追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

動物奇譚 (2) 酔っ払い動物達…2

2024年09月19日 | 文化・文明

動物奇譚

(2) 酔っ払い動物達…2

人類の祖先が木の上で偶然(アルコール耐性遺伝子)を獲得したことによって、動物最強の酒豪になった。確かに欧米やアフリカ系民族には飲んですぐ顔が赤くなるような「酒に弱い体質」の人は殆どいないが日本や中国、韓国にはワインのコルクを嗅いだだけで、顔が赤くなる下戸も多数いる事も又事実である。何故地球のごく一部地域、極東の人達が突然酒に弱くなってしまったのか、その謎を解く有力な仮説を中国の人類学者が打ち立てた。

酒を飲むと、アルコールは肝臓で分解されて、悪酔いや頭痛、動悸の原因ともなる 「アセトアルデヒド」という物質に変わる。この物質は体の細胞を傷つけ、癌など病気のリスクを上昇させる危険な物質で、酒を時には「毒」にもしてしまうのであるが、肝臓で(アルデヒド脱水素酵素)により(酢酸)に分解され、血液によって全身を巡り水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に含まれて外へ排出されると言う経過を辿る。

中国の研究者は祖先の⾻に残る遺伝⼦の情報から「アセトアルデヒド分解遺伝⼦」を読み解き、凡そ6000年以上前、この分解遺伝⼦の働きが弱い祖先が突如中国に出現した事を突き止めた。調査を進めると「酒に弱い遺伝⼦」の広がり⽅のパターンが、アジアでの「稲作」の広まり⽅とよく似ていることに気付いたのである。 稲作は中国の⻑江流域で始まり、先ず北東部へ、次に東南部へ、その後東アジア⼀帯へと広がった。この稲作の分布と、「酒に弱い遺伝⼦」の分布を重ね合わせると、ほぼ⼀致したのである。一致理由には幾つかの有⼒仮説があるが、その中で尤もらしいと考えられているのが以下のシナリオである。 舞台は、6000年以上前の中国。稲作に適した⽔辺に 多くの⼈が集まって暮らし始めていたが、当時は衛⽣環境も悪く、⾷べ物に病気を引き起こし生命に関わる様な悪性微⽣物などが付着することが多かったが、そんな時、意外にも⽶から造っていた「酒」が役⽴ったと考えられる。アセトアルデヒド分解遺伝⼦の働きが弱い祖先が酒を飲むと、体内には分解できない猛毒のアセトアルデヒドが増えていく。しかし、その毒が悪い微⽣物を攻撃する薬にもなった可能性があるというのである。こうして、「酒に弱い遺伝⼦を持つ⼈の⽅が、感染症に打ち勝って⽣き延びやすかった」 というのが、有⼒な仮説の⼀つで日本の学者もこの仮説を推奨している。 つまり稲作地帯の人達は、酒がもたらす毒まで利⽤し病原菌から身を守ろうと、「酒に弱くなる道を選んだ」可能性があると言うのである。 この「酒に弱い遺伝⼦」が、3000年ぐらい前に稲作⽂化と共に朝鮮半島経由⽇本列島に渡来し、酒に強い縄文人に交じり込んで、今では⽇本⼈のおよそ4割が 「酒に弱い遺伝⼦タイプ」になったと考えられる。中国人の52%、韓国人の30%、も同様である。 以上から日本人の酒豪はインドアーリア系か縄文人の血を引く人間だとの説に結び付く。

 

