死亡を原因とする雇用関係終了で、退職金が遺族に支払われる場合があります。
この退職金は死亡労働者の所得ではないのですが、受け取る遺族が相続税の計算にのせてよいことになっているため、相続財産と勘違いするようです。
これとは異なる類似のケースで労働者が生前退職し、退職金支給日までに死亡した場合、この未払退職金は相続債権として遺産を構成し、相続の対象となり、法定相続分に従い法定相続人の受け取りとなります。
ところが表題の退職金は労働者の死後発生するため、労働者の所得、遺族の遺産のいずれでもなく、いわゆる企業から遺族への贈与にあたります。遺産でもないので受け取りは法定相続人ではなく、会社規定の受取人とできます。この規定ない場合、相続人複数の間でのいわゆる争続に巻き込まれるので、供託といった面倒な手続する手間を考えるなら、受取人を規定しておくのがリスク回避に役立つでしょう。
で、中ほどに書いた相続財産となる退職金を、規定にあるからとうかつに遺族に支払うと、今度は受け取れなかった他の法定相続人から相続分の支払いを要求されることが想定されます。退職金の2重払いに陥るのです。まさに争続の渦中に企業が巻き込まれかねません。退職金のある会社は、退職金規定がこれらの一連のケースを峻別して規定化されているか、今一度点検されるといいでしょう。
(2025年4月8日投稿)