薩摩おごじょ

薩摩狂句勉強中です。

10月投稿(地)

2012-11-07 21:33:27 | 日記
(地)
久(さ)しか振(ぶ)い 外(そ)て連(つ)れ出たや
 大(ふ)て欠伸(あくっ)    

扇香(10月23日投稿分)(あぐっちぇた草履「ぞい」)
 
(寸評)
これは笑える作品です。写真を見ないとちょっと分かり難いところはありますが、写真と句が一体になると思わず吹き出してしまいそうです。
大きく「口を開いた(あぐっちぇた)」この草履を写真に撮り、それを句の素材にしようという「狂句魂?」に頭が下がります。
常に脳が狂句モードになっておられるのか、ある場面を見たときに瞬間的にモードが切り替わるのか?いずれにしても並大抵の「脳力」ではないと感じました。

表現も擬人法を使って大変効果的で、句の面白さを引き立てていると思います。まさにフォト狂句ならではの楽しさを味わわせてくれる作品でした。
扇香さんの「センス」に乾杯!!

〇今月は投句が少なかったせいもあり、人は該当無しとしました。ご了解下さい。

※今月の「蛇の足」

今回も岡目八目で、私が気付いたことを、順不同で書いてみます。

〇課題吟から
1.破調を避けるための無理な省略・短縮は避けたほうが良いと思います。
例えば「応援」は鹿児島方言でも「おうえん」であって「おえん」とは普通言わないようです。辞典にも載っていませんでした。
鹿児島方言では「う」という音がしばしば省略されることはご存知の通りです。代表的な例として「しょうちゅう」は「しょちゅ」「しょつ」「そつといずれも「う」音が二つとも省略されています。しかし、このルールが全ての言葉に当てはまるわけではありません。
例えば「校長(こうちょう)」を「こちょ」とはいいません。「こうちょ」と最後の「う」だけが省略されます。
したがって、個々の言葉ごとに判断し、普通一般に広く使われている言い方にする必要があるのではないでしょうか。

2.下五の終わり方についての考え方は上記の通りです。一つだけ例を挙げますと、「メダや無(な)か」は「メダや無(の)し」と断定的な言い方のほうが句に締りが出てくるという考え方です。

3.「腹(はら)くいぎ」・・・これだけではすぐには理解し難いと感じられる方もおられるのでは?私も一読では句の意味が読み取れませんでした。
読み返して二つのことに気付きました。先ず「腹(はら)く」は「はらかく」つまり「腹を立てる」、つぎの「いぎ」は南薩地方独得の「濁音化」で「いき(瞬間の意)」はないかと。二つをあわせると、「腹を立てたらすぐ」ではないか。
そうすると句全体の意味がスッキリしてきます。
「怒(はら)けたいき」という意味になるようです。このままだと、破調になりますので別の表現を考えなければなりませんが・・・。
「~いぎ」などの濁音、鼻濁音は今では自然消滅しつつあります。貴重な財産として後世にも残しておきたい言葉の一つだと思います。

4.「つっごろうし」という言い方も現在では珍しくなったようです。「闘牛」「突き癖のある気の荒い牛」「獰猛な雄牛」と辞典にもあります。
牛や馬が身近にいた時代が懐かしく思い出されます。

5.送り仮名に気をつけましょう。「口(くっ)開(あ)けっ」→「口(く)つ開(あ)けっ」、「飯(めす)」→「飯(め)す」

6.漢字の当て方は難しいのですが、「原則として発音と漢字を出来るだけ一致させる」と考えれば良いのではないかと思っています。
薩摩狂句は口語体(話しことば)で表現するものですから、殊更難しい漢字を使うことは避けた方が良いでしょう。

「くどい」は鹿児島方言では「くで」となりますから、「諄(く)で」でよいと思います。                  
〇自由吟から

1.「山学校」という言葉も今や死語になってしまったようです。おおらかな時代を思い出させる言葉のひとつです。

2.「渋(しび)」→「渋(し)び」

3.病気(こわい)、自慢(まんた)。
どっちもはじめて見る(聞く)言葉でした。ちゃんと辞典にも載っていました。貴重な資料として残していきたいものです。

以上でした。今月も最後までお付き合いくださいまして有難うございました。
                     文責 黒柱