、自然に一シーン、一シーンを受け入れて演じているように思いました。その姿が運命を受け入れていった義経の姿に重なって「神木くんならうまく演じてくれそうだな…」という思いに繋がりました。

MC: 義経は有名なエピソードが多い方ですが、その一方で史料があまり残っていないとも聞きましたが…。

Ⅰ:史料がないというよりも「伝説が多い」んですよね…実際に活躍の記録は多く残されていますが、どれも超人的すぎるんです。それをまとめて「義経がどんな人物像だったのか」というのもあると思います。義経の超人的な活躍は確かに存在していたと思いますから、それを演じるのも難しいことでしょうね。こうした時代を描き出していくための脚本も難しさがあったと思います。時代的にも「貴族の時代」から「武士の時代」への過渡期ですしね。ドラマで頼朝は相当に「屈折した」キャラクターとして描かれていますが、義経はそうではなくて、新時代のヒーロー、戦争が終わって何か新しいことが生まれる、そういった全く新しい「空気感」を持ったキャラクターとして描きたいと思い、キャラクターを作っていますね。

MC:神木さんは義経を演じるにあたって、どんなことを思っていましたか?

K:戦上手だったり、身のこなしが機敏であったり、武将としての優秀さ…皆さんの持つ義経像があると思います。僕自身は、そう言った伝説の印象を持ちつつも、さらに皆さんのイメージよりも上回る義経を演じられたら、そんな役にしたいという思いがいつもありました。 ひとつひとつの所作にも、美しさをどう表現したらいいのか、と。敵を見据える鋭い視線や戦いぶり、それと同時に「大きな運命、哀しみを背負っている」「はかなさ」をも表現したいと思っていました。殺陣でも、台詞でも、常にそれは意識していました。


再び義経を演じる「めぐり合わせ」

Ⅰ:(神木さんに)義経を演じるのは二回目じゃないですか。前と比べてどうですか?

K:そうですね、以前に「義経」で牛若丸を演じた時はまだ小さくて、立ち居振る舞いも一つ一つよく考えていなかったことはあります。今回もう一度義経を演じる機会をいただいて…以前は滝つぼにバーンと落ちて、上がってきたら(本役の)滝沢さんになってたという(場内笑)。
あれから僕が再び遮那王の役を演じることは運命的なものを感じました。あれからつながって「成長した遮那王」を見せたいですし、今の年齢にやらせてもらって本当によかったと思っています。


殺陣の特訓は弁慶と

MC:現代劇と比べて時代劇としての、また戦国時代や江戸時代とはまったく違う、平安時代ならではのお芝居のエピソード、工夫されたことはありますか?

K:(平安時代だからといって)特別な所作はありませんでした。実はちゃんと演じる時代劇は初めてなんですが、指導の先生もいらっしゃいますし、意識したこと、特別なことは特にしていません。 でも殺陣の時に驚いたことがあって、普通は木刀を振る素振りの時に、両手で持ちますよね、これが基礎。でも「本番では片手で持ってね」と言われてびっくりしましたね。

I :(殺陣は)義経らしさ、というのもあったと思いますけれども。

MC:木刀と言っても重いんでしょう?

K:重いですね!でもその重さを使って(身ごなしで)くるっと回ったりして(I:すばらしいですよね、と横でコメント)…木刀だけでなくてちゃんとした本身の刀はもっと重いですし、竹光でもかなり重さがあります。


≪VTR:39話 鞍馬山~五条大橋のシーン≫


K:刀は片手で扱っていますね。

I :義経らしい身軽な感じです。

K:このシーンは大変でしたね。殺陣のあるところだと、一回立ち会って、刀を取って、また戦って、欄干の上に乗って、わかりませぬか→禿がでてくる、というのが一連のシーンです。あそこは3パート位に分けているのですが、それでも長い。それをシーンを細かく切らずに「長回し」で撮るので、この一連の動きは全部一気に撮っているんです。

