彼は走る。
彼女も彼を追って走る。
熱帯雨林の中を、なにかに憑かれたかのように。
その先にあるのは落とし穴。
どのくらい深いのかは分からない。
彼女の目の前で彼が落とし穴に吸い込まれていく。
彼女も躊躇することなく落とし穴へと。
すとん。
体が急降下する衝撃を感じ、そこで彼女は目が覚める。
今日も見た、あの夢を。ここ数か月、同じ夢を何度も見ている。
いや、正確に言えば、同じようだけど毎回どこか微妙に違う夢だ。
でも、場面はいつも熱帯雨林で、登場人物も彼女自身と見知らぬ男性の2人だけ。
そこは変わらない。
熱帯雨林は東南アジアのどこかだろう。マレーシアかタイか。
彼女が追いかける彼は、誰だろう。分からない。
いつも彼の背中しか見えないのだから、顔は確かめるすべがない。
でも、実際の知り合いではないような気がする。
夢のことに気を取られているうちに、危うくいつもの通勤電車に乗り遅れるところだった。
目が覚める瞬間のあの衝撃。本当に体が奈落の底に落ちていくような、なんともいえない感覚。
夢の続きが見たい。落とし穴に入った彼と彼女がどうなるのか。
そう思うといてもたってもいられなくなって、衝動的に5日間の有給休暇を申請した。
前後の土日を合わせて9日間。
ボルネオ島へ行こう。あそこならきっと夢に出てきた落とし穴が見つかりそうな気がするから。
夢と同じように熱帯雨林を走って、自分の運命を確かめてみたい。
もしかしたら、かの地で「彼」がわたしを待っているかもしれない。
そう想像しただけで、彼女の体は火照る。
その日の夜、再び熱帯雨林の夢を見た。
その夢は今までになく臨場感にあふれ、彼女の五感を強く刺激した。
いつものように落とし穴に落ちたとたん、ものすごい衝撃を体に感じた。
しかし、目が覚めたはずの彼女がいるのは自宅の寝室ではなく、
漆黒の闇の中であった。
なんなんだろう、あれは(^◇^;)
文中にボルネオ島が出てきて嬉しくなりました。
クチンやコタキナバルしか行ったことないけど。穏やかでゆったりできる風景を思いだします。
臨場感溢れる夢…
目が覚めると漆黒の闇…
想像力の乏しい私には続きが浮かびません。
うーん。
”夢と現実の狭間がなくなり、
彼女は夢の世界へと誘われてしまった…
そして夢の中を彷徨うことになり、
現実の世界へ戻りたいような、戻りたくないような、
そんな心の葛藤を経て、
最後は現実世界の素晴らしさに気がつき
再び目を覚ます…"
というのは、どうでしょう?(^。^)
こんにちは。わたしは若くなくなってからも時々見ます 笑。
落下する感覚があまりにもリアルでびっくりしますよね。
深層心理の表れだとしたら、何でしょうね~。
ボルネオ島、未踏の地ですが憧れがあります。
keikoさんの旅行記、とても面白かったです!
再訪の機会があればまたお話聞かせてくださいね。
コメントありがとうございました♪
こんにちは。
続編、いいですね~。
夢と現実の狭間というのは、わたしが大好きなテーマです。
それが、夢から現実へ、現実から夢へと、移動するうちに
現実の良さを再発見する。
昨日話題になった映画の原題、from lost to foundを
思い出しました。
この「彼女」も自分自身を取り戻す旅に出たのかしら?
わくわくしますね~。
コメントありがとうございました♪