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1960年、オードリー31歳
のとき。次なる映画の企画がた
くさんもちこまれたが、なかな
か首を縦にふらなかった。
いまや、多くの人々にとって、
オードリー・ヘップバーンのシ
ンボルとなっている役だ。
けれど、オードリーはこの話を
引き受けるかどうか、ためらっ
た。
理由は、ホリー・ゴライトリー
は高級コールガールだったから
だ。
それでも、不似合いだからこそ、
チャレンジする価値があるのでは
ないかとオードリーは考えた。
結果、「明るく純粋でユーモラス
な愛すべき高級コールガール」と
いう、オードリーならではの新し
い女性を生み出した。
映画の冒頭から、一人の女性に観
客は引き込まれる。スレンダーな
身体のラインに沿ったジヴァンシ
ーのリトルブラックドレス、
大粒のパールのネックレス、黒
サテンの長い手袋、高く盛って
セットされた髪。
夜明けのニューヨーク五番街に
タクシーで降り立ったその女性
は、あるディスプレイの前に
たたずむ。
片手にデニシュ。彼女が覗き込
んでいるウインドは、「ティファ
ニ-」。有名なシーンだ。
また、この映画は名曲を生み出し
た。『ムーン・リバー』。オードリー
が非常階段に座って、ギターを
爪弾きながら歌を口ずさむ。
けれど、実は当時、試写を観たの
ち、映画会社の社長は歌のカット
を指示した。
するとオードリーがさっと立ち上
がって言った。
“わたしが生きているうちにそんな
ことはさせません“
激しい主張だった。スタッフが彼女
の腕をつかんで引き止めなくてはな
らないほどオードリーは激昴してい
た。彼女が自制心を失いかけること
はとても珍しかった。彼女はこのシーン
にこそ主人公の純粋無垢な心が表現されて
いると感じていたからだ。
歌はそのまま使われることになった。
『ティファニーで朝食を』は、興業
成績もよく、オードリーはアカデ
ミー賞の主演女優賞にノミネート
された。