I:普通はアングルを変えたりして細かく切って撮影しますが、ここは全て通しで撮っています。

K:大変ですが、演じる勢いは絶対になくさずやっていけるので…ただ長回しのお芝居では確かに後の方になればなるほど(NGを出してはいけない、と)プレッシャーもかかりますし大変です。でも、カット割りで普通に撮って行くドラマよりも、演じる勢いをなくさずに済むと言うか。びしッと一回で決めると気分も乗ってくるんですよ。お芝居のテンションを切らさずに一気にやれるのはいいですね。

I:この殺陣は相当練習したんでしょう?

K:殺陣は今年の2~3月くらいからですね。ほんとに何も…ゼロからなんで。あと乗馬もやりました。 この五条大橋の撮影は8月中旬くらいでした。殺陣の練習は最初は一人で基礎を積んでいくんですが、途中から(弁慶役の)青木さんと一緒に練習をしていました。青木さんとは初めてお会いして、共演なんですけど、すごく優しい方で(嬉しそうな笑顔に)。
殺陣というのはお互いの息、呼吸を感じて、合わせていかないとうまく行きませんし、本当に一瞬のことで大怪我をしかねません。でもそうやって相手の呼吸を感じながら練習をしていくので、弁慶と義経の「絆」が深まるのも本当に早くて。このシーンでは二人が一応初めて出会った、っていう設定ですが、実はこの時点で「仲良かった」(笑)。敵っぽく見えつつも、「(呼吸が)合っている二人」(笑)なんです。これからもそんなシーンがありますが、見る方にも「ああ、義経と弁慶だな」って思っていただけるような、そういう雰囲気が見せられたかな?って。

MC:弁慶とのシーンの最後のほうでは、これから二人の関係がどんどん近いものになっていくような予感がしましたね。やり取りとかも(笑)。

K:そうですね(笑)。二人のやり取りも、「聞きたいか?」「いえ別に」とか、バッサリ話を斬っちゃうんですよね、そういうところとか…何だか笑えるようなシーンも混じってて(笑)。

I:五条大橋のエピソードは、そもそも「あの時代に五条大橋は京都に本当にあったのか?」というところから入ったんです。何度も賀茂川が氾濫して、橋だって流されているだろうし、今あるような立派なものではなかっただろう、だったら橋自体は(イメージよりも)スケールは小さめに作って、その分アクションを大きく見せよう、と。 あともう一つ、このドラマにおける弁慶の設定というのが、常盤とのかかわりも含め「源氏をずっと見ている」存在なんです。遮那王は初対面だけど、弁慶にとっては再会に等しい、その再会の場面をどうやったら感動的にできるか、というのを考えました。 場面設定も(通常五条大橋のシーンは夜に設定されることが多いが)遮那王が鞍馬寺で僧都に用を言いつけられたのが夜、そこから山を下りて都に入っていくうちにしらじらと夜が明ける。夜明けに再会する義経と弁慶、そのシーンが「新しい時代の始まり」にも見えるように、そんなイメージで場面を設定しました。
前の「義経」では、この五条大橋のシーンは滝沢さんがワイヤーアクションを駆使して、一つ一つのアクションを大きく見せるように仕上げていましたが、今回は橋のセットも含めてスピーディー、リアルな殺陣を見せたい、スピード感を出したいというコンセプトで殺陣を撮りました。幻想的というよりは(お互いの戦う時の)息遣いが伝わるようなものにしようと思いました。


少年から大人の武将へ

MC:そして神木さん、こうして父のように慕っていた清盛が、実は父親の敵だったという真実を知っていく義経ですが、少年期から大人への変化、きっかけなど、そのあたりは何か意識をして演技されましたか?