酔っ払い動物達に話を戻そう。世界には鳥からゾウまで、自然から得る天然のアルコールで、日常的に酔っぱらっている野生動物がいる。

大きな冠羽や黒いアイマスクのような模様など、印象的な羽毛で知られる北米の鳥であるヒメレンジャクは、数カ月にわたって果実だけを食べるという珍しい特徴を持っている。果実はエネルギー源として優れているが、熟しすぎた果物やベリーは目に見えない脅威となる。 天然の酵母が熟した果実を発酵させ、糖の分子をエタノールと二酸化炭素に変える。果実が腐り始めていなければ、食べても安全だが、ヒメレンジャクを(酔っ払い)にしてしまう。酒豪ではない彼等は、酔っぱらうと、反射神経が鈍くなり、判断力が低下し、補食されたり、車や電信柱、窓ガラスにぶつかって大怪我をすることもあると言う点では、渋谷に屯する人間達と何等異なるところが無い。動画等からの最近の研究では、半野生動物やペットを含む55種の鳥がアルコールを飲んでいることがわかった。動画の多くは、オウムやカラスなどのいわゆる「賢い」鳥が人の飲み物を口にするというものだったが、彼等が酔っぱらったどうかは定かではない。

ヘラジカはアルコール耐性が弱く、地上に落ちて発酵した大好物のリンゴを食べては酔っ払って木にぶつかるなんてことが屡々ニュースになり、カナダのローカル紙やテレビを賑わすことになる。

アフリカ象も同様でマルラの木の発酵した果実を食べて酔っぱらったという報告は、一般的な文献や科学的な文献にもあふれている。ヘラジカやアフリカ象はアルコールを代謝しにくい遺伝子を持っており、巨大な体でも発酵した果実で酔うことを示している。勿論、彼等は快楽を求めているわけではなく、ただ空腹なだけであると報告は述べている。只ヘラジカ、ゾウ以外の酔っ払い動物の中には空腹を満たす為だけではなく、快楽を求めてと言うケースも考えられるという。

アフリカ部族の中にはマルラの木の実を重要な食料源にして居る人達がいるが、象以外にもアフリカ草原の草食動物はこの木の実が大好物で、時には争奪戦が勃発する。 マルラの木は密生せず草原等で18メートルにも達する高木で,実を自由に食べることが出来るのはヒヒやキリンに限られる。そこで頼りになるのが象達、彼等は時に草食動物を集め、大宴会を催す。この木の下でヘベレケに酔っぱらい、酩酊状態の(象、サイ、キリン、ダチョウ、ヒヒ、イノシシ、鳥達)の様子が観察されて居り、(African Animals Getting Drunk Off Ripe Marula Fruit)という動画で視聴可能である。

最後に北米の草原に住む(プレーリーハタネズミ)の話。

彼等は1日にワイン15本分に相当する量を飲むことも出来る程の酒豪であるが、げっ歯類としては珍しい一夫一婦制で、大のアルコール好き。其の為、人間と比較する上で興味深い研究対象となる事が多い。オスのひとり飲みは浮気心を助長し、時に夫婦関係を悪化する。そこでプレーリーハタネズミの出番となった。学術誌「Frontiers in Psychiatry」に発表された論文によると、彼等がアルコール摂取後、オスはパートナーと寄り添ってくつろぐか、或いは見ず知らずの別のメスと時間を過ごすかという選択肢を与えた。 その結果、オスだけが酒を飲んだ場合、パートナーと過ごした時間が短いことがわかったが、別のメスと時間を過ごすかは目下実験中である。オスとメスがどちらも酒を飲んだ場合はどちらも飲んでいない場合と同様仲睦まじく過ごしたとの結果が出ている。しかし別の理由による夫婦関係の悪化がオスの一人飲みを誘発したのかと言う問題は残っている。プレーリーハタネズミについては興味深い話が尽きない。

