兎神伝
紅兎〜革命編其乃二
(33)兎喰
揺れる…
ゆらゆらと揺れている…
揺籠にも似た心地良い揺れ…
しかし、その揺れは、不意に初めて乗った船酔いの揺れに変わった。
『ウグッ!ウグッ!ウグッ!ウグゥゥゥッ!』
遠き日の甘い眠りは、苦悶に満ちた呻きに覚まされた。
『薊!』
思わず飛び起きる恒彦の目の前で、ほっそりとした小さな身体(からだ)に、荒くれ男が三人掛りで群がっていた。
『ウッ…ウッ…ウッ…』
『オッ…オッ…オッ…』
『フゥ…フゥ…フゥ…』
剛毛に覆われた三人の荒くれ達は、薊の口と股間と尻の三つの孔を同時に貫き、獣じみた声をあげていた。
周囲では、先に事を終えた男達が褌を締め直し、次の順番を待つ男達は膨らませた股間を揉みながら、涎を垂らしながら見物をしていた。
既に何人の男達に貫かれたのであろう…
薊の股間と尻の孔から、血混じりの白穂が滴り落ちていた。
『ウグッ!ウグッ!ウグッ!ウグッ!』
薊はまた、三つの孔を抉られる度に、苦悶に満ちた声を漏らした。
『クフッ!クフッ!クフッ!』
捻り込まれた穂柱の先端が、咽頭を突くのであろうか…
時折、喉の奥でむせ込みだす。
しかし、図太いモノで口を封じられ、咳き込む事ができず、目にいっぱいの涙を浮かべていた。
それでも、薊の三つの孔を貫く男達も、周囲で見つめる男達も、一編の憐憫をかけようとする者はいない。
周囲で見つめる男達は、相変わらず涎を垂らしてニヤけており…
三つの孔を貫く男達は…
『ウォッ!ウォッ!ウォッ!』
『オォッ!オォッ!オォッ!』
『フゥッ!フゥッ!フゥッ!』
一段と声と息を荒げながら、腰の動きを早めて行った。
『ウグゥッ!ウグゥッ!ウグゥッ!』
涙を溢れさせ、薊の漏らす苦悶の声が、哀れを誘う。
『やめろ…やめろ…やめろーっ!!!』
最初は金縛りにあったように震えて見つめていた恒彦は、遂に声を張り上げ、男達の間に割り込もうとした。
すると…
『恒彦、おめえにはつくづく失望させられたぞ。』
野太い声と共に、肩を掴まれ抑えつけられた。
『親父…』
『船酔いはするは、兎相手に甘っとろい飯事遊びに興じるわ…女の味を覚えて早々、百舌の奴を責め殺した時は、見所ある奴だと頼もしく思ったがな…俺は、つくづくガッカリさせられたぞ。
さあ、もう一度よく見ておけ。兎は、こうやって喰うもんだ。』
恒彦の父…
御宮一家の頭、善治郎は前一本欠けた黄色い歯を見せてニヤけると、恒彦の顔を無理やり薊の方に向けた。
『ウォォォーッ!!!!』
『オォォォーッ!!!!』
『フゥゥゥーッ!!!!』
三人の渡瀬人(とせにん)達が、思い切り三つの孔を突き立て、獣のような咆哮をあげるのと…
『グフゥゥーッ!!!!』
薊が背中を弓形にして、苦しげにあげる呻きが交差する…
暫しの間、薊の三つの孔を貫いたまま、臀部をヒクつかせて静止していた三人の渡瀬人(とせにん)達は、事を終えると、漸く穂柱を引きぬいた。
『ゲフッ!ゲフッ!ゲフッ!』
激しく咽せ込む薊の股間と尻の孔から、鮮血混じりの白穂が、ドロッと溢れ出してくる。
『ゲフッ!ゲフッ!ゲフッ!ゲフッ!』
咽頭目掛けて放たれた、大量の白穂が、気管に絡みたくのであろう…
薊は、口と喉を押さえ、更に顔を真っ赤に咽せこみ、転げ回り続けた。
しかし…
『さあ、次は俺達の番だ。』
『オラッ!脚を拡げろよ、脚をよ!』
先に事を終えた仲間が、未だ糸を垂らす穂柱の先端を布切れで拭き取る傍ら…
順番を待ち焦がれていた別の渡瀬人(とせにん)三人が、早くも褌を脱ぎ捨てると、薊の手を押さえ、乱暴に脚を開かせるや、血と白穂まみれの股間の参道と尻の裏参道に荒布を捻り込み出した。
『イッ!イギーッ!』
薊は、爛れた剥離塗れの肉壁を擦られる激痛に、首を振り立て呻きを上げる。
三人の渡瀬人(とせにん)達は、そんな薊の姿に憐憫の情を寄せるどころか、ますます穂柱を膨張させ…
『ヒヒヒヒ…こんな汚ねえところに、でぇーじな俺の一人息子を通すわけにゃーいかんからな。』
『しっかり拭き取って、綺麗にしてから、息子を通してやるぜ。』
一層、激しく乱暴に荒れた参道の肉壁を擦り、先に放たれた白穂を掻き出し拭き取り続けた。
『イギッ!イギッ!イギッ!ヒィーッ!!!!』