K:一番初めに鞍馬寺で登場したシーンは、台本に年齢が書いてあるんですけれど、10歳から14歳くらいまでの設定でした。この時期は「初々しさ」を出したいな、と。五条大橋で弁慶に出会うのは12~13歳のころという設定で、弁慶に真実を聞かされるわけです。 それで弁慶から「待っているから!」と言われたあと、いったん期間が空くんですね。台本では14歳から18歳くらいまでが抜けてるんですよね。その間ずっと弁慶は待ってるんです(笑)。18歳になって弁慶との(奥州への)旅が始まるんです。

K:その間に相当の葛藤があったと思いますし、清盛が親の敵と知ってからの、覚悟とか、決意とか…これは自分の背負うべき運命とか。そりゃ父親とも思っていた人が敵だったなんて、そんなこと言われたら…受け入れるとか、そんなこと…ね。それを受け入れていくなら、顔つきは絶対に変わりますよね?その「後」というか、「義経」としてのストーリーが始まるところでは、キリッと「何かを背負った武将」として見せたい、表現したいと思って演じていました。

MC:まだ遮那王時代の顔つきには優しさがありますよね。その少年が大人になって、きりっと「一人の武将」になっていく、その姿を楽しみに拝見していきたいと思います。
ところで、清盛役の松山ケンイチさんとはまだお会いされていないとか。これからはそんなシーンもあるのでしょうか?
 
I:これからはね…まだちょっと言えないですけども(笑)。でも頼朝との対面シーンがあります。そこを是非見ていただけたら。

MC:まだ教えていただけないんですね(笑)。

I:いや、もう撮りましたけどね。まだ言えませんけど(笑)…いい場面になっていると思います。


兄・頼朝との対面

K:(頼朝とは)シーン数はそんなになかったんですけれども、何日か撮影をご一緒させていただきました。何だかいいですよね、義経はあんなカッコいいお兄ちゃんがいて…(場内爆笑)。

MC:いやいやいや、神木さんが言うことじゃなくて(笑)。

K:カッコいいだけじゃなくて、すごく優しいんですよ。岡田さんのそばにいると、何かほんわかした気分になれるんです。でも、頼朝!という役に入るとカッコいい!武士としての迫力とか、凄い!と思っていました。

I:義経はきっと素直に「凄い!」と思っていたと思うんですが、一方で頼朝のほうは父の生前に由良御前と常盤御前のことを見ていますからね、屈託があるかもしれません。そこを義経が「素直さ」でどう関わっていくのか・・・というのも見所だと思います。


青木弁慶は「熱い人」!

MC:ではここで「義経と弁慶」についてもう少し。青木さんとは殺陣の練習を通じて絆が深まったと聞きましたが。

K:現場でも弁慶と義経でしたね(笑)。(撮影のたびに)毎回、ジュースをおごってくれるんですよ(場内爆笑)。この間はイチゴジュースを…自販機で。

I:まだ19歳だったから、お酒じゃなくてジュース(再度爆笑)。

K:常に僕と一緒について回ってきましたし。で、毎回「ありがとうございます!」って。そして先日僕がクランクアップしたときは「今回は僕がおごらせていただきます!」って。あの日確か青木さん撮影は…?

I:もう青木さんは終わってたんですよ。撮影が。

K:そうなんですか!それなのにわざわざ弁慶の衣装着て「とのおおおおおおおーー!」って(場内爆笑)待っててくれたんですよね。

MC:熱い方なんですね!(爆笑)

K:熱い方ですね!殺陣のときもそうでしたが、芝居のことも、こうしたほうがいい?というのを二人で熱く語りながら作っていったんですよ。

MC:アドリブはなかったんですか?