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動物奇譚 (2) 酔っ払い動物達…1

2024年09月16日 | 文化・文明

動物奇譚

(2) 酔っ払い動物ー1

Drunken monkey hypothesis(酩酊猿仮説)と言うのがある。凡そ1200万年前、アフリカの木の上で果実等を主食にして暮らしていた我々の祖先に地球規模の気候変動が襲い、大地が急速に乾燥化した為、食べ物は落下した果実に頼らざるを得なくなった。落ちた果実は完熟し、糖分が⾃然発酵して、アルコー ル分を含む食料に変化してしまっていた飢えから逃れ、生きる為にはアルコールの分解遺伝子の無かった彼等は、酔っ払って木から落ちたり、肉食動物に襲われたりしながらも アルコール分のある完熟果実を食べ続けた。そんな中、或時⼀部の祖先の体内で遺伝⼦に突然変異が起き、アルコール分解遺伝⼦が偶然強⼒になって、発酵した果実を⾷べても酔っ払うことなく、栄養を得ることが出来るようになった。幸運にも「酒になった果実」を⾷べられるようになった祖先だけが⽣延び、数を増やして、「地球上最強の呑み助」となったのが私達⼈類だという説である。同じ類人猿の(ゴリラ・チンパンジー)も同様だが、類人猿でもオランウータンの系統は、不幸な事に遺伝子配列が変わる前に枝分かれしてしまっていたので、アルコール耐性が無く下戸の儘である。

所が最近、類人猿以外にとんでもない呑み助が居る事が判明した。マレーシアのジャングルで過去5500万年の間、毎夜ビアパーテイーを開催し、宴会の間決して酔っぱらう事が無いというネズミ程の小型哺乳類(ハネオツパイ)、自然発酵されたヤシの(ビール)を好む常習的な呑み助である。ブルタムというヤシの一種は、数種の酵母種の力を借りて自然発酵した花のミツを作り出す。アルコール度数は3.8%程度で一般的なビールとほぼ同じである。ブルタムは一年中花を咲かせるため、この熱帯雨林のジャングル・バーは何時でも開店していて、常連客のハネオツパイは、ここで毎夜2時間ほど過ごし、ちびちびとミツを飲み、(おつまみ・あて)の類はとらず、(花の蜜=ビール)が主食だと言う。彼等のアルコール摂取量は通常の哺乳類にとって危険レベルであることが判明しているが、人間よりも効率的にアルコールを代謝しているらしく、酔っぱらうことがない。進化により、アルコールを摂取し続けても体内に毒素がたまらないよう、分解機能が格段に発達した為ではないかとも言われている。「この生態学的関係は何千万年もの間続いてきた安定的なものだから、そこには酩酊状態など存在しないのだろう。このような小さな動物が酩酊状態になったら捕食者に襲われる危険が増すだけだ」と研究した学者が指摘している。

尤も、人間にも酒だけを主食にするという似たような人種がいる。アフリカ・エチオピア南部、標⾼約2000メートルの ⼭岳地帯に住む⺠族「デラシャ」。 彼らが飲んでいるのは「パルショータ」という伝統の「酒」である。 パルショータは、モロコシという穀物をすりつぶして、壺の中で発酵させて造られる。アルコールの度数はビール程度で彼等はこれを1⽇に5リットルも飲む。しかも、その他に⾷事は殆どとらず、この酒こそが彼等の「主⾷」、子供もアルコール度数を抑えたものを⾷事として飲んでいる。 殆ど酒しか⼝にしないのに、 皆んな逞しく、健康体、パルショータは栄養価の高い成分が含まれている事が分っている。