首を振り立て、身を捩って呻く薊の声が、物悲しく船内に響き続ける。
しかし、それはまだ、始まりに過ぎない事を、薊は知っている。
『さあ、俺の上を跨いで、四つ足になって貰おうか。』
薊は目にいっぱい涙を溜め、しゃくりあげながら、言われるままに、渡瀬人(とせにん)の一人の上を跨いで四つ足になる。
跨がれた渡瀬人(とせにん)は、薊の髪を乱暴に鷲掴んで顔をあげさせるや、ニンマリ笑いかけながら、もう片方の手で、薊の股間を弄りだす。
やがて、神門(みと)の位置を正確に確認すると、膨張した穂柱を慎重に貫き出した。
『ウグーッ!』
思わず目を瞑り、固く口を食いしばって呻き出す薊に…
『どうだ、やっぱり白穂でべたついているより、乾いている方が具合良いだろう。』
渡瀬人(とせにん)は、嘲笑うように言いながら、次第に腰の動きを早め出す。
『ウグーッ!ウグーッ!ウグーッ!』
薊は、顎を逸らし、背中を弓形にしながら、更に苦悶の呻きを上げた。
すると…
『表だけじゃー、物足りねぇなー。裏にも通してやろうじゃねーか。』
もう一人の渡瀬人(とせにん)が言うなり、尻の裏神門(うらみと)に穂柱を突き立て…
『オラオラ!呻いてないで、口を開けろ!俺のをしゃぶるんだよ!』
更に別の一人が薊の頬を激しく打ちながら、口を開かせ、穂柱を捻りこんでいった。
それが、どれほど続けてられていったかは定かではない。
三人が事を終えれば、また別の三人が…
その三人が終われば、更に別の三人が…
そうして、順番待ちの三人が一順すれば、最初の三人から、また同じ事が始められる。
恒彦は、父親の善治郎に無理やり薊の方に向けさせた顔を必死に背けようとしつつ…
思いとは裏腹に、身体(からだ)は反応を示し出す。
股間が、異常にムズムズと疼き出したのだ。
同時に、それまで渡瀬人(とせにん)達に交代で回される薊から、必死に目を背けようとしていたのと打って代わり、見たいと言う欲求にかられ出した。
苦悶に呻く薊の姿から、目を背けようと言う思いと、見たいと言う欲求…
目を背けても、聴こえて来る渡瀬人(とせにん)達の喘ぎと、薊の呻き…
自然に起こる生理現象は、意識だけではどうにもならず、身体(からだ)は更に疼いてゆく。
やがて、少しずつ意思は欲求に打ち破られてゆき…
気づけば、恒彦の目は、渡瀬人(とせにん)達に回される薊の姿に釘付けられていた。
『どうだ、おめえもそろそろやりたくなってきたろう?それでこそ、男ってもんだ。』
善治郎は、不意に恒彦の褌を外すと、極限まで膨張している息子の穂柱を見て、ニヤけて言う。
『ムグッ!ムグッ!ムグッ!ムグググゥゥゥーッ!』
恒彦は、何も答えず、相変わらず目の前で三つの孔を抉られ、苦しげに呻く薊を、無言で見つめ続けた。
すると…
『なーに、黙り込んでる。やりてぇなら、やっても良いんだぞ。ほれ、此処がムズムズ疼いて辛かろう?やったら、気持ちえぇぞー。』
善治郎は、無造作に恒彦の穂柱を掴み、揉み扱き出した。
『ウッ!』
思わず声を漏らす恒彦の目の前で…
『ムグッ!ムグッ!ムグッ!』
いよいよ絶頂を間近に控えた三人の渡瀬人(とせにん)達に、一層激しく三つの孔を抉られ、身悶えしている。
『ウッ…親父…やめっ…』
一瞬、父に抗いかけた恒彦だが…
『オォッ!オォッ!オォッ!』
『ウォッ!ウォッ!ウォッ!』
目の前で、薊の股間と尻の孔を抉る渡瀬人(とせにん)の腰の動きに合わせて穂柱を扱かれるうちに、恒彦は金縛りにあったように硬直し…
やがて…
『オォォォーッ!』
『ウォォォーッ!』
『フゥゥゥーッ!』
三人の渡瀬人(とせにん)達が、薊の三つの孔に放つのと同時に、恒彦の穂柱からも大量の白穂が放たれた。
『どうだ、目の前で兎が喰われるのを見て放った気分は。気持ち良ぇだろう。』
漸く解放する息子を見下ろしてニヤける父の前…
『ハァ…ハァ…ハァ…』
恒彦は、床に手をつき肩で息をしながら、目の前の床に目を留め震え出した。
『アァァ…俺は…俺は…』
そこに染み付く、大量の白濁した生臭いモノ…
薊が弄ばれる姿に欲情し、身体(からだ)を反応させてしまった事を明かしている。
『さあ、今度は、おめえが兎を喰う番だ。』