I:五条大橋のシーンそのものが二人のお芝居で膨らませていってるところもあって。

K:自由にやらせてもらいましたね。あとさっきは映ってなかったんですが、弁慶のなぎなたを遮那王が奪うシーン、弁慶が苦し紛れに「あ!あれはなんだ?(隙ありぃ!)」ってやるところがあったんです(場内大爆笑)なのに遮那王は冷たい目で「シラっ」と見てて泣き所ベチーン!なんていう(再度爆笑)。
そのあとの素性明かしシーンの場所(小屋)で、何故か干しイカがあって!いきなり弁慶が「イカ食うか?」なんてアドリブが(爆笑)。何かないかな、っていきなりカメラテストでかましてきたんです!(笑)ぼくは「いえ、いえ、いいです」って。結局本番ではやりませんでしたが…。 義経と弁慶の関係性は「平清盛」という作品のストーリーが真剣に、粛々と進んでいく中、一味違ったものを見せられたら、と思っています。色が少し違うような、見ていてほんわかした気持ちになるような、ほっとするような場面であってほしいし、そういう二人の関係でありたいなって思ってます。青木さんとは僕が鞍馬を出てからもうずうっと一緒でした。撮影は毎回あったわけではありませんが、僕が現場に行くと、青木さんは必ずあの弁慶の衣装を着て、そこにいらっしゃるんです。もう「二人で一つ」くらいの感じはしていましたね。


源氏も平家も和気藹々

MC:全体的な撮影の雰囲気はどうだったのでしょうか?

I:平家と源氏では撮影のセットが違うので、収録も分かれるんです。でも平家方でもジュースを誰がおごるか、という「男気じゃんけん」というゲームで盛り上がっていましたね(笑)。今16代チャンピオンまで来たんですが、教盛役の鈴之介くんが強いです。源氏も平家も撮影を通じてどんどん絆が深まっていくんでしょうね。

K:でも源平対立しているわけではなくて、スタジオの前の「前室」でお会いしたときも和気あいあいって感じです。あ!でも!弁慶さんはある人に会ったときに「あ!この人がオレを殺した人だ!」って騒いでましたっけ(場内爆笑)。

I:源氏方も平家方も、お互いオンエアを見るまでお互いの芝居はわからないのですが、それでも仲はいいですね。

K:オンエアは見ています。家にいないときは録画したり…(磯Pに「どうですか」とつっこまれて)えええ!どうですかって言われても!(笑)でも、一視聴者として言うなら…ちょっと最近の平家はピリピリしてますよね…?(場内爆笑)ちょっと一線を越えていけないほうへ踏み込んじゃってるんじゃないかなあって…(笑)。
でも、皆さん凄く神経を使ってお芝居をされているのではないでしょうか。画面から伝わる緊張感とは別に、現場もきっと、いい意味でのピリッとした空気があると思いますし。

《未放映回VTR/第43回》
・弁慶に真実を告げられるシーン
・常盤御前との別れのシーン
・義経元服シーン

※編集が終わっただけで、まだテロップ、SEやBGMも入っていない「生」の映像でしたが、逆にそれが凄まじい緊迫感を持って見ている側に伝わってきました!音がないと、白刃のように台詞だけが際立って、あんなにゾクゾクと身震いするほどのお芝居だとは!


打倒・平家へ

MC:こうして自分の素性を知った義経ですが、今後の義経について神木さんから。

K:今後平泉に向かうわけですが、そこでも1シーン1シーンが見ごたえのある場面が多くて、それも楽しみにしていただければ。また成長するにつれて、義経自身も自分が背負うものの重さ、大きさを段々と理解していくと思います。自分ではそういう意識を持って義経を成長させていったので、見ていただきたいと思います。

MC:稚児の髪形から元服して曲げを結って、烏帽子をかぶっただけでもずいぶん印象が変わりましたね!(笑)

K:そうですね(笑)。

MC:権力者・清盛はこれから義経に対してどう相対していくのでしょうか。

I:今の清盛は国作りにまい進していて、義経だけでなく、頼朝のことすら意識にないはずです。これから鹿ケ谷の陰謀や後白河院との対立など、政治の世界における出来事を通して、清盛自身が武士であることを忘れていく、そんな場面も出てきます。そんなところ、武士の世を作る、というもともとの夢を思い出させてくれる、というのが源氏の魂なんです。それがこれからの見所です。


大河制作は3年がかり

MC:では、ここで「大河ドラマ制作の裏側」というのを磯さんにお聞きしたいと思います。企画などは普通どのくらい前に動き始めるのでしょうか?