次にコウモリも酒に強い事が最近の研究で判明した。酒に酔っても木にぶつかったり、墜落したりせず、問題なく飛べるというのである。中南米に生息する熱帯性コウモリは、常食とする発酵した果物や果汁に含まれるアルコール分に酔っても、呂律が回ら無くなるような事は無く、生まれつき備わった“音波探知装置”を使って(しらふ)の時と同じように飛べるという。人間でいえば、法定血中アルコール濃度を超えても車の運転に支障がないようなものだ。コウモリに酒類の主成分で酒酔いを引き起こすエタノールを与え、唾液を採取して血中アルコール濃度を測定した結果、中には濃度が0.3%を上回ったものもいた。ちなみに、0.08%以上ならばアメリカの50州すべてで飲酒運転の罪に問われ水準との事。 さらに、コウモリの種類によって血中アルコール濃度が異なることもわかった。これはアルコール耐性に幅があることを示している。「奈良漬だけで酔ってしまう下戸もいれば、ボトルを2~3本飲み干しても酔った様子を見せない酒豪もいる」のと同じである。 また、人間と同様にコウモリのアルコール耐性はアルコール摂取の頻度と量に一部左右される可能性がある。 イスラエルで過去に行われた実験では、アルコールを摂取した(エジプトルーセットオオコウモリ)は南北アメリカ大陸のコウモリよりも障害物に衝突する回数が多かったという。南北アメリカ大陸のコウモリがオオコウモリ科のコウモリよりアルコールに強いのは、日頃から発酵した食物をより多く摂取している事に由来するらしい。

殆どの動物はアルコール耐性が無い。其れにも拘わらず天然のアルコールで、日常的に酔っぱらっている野生動物達が多数居る。

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動物奇譚   蚊について……2

2024年09月06日 | 文化・文明

動物奇譚 蚊について……2

世界で最も多くの人命を奪い“人類最大の敵”とまで言われる「蚊」。マラリアやデング熱、ジカ熱、日本脳炎、西ナイル熱、黄熱、原虫疾患であるマラリアなどなど、聞くだけでも恐ろしい感染症が主として蚊によって伝染し、其の死者が世界で年間72万人以上にも上ると言われている。

そんな中、世界では驚くような“蚊対策”が始まっている。ブラジルではデング熱の患者が増え続け、2024年だけで100万人を超えるブラジル人が罹患、しかもこのウイルスの4つの型すべてが同時流行し、4つの型の免疫を持っている人は殆どいない為、病院が対応しきれず対策に忙殺されている。 対策のひとつは、或る細菌を蚊に感染させることにより、蚊の免疫反応を高め、デング熱や他のウイルスの体内での増殖を抑えるというもの。この細菌に感染させた蚊を昆虫飼育場で繁殖させ、各地域に放出する。この蚊は野生の蚊と交尾するが、野生のメスが産む卵は孵化しなくなる。他にも、英国の企業が遺伝子組み換えした蚊の卵を提供している。孵化する蚊はすべてオスで、刺さないし、交尾してもメスの子孫は生き残れず、個体数が減少するというものである。一方日本の武田薬品は蚊を撲滅するのではなく、人間に高い免疫力を高め発症を食い止める新しい日本製ワクチンの提供を始めている。

他方、日本の花王は、蚊の足を詳細に研究した結果、化粧品やシャンプーなど様々な日用品で使われている液体「低粘度シリコーンオイル」を皮膚に塗ることで蚊が皮膚に止まれなくなるのを突き止めた。実際に、このオイルを使って実験すると、表面に接触した蚊はわずか0.04秒で吸血の体勢をとれないまま飛び去ることが分かり、試行錯誤の結果たどり着いたオリジナルのオイルは、すでにタイで商品化され、人々を蚊から守っている。

人間には嫌われ者の蚊も他の生物にとっては大変な御馳走でもある。蜘蛛や蟻、蛙、トカゲ,コウモリ等にとっては食卓を賑わし食生活を豊かにする無くてはならぬ副菜でもある。実際中米の一部で両生類の病気が発生したときに、マラリア患者が急増したことが突き止められた。又他の研究では、1時間に1000匹もの蚊を食べるコウモリもいることが明らかにされている。蚊だけを捕食して生きている蚊もいる。日本にも生息するオオカ、その幼虫は、木の窪みのような水の溜まった場所に生息し、他種の小さな蚊の幼虫を食べまくり、人間や動物には興味を示さない有難い存在である。

