前回記事フレックスタイム制に関連した続きです。
2019年働き方改革法施行で、労基法に新設された労働時間の制度のひとつに、フレックスタイム制の拡張があります。
従前は、1か月以内単位だったのが、清算期間3か月以内に拡張されました。清算期間1か月を超える場合、締結した労使協定は労基署に届け出義務が付され、有効期間の定めを設けなければならなくなりました(過半数労働組合との労働協約である場合をのぞく)。労使協定は免罰効果の発生しかないので、労働者の権利義務を定める就業規則にフレックスの要件規定しなければならず、要件盛り込む就業規則の変更手続きもあわせて必要です。
ここから本題です。下記に述べるように、1カ月(以内)ものフレックスより3か月(以内)フレックスを導入する場合、慎重に検討する項目があります。
暦日数 | 月あたり週平均50時間 | ||
---|---|---|---|
(計算値) | 時間 | 分 | |
28日 | 200.000 | 200 | 0 |
29日 | 207.143 | 207 | 8 |
30日 | 214.286 | 214 | 17 |
31日 | 221.429 | 221 | 25 |
それは時間外労働を含む労働時間管理です。
1つ目は、各月週平均50時間超える部分は、時間外労働として、その月の賃金計算期間にて時間外割増賃金支払いを要します。その月の実総労働時間が右表を超える時間を時間外労働とします。
月の暦日数×50時間÷7で求めます。最終月が月未満の端数期間である場合はその暦日数から求めることになります。
2つ目は、1つ目で超過に該当する時間を控除したうえで、3月以内の清算期間の実総労働時間が法定総枠時間超えした時間に対し、時間外労働として把握します。清算期間の暦日数×40時間÷7で求めます。これは原則最終月に発生しますので、36協定特別条項をもうけていないと、最終月の1と2あわせた時間が、協定時間のたとえば45時間に収めないといけません。
暦日数 | 法定総枠時間 | ||
---|---|---|---|
(計算値) | 時間 | 分 | |
89日 | 508.571 | 508 | 34 |
90日 | 514.286 | 514 | 17 |
91日 | 520.000 | 520 | 00 |
92日 | 525.714 | 525 | 42 |
コンスタントに20時間の時間外労働をこなしている場合、月で見ればなんでもない月間20時間時間外労働ですが、フレックスの3カ月目最終月には累計ともいうべき60時間に達するわけで、その超過は月間60時間超5割増し賃金の対象になります。いうなれば36協定の月枠がどんなに大きく設けても複数月単位フレックスに対しては単月限度枠1/3にせばまるイメージに等しいでしょう。
このことから複数月フレックスを導入するのであれば、ある月の所定超え労働時間を清算期間内の別月の勤務時間縮小により労働者が解消させることのできる勤務形態でなければ、導入は見合わせたほうがいいでしょう。
(2024年4月15日投稿)