I:今回の場合ですと、企画をどうするか、というのは3年くらい前から始めました。撮影自体は今から一年半前に始まりましたが、主役をどうするか、ということもちょうどその企画の前後に決まりますので、その後に「どの世代を背景にドラマを作っていくか」を考えました。源平時代はとにかく登場人物が多いですから…昔の「新平家物語」も多かったですよね。そこをいろいろ考えて、松山さん(清盛)・玉木さん(義朝)の世代を中心にすえたときに、その親、子どもの世代も合わせて描くことになったわけです。神木さんに義経役をオファーしたのは今年の初めくらいでした。撮影は6月後半くらいでしたか。


橋の上からの眺め

K:第三部のポスター撮影が5月ごろあって、そのあと6月ごろに、まだ遮那王時代の何でもないシーンを撮って、そこから少し間が空きました。五条大橋の撮影のシーンでは、本当にスタジオの中に橋ができてて、下を人が通れるくらいなので高さは2階分くらいありました。あれだけ見ると「ちょっと地面から浮いてる」ように見えますが、かなり大きいんです。

I:この名古屋T1スタジオの倍くらいある場所で撮っていますが、そこをいっぱいに使って橋を作りました。高さがありますから欄干の上に立つのも凄く怖いと思いますよ(笑)。

K:怖かったですよ(笑)。下向いたら人の頭が見える位置ですから。(欄干から)「急いでおりますから」なんてクールに言って降りるんですが、もう…ちょっと下のほう見ないように(笑)。

MC:クールに見えましたけどね!(爆笑)

I:ちょっと殺陣がすべって橋の下に落ちたら、大変なことになります。もちろん落ちても怪我しないように(床に)養生はしてあるんですが。あの殺陣も弁慶と義経の動きは全部決まってやっているので、あの高さで緻密な殺陣をするのは相当度胸がないと。

K:殺陣の基礎を身体に染み付かせておかないと、何かあって間違った動きが来たときに、瞬間で回避できないんですよね。考えているヒマはないですから。だからシーンが始まる前は凄く緊張していました。殺陣も初めての経験だったので、練習は結構やりました。基礎ももちろん、青木さんとも相当練習しました。指導の先生に型の名前を聞いてもわからないんですよ。でも途中からパッと身体で反応できる瞬間が出てきて、練習の成果だ!と嬉しかったです。

I:殺陣の先生が「非常に筋がいい、天才じゃないか」って言ってましたよ(笑)。弓のシーンも的に当たるカットは「射る」と「当たる」は別撮りでやるはずだったのですが、当てちゃうし…(場内大きなどよめき)。

K:それ!(凄く嬉しそうに)是非カットなしで見てほしいです!(場内大爆笑)最初にもしも当たらなかった時、という撮影をして、当たったらその後に殺陣にそのまま入る、と演出指示があり、実際当たって!(笑)もう内心大喜びなんですよ。弁慶に「お見事!」と言われたりして。でも、義経にとってはそれが「当たり前」だから、はしゃいじゃいけない!(爆笑)思わず「あ、そうだ!気合入れなきゃ!」…でもその後の殺陣がものすっごい得意そうな顔でやってるんですよねー(爆笑)。そこらへんも楽しみにしていただけたら。

MC:神木さんのドヤ顔が見られるんですね(笑)。

K:そうそう、ドヤ顔です(場内爆笑)。

I:殺陣の先生が、神木さんの身体が柔らかいので、動きがなめらかに見えるし、太刀を振り回す動きもすごく綺麗に見えるって言ってましたよ。

K:えっ!僕は身体が固いほうなんですが(磯P笑い)…でも関節は柔らかいかな?手首とか足首とか…先生にそう言っていただけると嬉しいです!いま「きれい」という言葉が出ましたけど、僕が義経のイメージでひとつあるのが「美しい」「きれい」なんですよね。所作や殺陣の一つ一つが美しい、そんなことを気をつけていました。それが今出てて、イメージに合ってて嬉しいなって思いました。

MC:前回の大河と比べて、今回の衣装やセットになにか違いを感じますか?