生態系学者から見れば違った世界が見えて来る。蚊は多くの生物の餌になり、更に蚊が血を吸うことで、その個体にストレスを与えたり、感染症を媒介したりして、ある特定の種が増え過ぎないように動物の数をコントロールする役割も果たしていて、生態系のバランスをとるという意味では、非常に重要な存在である。昆虫を駆除してしまうとそのバランスを崩し、周り廻って自らに跳ね返ってくる恐れがある事に留意して行動することが必要と言われている。

厄介者だからこそ、蚊は色んな角度から生態等の研究が行われ、其の成果として暮らしに役立つ技術に応用しようという試みも進んでいる。蚊の針をヒントに関西大学・ロボット・マイクロシステム研究室が進める「痛くない注射針の開発」である。蚊の針の細さは、一般的な採血用の針の10分の1、わずか0.05 mm程、その針を回転させながら皮膚を刺す事によって、刺した直後は何も感じないという仕組みを解明できたので、医療現場で活用しようというものである。

更に千葉大学で蚊の驚くべき飛行技術をドローンに応用しようという研究も進められている。蚊が暗闇でも壁とか床にぶつからないように飛べるのは羽で起こした空気の振動を自らのセンサーでキャッチして障害物を把握している事を解明した。この研究を応用したドローンの開発は、海外ですでに始まっていて蚊の気流感知システムを組み込んだドローンは、自ら起こした気流を感知し、気流が乱れると赤く光って障害物を認知、回避することが出来るというものである。尚蚊の羽ばたきは1秒間に600〜800回と、同程度のサイズの昆虫と比較しても、非常に高速で、その反射を感知するセンサーの感度は驚くべきものであると言われている。恐るべし蚊の先端技術!!。

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動物奇譚 (1) 蚊について

2024年09月04日 | 文化・文明

動物奇譚

(1) 蚊について

8月18日「天声人語」に(蚊)にまつわる記事が載った。漱石の弟子物理学者の寺田寅彦がエッセーの中で、「蚊帳の中は暑苦しい、しかし蚊に責められるのはそれ以上に嫌いだから仕方なしに毎晩いやな蚊帳にもぐり込んで我慢して居る」 と不満を漏らしている。しかし何時の頃からか、クーラーの普及と生活様式の変化で蚊帳が姿を消し、蚊に悩まされる事がとんと減った。しかし防御の無い屋外の動物はどうしているのだろう。蚊や虻(あぶ)、蚋(ぶゆ)などの虫よけに、尻尾という道具を備えてはいても、それだけであの猛攻は防ぎきれないだろう。

所が、山形県の置賜(おきたま)総合支庁が先ごろ、愉快な実験結果を発表した。放牧している黒い和牛をシマウマのような柄に塗ったところ、尻尾や頭を振って虫を追い払うしぐさが激減したそうだ。愛知県の技術開発を参考に「半信半疑でやってみたら、本当に虫が来なくて」、生産者も驚いたという。愛知県のホームページを調べたところ、「黒毛和牛をゼブラ模様に塗った「シマウシ」は吸血昆虫の飛来が減少、吸血昆虫対策技術の開発」と言う誇らしげな技術開発報告が掲載されている。曰く、「アブやサシバエなどの吸血昆虫は、ウシにストレスを与えるとともに、牛白血病などの病気を媒介するので、通常は薬剤で吸血昆虫を殺虫するが、今回薬剤に代わる新たな吸血昆虫対策技術を検証し、本成果は、米国の科学誌PLOS ONEに2019年10月4日に掲載された。」

(シマ牛の写真)