善治郎は、尚も震え続ける恒彦の髪を掴み上げると、また薊の方に顔を向けさせた。
渡瀬人(とせにん)達に、数えきれぬ程貪り尽くされた薊は、口と神門(みと)と裏神門(うらみと)から白穂を垂れ流し、ぐったりと横たわっていた。
『どうした?早く喰え!喰ったら、また、褌を締めさせてやるぞ。』
善治郎は言うなり、薊の側に蹴倒す恒彦に、褌をちらつかせて見せた。
『ほれほれ、おめえの褌、男の証だ。早く兎を喰って、男になって見せろや。』
すると、周囲からは…
『それとも、坊ちゃんは女でいる方が好みですかい?』
『坊ちゃんのケツの締め付けは、格別でやしたからねー。』
『舌使いも抜群でやしたよ。覚えてやすかい?十一の時、信治の奴にケツを抉られサオを扱かれながら、あっしのをしゃぶりなすった時の事をよ。ありゃー、たまりやせんでしたぜ。』
『ささ、兎を喰えねえなら、昔みたく、こっちにケツを向けておくんなせぇ。あん時みてぇに、たっぷり可愛がってやりやすぜ。』
渡瀬人(とせにん)達の下卑た野次と笑いが飛び交ってくる。
『ウゥゥッ…』
脳裏に交差する、渡瀬人の男達に玩具にされ続けた幼き日々の地獄の光景と、目の前で陵辱された薊の姿に、恒彦は苦悶の声をあげ…
『どうした?早う兎を喰え。それとも…やっぱ、喰われる方が良えのか?それならそうと…飯事遊びに興じたその兎と、仲良く並べて、喰ってやってもえぇんだぞ。
そんでもって、おめえは一生、褌つける事も許されず、サオもタマも丸出しに、玩具にされ続けるんだ。』
善治郎が、更に追い討ちをかけるように恒彦の肩を抱き、頬を舐め回しながら、剥き出しにされた穂柱と穂袋を握ってくると…
『うわぁーーーーーっ!!!』
恒彦は、遂に狂ったような声をあげて、薊に飛びついて行った。
それからの記憶は、完全に飛んでいる。
自分が、薊に何をしたのか、どんな風に貪ったのか、何一つ覚えていない。
ただ…
『ウゥゥーッ!ウゥゥーッ!ウゥゥーッ!』
『アァァーッ!アァァーッ!アゥッ!』
絶えず耳に飛び込む、苦悶に満ちた呻き声…
二つの孔を抉り、白穂を放つ感触…
それだけが、二十数年経った今もなお、生々しく身体(からだ)に染みついている。
『あ…薊…』
漸く我に返った恒彦の周囲には、下卑た野次を飛ばして取り巻いていて渡瀬人(とせにん)達の姿はなく…
息も絶え絶えな薊だけが、そこに転がされていた。
『でかしたぞ、恒彦。』
『親父…俺は…俺は…』
『やっぱ、おめぇは俺の倅だ。船に乗って早々に酔い潰れた時はガッカリだったがな、これで、おめぇは正真正銘の一端の男だ。』
善治郎は、震えて顔を見上げてくる恒彦に、また黄色い歯を見せてニヤけると、褌を投げつけ、その場を去って行った。
恒彦は、暫しの間、念願の褌をつける気にもならず、茫然とそこに転がる薊を見つめ続けた。
この時になり、今更のように、忘れかけていた、責め殺してしまった妹の百舌の事を思い出す。
『アッ!アッ!アッ!キャーーーーッ!!!』
尻の裏参道に指を捻り込んだ瞬間…
形容不能な絶叫をあげる七つの少女の声…
『痛い痛い…痛いよう…』
『痛い…痛い…もう…もう…やめてよう…痛い痛い…』
最初は裏参道…
次には参道に、穂柱を捻り込む度に、悲痛な声をあげて泣き噦る妹の顔…
あの時は、意に解するゆとりすらなかったが…
今になって、そこに転がる薊の姿と重なり蘇り、恒彦を責め苛み続けた。
『何て事を…俺は…俺は…何て…』
気付けば、恒彦は胸を掻き毟りながら、咽び泣いていた。
すると…
『恒彦様…』
不意に、もう死んでいるのではないかと思われていた薊が、恒彦の方に手を伸ばしてきた。
『薊!すまねえ!すまねえ!』
恒彦は、思わず飛びつくように側に寄ると、薊は伸ばした手を恒彦の頬に触れさせた。
そして…
『薊…俺は…俺は…』
尚も何か言いかける恒彦を遮るように力なく首を振り、何とも優しげな笑みを浮かべて見せた。
『薊…』
『刑部様…』
恒彦は、漸く長い夢から覚めたように現実に返ると、腕の下から心配そうに見上げる若芽の顔がそこにあった。
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