K:セットはどんどん細かく、こんなところまで、という作りこみを映らないところまでに感じます。こんなところにこんなものが、って言う…

I:イカがあったりするしね(大爆笑)

K:そうそう(笑)イカありますもんね、ありがとうございます!弁慶が食べそうなもの、ちゃんと置いてありますもんね。


源氏は白

I:衣装で言うと義経は白、弁慶も白。源氏カラーでもあり、基本的に義経=白のイメージなんですが、一番白がきれいに見えるような素材を選んだり、他のキャラには白い衣装を着せなかったりして、目立たせています。清盛に代表される平家の「赤」、後白河の「銀」というきらびやかな色に対して、源氏は「白」。禿の衣装の赤も、白が美しく見える対比になるようにカメラが撮っています。白という衣装は難しくて、画面で見せるのにいろいろと工夫をされているそうです。

MC:では、最後にお二人から見どころを一言ずつお願いします。

I:清盛のドラマとしては権勢を極める中で失っていくもの、欲のようなものが出てきます。一方平家の繁栄をよそに逼塞していた源氏、という図式が徐々に変わっていきます。平家の持つ力の中に「何かが足りない」。そして頼朝や義経は「自分の夢」を見つけ、邁進していきます。最終的には清盛と源氏との対決になっていきます。このドラマでは清盛と義朝の父の代から描いていますから、その集大成といいますか、最後50話までの10話は有名な歴史エピソードがどんどん出てきますから、是非お見逃しなく。

K:見どころはやっぱり「僕のドヤ顔」ですね!(場内大爆笑)それもありつつ(笑)義経と弁慶の二人が醸し出す暖かい気持ち、関係性を続けていくので、真剣な(赤と白の)ドラマの中に暖かい「オレンジ色」のような灯りを添えていられたら、と。そのあたりを楽しみにしてください。


≪場内からの質問≫

Q:オールアップの日、義経から弁慶に初めて「ごちそう」したのは何ですか?(笑)

A:僕はいつもイチゴヨーグルトとかだったんですが、最後青木さんが選んだのは「毎日骨太ヨーグルト」のジュースです(笑)。もう青木さん十分骨太なのに!これ以上太くしたらどんだけ?っていうくらい、もう…(爆笑)。

Q:義経は清盛、義朝と「二人の父」を持つ存在ですよね。今後ドラマの中で父と慕った清盛と戦うわけですが、彼が真情を吐露する場面というのはあるのでしょうか。また、無いとすれば、いま神木さんが義経として、実の父・義朝、育ての父・清盛に向けてそれぞれ「伝えたいこと」があれば、是非お聞きしたいと思います。

A:なるほど!途端に取材並みな質問で(場内爆笑)…いきなりハイレベルな質問ですね。そうですね、吐露するカットもあったと思いますし…弁慶に「待ってるぞ」と言われてから4年の月日を経て、平家を倒す、と心を決めた日から、(清盛に対する)感謝はもちろんあったと思います。「父と慕うた人であります」という台詞の通りで、感謝はもちろんあります。でも真実を知って、その人が敵になったとしても、その土台には恨みとか倒すとか言う気持ちが全てではないと思います。「感謝はしています、でも敵ですよね」という…たぶん、清盛に対してはそう思って倒す!と言っている…所存です(場内爆笑)。


≪全編終了≫