この記事を読んで真っ先に頭に浮かんだのは、尻尾を振らなくなった牛の「オックス・テールの美味しさは大丈夫か?」と言う点だった。尻尾は牛肉の中で1番動かす部位で、旨味がギュッと凝縮され、 こってりとした味わいと、しっかりとした肉質で、食べごたえ満点。特に和牛のテールは通常の牛テールよりも旨味と甘味、コクが凝縮されていると言われている。そう言えば、イギリスやアメリカの「オックステールスープ」や焼肉店などにある(テールスープ)を思い浮かべる事が多いが、しかし諸外国、特にイタリアではスープ以外の料理として食べられる事も多い。例えばローマ名物の「コーダ・アッラ・ヴァッチナーラCoda alla vaccinara」と言う名の下町庶民の家庭の煮込み料理がローマの伝統料理に昇格し今日に至っている。イタリアでは経験出来なかったが、ブラジルでイタリー人移民の手でハバーダ(Rabada)と言う有名料理として根付くことになり、サンパウロ出張時にその美味を経験する事が出来た。日本のCookpad レシピでも紹介されている。

(シマウシ)に話を戻すと、縞馬のシマの機能が明らかになったという研究論文が基になって実験が始まったと考えられる。論文は何故(シマウマ)は(シマシマ)なのか? 従来言われて来た4つの仮説に対して反論する事から出発した。

仮説1. 後ろの風景に縞模様が溶け込み、捕食者に見つかりにくい(最も有力だった仮説)。反論…他の縞をもった偶蹄類は、森林に住んでいるが、シマウマを含む馬の仲間は、開けた草原にいることが多く、縞によって紛れられるような環境にいることは少ない。

仮説2. 体温を下げるのに役立つ。縞の白と黒の部分で温度差ができ、空気が流れることで体温が下がるという仮説。 反論…同様の気温や日射のある場所に、シマウマも縞のないウマの仲間もおり、特別にシマウマが暑さに耐性があるとは考えにくい。

仮説3. 捕食者が獲物のサイズや逃げるスピードを間違える。これは、シマウマの縞模様のおかげで、捕食者がシマウマが走っている速さやシマウマのサイズを見誤り、シマウマを捕らえるのを失敗しやすくなるという説。 反論…シマウマの主たる捕食者はライオンだが、ライオンは縞馬狩りには群で行い、成功率も高いので余り役立っていないことが推察される。

仮説4. 群れの中で個々を見分けるのに使っている。反論…縞のないウマの仲間も、シマウマと同様の群れを形成しており、ウマが視覚、聴覚、嗅覚を使って、他個体を認識していると仮定するなら、縞が他個体を識別するのに差ほど重要とは考えにくい。

そんな中、新たに有力な説が唱えられた。縞が吸血性のハエの仲間に血を吸われないようにするのに役立っているのではないかという説です。吸血性のハエが、シマシマ模様の上にとまることが少ないという結果は、複数の論文で報告されていて、その理由は(体の輪郭がわかりにくくなる)、(背景とのコントラストが小さくなる)等により縞模様に近づかないという可能性が挙げられているのである。

蚊に戻ろう!。蚊は海外を含めると凡そ3500種類、日本には100種類ぐらいで、夜に刺すアカイエカ、昼に刺すヒトスジシマカ、北海道や東北で多いヤマトヤブカ、ビルの地下などにいるチカイエカ、汚い水たまりで発生するオオクロヤブカが有名。温度、二酸化炭素、水分という3つの要素に惹かれて近づくので、体温の高い人、活発な人、汗かきな人が刺され易い。但し汗をかきすぎると体温が下がるのであまり刺されないらしい。その他、水々しい肌の人、色黒な人、体脂肪の高い人が好かれ、血液型はO、B、AB、Aの順に刺されやすいという実験結果がある。酒を飲むと体温が上がり、二酸化炭素放出が増え、注意力散漫になるので格好の餌食となる。

