労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

最低賃金と割増賃金

2024-10-30 04:51:51 | 賃金
 

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最低賃金と時間外労働の関係について立った質問が、速攻で解決済みになったので、記事に残しておきます。質問内容詳細はリンク先をお読みください。

まず時間外割増には最低賃金法の適用はありません(法4条3項2号、則1条2項1号)。

最低賃金の適用のない時間外割増の時間単価は最賃割れしてもいいのかというと、そうでなく労基法施行規則19条1項各号にあてはめ求めます。本件は、1号:時給額、2号:日給を所定時間で除した額を合算(7号)した額になります。

1040+800÷8=1140円(時間単価)>1114円(大阪/2024年)

1140×1.25=1425円(時間外割増賃金額)

ということで、質問者さんの賃金は最賃を満たしてはいますが、法定割増率割れしていて、労基法に触法していることになります。

(2024年10月30日投稿)

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給与明細書の保管期間

2024-09-29 13:47:26 | 賃金

古くなった給与明細は処分していいか、何年前のまでを取り置きしておけばいいか、という質問をよく見かけます。

それに対し賃金未払いの請求は5年で時効(法改正があるまで当面3年)ですので、未払い残業代請求考えてなくても3(5)年は保存したらいいという回答がつきます。

以下は筆者の意見ですが最低10年保管は必要でしょう。というのも、賃金過払いのケースがあるからです。すなわち計算間違いで多く支払った、支給手当の要件はずれたのに手当支払い続けたから、返してくれというものです。

賃金未払いと異なり、こちらは民法上の不当利得という法律関係(民法703条以下)に立ちます。時効も事業者が気づいて5年、支払って10年(どちらか先に到達した時点で成立)です。10年というととてつもなく長いですが、保管場所にゆとりがあるなら保管しておかれることです。こと気のぬけない雇用主だったなら、そうしておくことです。まさかの返金要求の時、保管してる給与明細がないと、申し立てた雇用主の証拠らしき給与明細が偽造だ、言いがかりだと対抗できないからです。

(2024年9月29日投稿)

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通勤手当と民法

2024-07-01 11:45:43 | 賃金

ものの資料によると、9割の事業者が通勤手当を支給しており、支給するのが当然の感がある一方で、非課税扱いからくる誤解も相当あるようです。本記事では、通勤手当を特にことわらなければ公共交通機関での運賃、定期券代として用います。

最低賃金、時間外割増等の時間単価計算からは通勤手当を除外します。通勤にかかる費用に応じてでなく、一律支給といったものですと、隠れ第2基本給ですので除外できません。年次有給休暇の休暇日賃金も、その日働く時間分の賃金の場合は、実費弁済的ということで含めなくてよい一方、平均賃金で休暇日賃金を支払う場合は、計算に含めます。ただし通勤定期券といった場合、2重払いになるなら、含めなくともよいとしています。逆に日割りで回収するなら、含めます。

雇用保険含む社会保険料計算では、通勤手当は賃金として扱われ計算の基礎となります。同じ新卒社員でも遠方から通勤する者は、高い保険料をとられ(その分源泉所得税は低まる)手取りが同期より少ないといった目にあいます。60歳以降の高年齢雇用継続給付金においても、遠距離通勤者は、実費弁済であり必要経費なので賃金でないと主張を展開されてました。同条件で働く職住近接同僚には給付金でるからです。いっそうのこと労働者をやめて、個人事業主になれば必要経費としてみとめられるでしょう(労働者でなくなるので給付金も当然うけられなくなります)。

なぜ賃金なのかは、民法におおもとの規定があります。

(弁済の費用)

第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

ここでいう債務者とは、労務を提供する局面では、提供義務がある側「労働者」を指します。労務履行するに移動にかかる費用は、労働者持ちということです。別段の意思表示、雇用主(ここでは「債権者」)が負担するという意思がない限り、労働者持ちです。

通勤手当をださない求人をみつけることが難しい近今、現代仮名遣い以外で改正されることなくこの規定のままになっているのは、民法誕生当時のせいでしょう。公布されたのは1896年(明治29年)、山手線が環状運行(1925年)する30年も前です。公布当時の雇われ人は、住み込みか自宅からてくてく歩いて通っていた時分です。通勤手当などいう概念もなく、その後路線拡張、住域も拡大し電車通勤が主流になり、遠方からのよりよい労働者を確保するために通勤手当が当たり前になっても、別段という文句があったために、法改正の目をみなかったといえるでしょう。結論、労働者のポケットからやりくりして就業場所におもむくのが本則にかわりなく、それを雇用主にだしてもらう賃金となります。

何も時代考証しなくとも、このカウンター(反対、対抗)を考えればしっくりいきます。

労務提供を受けた雇用主は、賃金支払い債務を負います。この賃金支払い局面での「債務者」が今度は雇用主に当てはまり、その義務履行費用は、雇用主もちとなります。

賃金支払い債務をはたすための手間暇はけっこうかかります。出勤簿から時間計算し、賃金額計算、税額保険料算出、給与明細作成、銀行から金銭おろし個袋にわけて手渡し用意保管、手渡しにかえて銀行振込でしたら、銀行依頼書作成、振込料金等々、それら使用人にさせるならその賃金。労働者は一銭も負担しません。負担させたいと思う事業者はいれど、負担してよいと思う労働者はまさかいないでしょう。

