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のほほん書斎(日高茂和)

缶詰にまつわるノスタルジー

缶詰には、思い出のような郷愁のような感情を持ち続けている。

果物の缶詰には、憧れのような思いが心の隅にくすぶっていて、その味とともに甘美な記憶がよみがえる。

幼いころには、果物の缶詰の定位置は仏壇だった。左右対称に積み重ねられ、薄暗い神秘の空間に荘厳され、鎮座ましまし、ハナタレ小僧を睥睨していたものだ。

時おり、ばあ様が開けて食べさせてくれたが、嬉しかったのなんの、欣喜雀躍・狂喜乱舞・喜悦法悦・満面微笑の喜びを持って食べたおぼえがある。

今でも忘れられないのが「洋梨」の缶詰。
おそらくいただきものだったのだろう。
福江の町では売っているところもなかったであろうそのエキゾチックでロマンチックなアイテムを、緊張して震えながら食べたものだが今でもその味を思い出せるのだから、よほど嬉しかったのだろう。

缶詰には親父の思いでもある。

親父は刺身を肴に晩酌するのが日常だったが、シケなどで刺身が手に入らない時だったのだろう、近所の食品の店に缶詰を買いにお使いに出された。
ご指定は「オイルサーディン」か「いわしのトマト漬け」。

親父は、長男特別待遇で私に分けて食べさせるのだが、子供のころはケチャップが嫌いな変なガキだったから、いわしのトマト漬けを買いにやらされた日の夕食は恐怖の食膳だった。

・・・

洋梨の缶詰は、なかなか地元食品スーパーでは売っていないが、ネットショップで取り寄せられることは調べてある。しかし、一缶1000円近くするのでまだ手を出せないでいる。
「オイルサーディン」や「いわしのトマト漬け」は近所のスーパーで売ってはいるが、それぞれ小さい缶なのに500円ぐらいするので、まだ手が出せずにいる。

この3つを、今年のお盆には仏壇にお供えして、盆過ぎにお下がりをいただくのも一興だ。
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