しかし蚊の主食は花の蜜や樹液で、糖分さえあれば生きていける。事実、蚊に砂糖水をガバガバ飲ませて「蚊にウイルスに対抗する免疫力」を強化させ、感染症の媒介を防ごうとの研究も行われている。蚊が血液を吸う時、「プハ―、美味い、切れがあって,コクもある」なんて言っている訳ではない。 交尾したメスの蚊が卵を育てるために、良質なタンパク源である血を栄養リッチなサプリメントとして吸血している、謂わば次世代の為の生存戦略なのである。尻尾に叩き潰されたり、動物の背中で待ち受ける鳥達に食べられる危険を冒してでも必死で血を求める、血を充分吸えたかどうかで産卵数に大きな差が出るからである。吸血すると200個前後産卵するが、しないと4~50個に止まると言われている。オスや処女の蚊は血を吸わないのは勿論のことである。

動物奇譚 (1) 蚊について……2

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自民党総裁選

2024年08月23日 | 政治・経済

自民党総裁選

8月14日岸田首相は「自民党が変わることを国民の前にしっかりと示すことが必要だ。変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ。来たる総裁選挙には出馬しない。」 と述べて総裁選不出馬宣言を行った。 自民党最大の問題である統一教会問題や裏金問題を放置した儘、総理が退陣する事がどうして「自民党が変わる」事に繋がるのか、問題を放置して敵前逃亡するのは安倍と同じで、当に自民党旧来の姿そのものである。一体次期総裁がこの問題の解決を含めどのように自民党改革、政治改革を図ろうとするのか、そのような骨のある人材がいるのか極めて興味深い。

その様な中、最初に出馬表明を行ったのが小林鷹之氏(49才)(衆院4・二階派)前経済安全保障相である。東大、財務省・理財局(森友・佐川局長)のエリートコースを経て国会議員、お決まりのコースを歩んで来た人物だが、往々にしてこの様な人物に有り勝ちな(出世欲・上昇志向)が強すぎて、自己の目的達成の為には何でも利用して恥じるところが無いという点が目に付きすぎて、強い違和感、居心地の悪さを感じる。利用できる物は悪魔でさえという手法は安倍の得意とするところだったが、安倍の場合は人間が単純なだけ、簡単に見破れたが、小林の場合は複雑系で何とも薄気味悪い。

先ず8月15日終戦記念日に、日本武道館の全国戦没者追悼式ではなく、靖国神社参拝に訪れた。神道政治連盟や日本会議の意向を踏まえた保守派の票を期待したもので、太平洋戦争や戦争責任など考慮の外、諸外国の反対論など全く無視した行動である。統一教会のパーテイーでの挨拶や祝電等による関係もあり、宗教利用はこちらも安倍と同じである。

又、知名度不足の解消と「若さ」アピールの為、趣味のランニング姿を報道陣にわざわざ公開し、更に突然の横田めぐみさんが拉致された被害現場を視察。何故総裁選が始まったこの時期の視察なのか。藁をも掴みたい思いの拉致家族迄利用する、やっていることは古い自民党の政治家そのものである。

政策目標の第一に「自民党が生まれ変わる」を掲げたが、最大の問題である裏金問題、統一教会問題の解明や解決策が何も示されていない。それどころか推薦人の半数を占める安倍派議員に配慮し、「処分を受けた方も一人一人は優秀だ。挙党一致で取り組まないと国難を乗り越えるのは難しい。」役職を外されたことについても「やりすぎてしまうと現場が回らなくなってしまう。」 処遇を改善すべきだと、自民党改革の肝になる部分を否定する始末、改革など頭の片隅にも無い事をうかがわせる。

派閥解消が謳い文句だが派閥の典型と言われる二階派に長年席を置き、しかも総裁選出馬に当たっては二階に挨拶に行くなど底が割れている。派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を巡る岸田、二階の責任に関し、「総裁選に不出馬」「次期衆院選に不出馬」との決断をもって、政治的な責任を果たされたと受け止めていると「事なかれ主義」「長いものには巻かれろ」の自民党的発言に終始している。