通勤手当を基準にへたに「債権者もち」に法改正してたら給料もらうために労働者がめいめい賃金得るために仕事の手を休めて自分で計算し、自分で会社の取引銀行までとりにいく、それらの手数は労働時間にはいらない、費用負担「債務者もち」の民法条項に合理性があります。

(2024年7月1日投稿)

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賃金手渡し

2024-02-15 11:10:03 | 賃金

賃金を現金で手渡しって合法なんですか、という質問が立つくらい銀行振込がポピュラーになりました。とはいえ、6年前の調査ですが、銀行振込でない、給料手渡しする勤め先は、全国平均で10%と、まだ一定数あるようです。地域差も顕著で、関東東海は7~8%である一方、中国四国は20%と意外と高率です。郵貯以外で、地元の地方銀行1行、信用なんとかと名くのつく金融機関があればいいほうで、都市銀行1行もない地方もあるのだろうと想像に難くないです。市街地にあるならともかく、郊外だとアクセス悪いですし、事業者だって金子(きんす)そろえるのも一苦労でしょう。両替だけでなくコイン取り扱いも手数料とるご時世、銀行であってもコインは手間以外の何物でもなく、今後銀行振込が地方くまなく浸透していくのでしょうか。

労働基準法24条に賃金払いの原則が規定されています。

  1. 通貨で
  2. 直接労働者に
  3. 全額を
  4. 毎月一回以上
  5. 一定の日に

という内容で賃金払い5原則と呼ばれています。それぞれの原則に対しこまかな例外が定められていますが、銀行振込はこのうちの通貨払いの例外にあたります。

そこで、銀行振込に関する通達のうち参考になる分をピックアップしてみました。

・銀行振込するには、労働者の同意が必要だが、どういう形の同意取り付けでもよく、賃金振り込んで欲しいとの銀行名口座番号かかせた書面でもって、同意を推測できるとしてよい。

・振込は、賃金支払日に全額払いだせる形を要する。

・口座振込を実施する事業所は、労使協定の締結を要する(注:法令に根拠はなく、行政の要請でしょう。)。

・口座振込日に、賃金額、控除額、振込額を記載した書面を労働者に交付すること。

・振込日の午前10時までに口座から引き出し可能とすること。

・賃金計算を外部委託する場合であっても、振込実行は使用者がなすこと。

(2024年2月15日投稿)

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月間割増賃金計算の積み上げ

2023-05-14 08:47:42 | 賃金

月間労働時間のカウント、そのうち法定休日労総時間、時間外労働時間のカウントがむずかしい、36協定の限度時間枠におさまっているかの確認がよくわからない、そして働いた時間分の賃金、とくに60時間超の割増賃金の付け方がわからない、という質問をみかけました。

36協定の限度枠

会社が結んだ36協定内容は、複数の要素が入り組んで複雑にして理解しにくいです。残業を命じる部下のいない従業員は、勤め先に協定があることを把握しておけばいいでしょう。しかし、残業させる部下のいる上司は、36協定の内容をすみからすみまで理解しておかないといけません。はたして今月の限度時間を使い切ったか、常時把握していないことには、月しめてから上限突破がわかってからでは、あとの祭りです。日ごと、月初の累計把握がかかせません。違法残業させた取り調べを受けるのは、経営者の社長でなくまず部下の直接の上司です。ただ単に、月枠だけでなく年枠、そして過去5カ月の勤務状況等から求まる上限のうち、最小値が何時間かが重要です。以下、どの値を把握していなければならないか一覧にしてみました。

  時間外 法定休日
36協定なし 日8時間、週40時間こえて労働させてはならない 法定休日に労働させてはならない
有効な
36協定あり
協定枠内でも法定休日労働含む時間外労働が月100時間に達してはならない
同じく法定休日労働含む時間外労働が当月含め過去2か月~6か月平均80時間超えてはならない
  一般条項 月45時間、年360時間まで(協定時数が短いならその時間まで) 協定回数まで
  特別条項 一般条項の月枠限度枠を超える手前で月間特別条項の発動は年6回まで
法定休日労働を含め時間外労働は月間協定時数まで
一般条項の年枠時間外時数をこえる手前で特別条項発動しても年間時間外720時間まで(協定時数が短いならその時数まで)  

週間労働時間のイメージ

  時間外労働   法定休日労働
               
     
     
   ↑  
 
 

法定労働時間

 ↓
← 週 4 0 時 間 →

月間賃金率のイメージ

    時間単価×1.50  
    【休日割増賃金】
時間単価×1.35
    【時間外割増】
時間単価×1.25
  【所定賃金】
  ← 所定労働時間 → ← 時間外60時間まで → 60時間超 →  

割増賃金計算

最後に月の時間外割増計算例です。時間単価1000円、月間累計が次のとおりだとして、

時間外労働(日) 49時間
時間外労働(週) 23時間
法定休日労働 27時間
法定休日割増賃金 27×1000×1.35=36,450円
時間外労働全体 49+23=72時間
60時間内25% 60×1000×1.25=75,000
60時間超過50% (72-60)×1000×1.5=18,000

時間外割増賃金にはこういう算出方法もあります。

時間外全体25% 72×1000×1.25=90,000
60時間超過25%プラス (72-60)×1000×0.25=3,000

(2023年5月14日投稿)

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