NPO法人さなぎ達ブログ

横浜市寿地区や近隣地域を中心に社会的生きづらさを抱えている人々を対象としながら活動を行っているNPO法人です。

依存症の患者さん

2012年02月28日 | 日記
山中理事長(ポーラのクリニックの院長)から、みなさまへ。
作家の山崎洋子さんが先日さなぎの宴会に出席してくださり、2/25の自身のブログに依存症のことを書かれていて、「寿のことを書くときは文の顔つきがいつもと違いますね」なんていう感想文をメールした。
依存の壮絶なタイプは寿にはごろごろ居る。以下2例は本日2/27の外来にて経験した話である。



  血管肉腫のために右腕がいたくて上がらない49歳の高血圧患者(男性Sさん)が簡易宿泊所(ドヤ)にいる。
彼は現在のドヤに愛着があり、頭もよく、面倒見も良く、半ば管理人的~帳場さん的な役割をしているが病気の進行はいかんともしがたく、最近の外来では弱気な発言や愚痴話が多くなった。
今日のSさんの外来での愚痴話は「寿の住民と依存について」であった。

 半年ほど前にSさんのドヤの上の階にアルコール依存症の患者(39歳A)が入居してきたらしい。Aの依存はアルコールだけにとどまらず、周りの人間やQQ車にも徹底的に依存するらしい。よる一人で不安になるとQQ車、週に8-9回は呼ぶ。 そのたびごとにQQ隊員は話を聞く。Sは根っからのお節介なのと愛するドヤの名誉と信頼性回復のため、QQ車の音を聞くと部屋に上がり、隊員からAを引き取って朝まで傾聴して不安をとろうと話し相手のつきあいをする。ようやく明け方にねむりについたAに酒を飲ませないため、部屋を出るときに残った酒を処分しておいたのにも関わらず、数時間の仮眠の後Aはまた連続飲酒に入る。Sさんあきれて怒鳴って血圧が上がってキレそうになる。結局QQ車が来て警察も来て役所のケースワーカーも来て、大勢の人間を振り回した挙げ句、Aはまたアルコール専門病院に収容されていった。
「いや~依存性ってのはすごいもんですね~」とSさん。話してる間は右手の痛みを忘れていた。

 こんな話は全くの茶飯事。もう一例。
同じ日の外来にきた患者に、今度は山中が切れた!
78のドヤ内高齢者。通院歴3年。最初は両足の指に壊疽が発症し、腐って足指の骨が露出してとても臭かった。閉塞性動脈硬化症の治療方針には温浴洗浄と血管拡張剤の点滴と腐った肉と皮膚の除去。そして何よりも禁煙!!!!!である。禁酒と禁煙、禁酒と禁煙、念仏の様に毎日外来で処置しながら患者の耳横で唱えた。幸か不幸か自力で全く歩けない様になり、酒も煙草も買いに行けなくなった。以来、ヘルパーが献身的に車いすを押して通院。看護師はかしづく様に足を温洗、ほぼ2年かかったが壊疽は完治した。
「よかったね~ 煙草やめて。今度はまた歩けるようになるまで応援スルからね」と半分偽善者のような声かけをしながら、半分は本気で治療を継続した。
 そのかいあって、3ヶ月前から歩行器を使えば自力でドヤから出られるようになった。しかし、これが、悲劇を産む。
アルコールも依存症歴があるため、担当のケースワーカーは患者に現カネを渡していない。だから禁酒も禁煙も大丈夫だと思っていた。ところが、煙草は路上に落ちている。どうりで歩行器にて散歩の距離が伸びたわけである。落ちてる煙草を吸ってはまた歩きのリハビリを繰り返すことになった。
血行改善の治療のために、歩きリハビリによる血管拡張療法VS煙草による血管収縮作用、どちらが勝つのかはわからない。が、しかし、再度喫煙の事実に一同愕然! 少なくとも山中はキレた。久しぶりに外来で怒鳴り、カルテで患者をひっぱたいた。 とんでもないDV(DOCTO’S VIOLENCE)であるが、これ以外この患者に通用する禁煙指導はない。

 「ほめる」とか「応援」とかが通用しない依存症の人はかなり居る。その人達が寿のボトムを構成している人種達であることは間違いない。この人達と向き合う医療者が寿には必要であると思う。被災地とは違う弱者の町である。医療者の堪忍袋は無限大に保つようにしないと・・、DVで訴えられてしまう。クワバラクワバラ。


BE WITH YOUさなぎ達

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