政治資金パーテイーによる資金集めも活発で、閣外に去った後9月、11月、12月とハイペースでパーティーを開催、この1年計6回のパーティーで総額4407万2500円を搔き集め、金のかからない選挙など何処吹く風の感じが伺える。改革派は世を欺く仮の姿、真逆の人間という印象が強い。兎に角若さを売り物にしたいらしいが、若さで自民党の悪弊に切り込むという姿勢皆無、寧ろ自民党的色彩濃厚な人物そのものの印象である。

それでは、世間はどの議員に「次の自民党総裁になってほしい」と思っているのだろうか? 雑誌・女性自身が20代~70代の男女500人を対象にアンケートを行った。 まず第3位に選ばれたのは小泉進次郎議員(43)である。父親は87~89代総理の小泉純一郎氏、4世代に亙る世襲政治家である。神奈川11区に強力地盤を持ち、当選回数は5回、第27・28代環境大臣を務めた経験もある。政治家の平均年齢の高さが問題視されるなか、 “若さ”に期待する人が多く、《若い議員に今までにない新しい視点で政治を行ってほしい》《若い感性で政治をして欲しい》との声が寄せられた。 また、《誠実そうだから》《一番誠実感があり行動が伴いそうだから》《自民党の悪しきところを、改善できそうな人だから》と人柄に注目する声が。父・純一郎氏の支持者からは《今の派閥政治では国民生活は良くならない。政治をぶっこわす父・純一郎氏の息子に期待したいです》という声も寄せられた。しかし過去のㇲキャンダラスな行動からこの人物が「誠実」とはどこを見て言っているのだろうか、トランプ信奉者を馬鹿には出来ないという思いが強い。実行力が有りそうというのも目立つが、発信力と実行力は別物。親父を真ねて発信に切れ味はあるが、2期の環境大臣でも大きな業績は無いどころか、石炭火力発電からの脱却遅延を突かれ、COP25 で国際環境NGOから「化石賞」を充てられている。裏金問題等自民党改革についても目立った発言が無く期待薄である。

続いて、第2位に選ばれたのは高市早苗経済安全保障担当相(63)だ。何故この人物が2位なのか、女性総理に対する期待感と推測されるが、器で無い者に大きな物を求めても所詮無理な話、突出した右寄り発言や靖国参拝を欠かさぬ事で、安倍や日本会議の応援を得て今の地位を得ているだけの人物。安倍の後継者の声が強いが、日本は一日も早く安倍の影から脱却する事が求められており、総理候補など論外である。

そして、第1位に選ばれたのは石破茂議員(67)、当選回数12回、防衛大臣や農林水産大臣、幹事長といった重職を務めてきた。’21年の第49回衆議院議員総選挙では、全国最多の得票率・84.1%を獲得したこともある。世間からの人気は高いようで、人柄について《誠実かつまじめ》《声を荒げることなく温厚なイメージで、かといって頼りない感じがしないから一度やってみてほしい》と評価する声が。また石破議員は自民党幹事長時代の’13年5月、当時自由民主党政調会長だった高市大臣が「村山談話に違和感を覚える」と発言したことについて「誤解を招く発言は厳に慎んでもらいたい」と苦言、靖国参拝にも否定的な事もあって保守派の反感が強い。麻生内閣退陣を直言し、また安倍内閣を批判し続けた為、孤立感を深めている。党内の人間への批判も辞さない姿勢から、《どの派閥にも影響を受けない。野党連合と共闘してもよい》《あれだけ自民党を批判しているから改革を実行してくれるのではと思う》《自民党を根本から変えてくれそうだから》と期待を寄せる声も上がっている。さらに《党内では人気はないが、国民には人気があるので国民の意見を聞いてくれそう》《党内の支持や評価は低いと聞いているが、普段のコメントも好意的に受け止められ、国民全体の支持も高く、総理になってもらいたい政治家と思うから》《国民にとって一番まともな発言をしているから》との声が上がり、国民に寄り添った視点を持っていることが支持されている。次期総理としては石破氏か林・現官房長官に期待したい。

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