『盛り』は短い・・・

“おっ，あっちからも来たぞ，一旦停止しないとなぁ”

信号の無い，どちらが優先でも無い十字路に差し掛かった時です。
左側から，直進してくる軽四を見つけます。
運転しているのは，「今どき」女子の様です。
お互い直進すれば，どちらかの車がどちらかの車の横腹にぶつかります。
止まって待つ事にします。

“あれ、譲ってやったのに・・・”

そのまま「行く筈」と思った，「今どき」女子も止まります。
ウインドウ越しに，お互い顔を見合わせます。
女子の目が，「どうぞ」と言っている様に見えます。

“もう！！”
私が発進したと同時，女子の車も動きます。

“おっ，ストップ”　
『わっ，ストップ』
私の車が止まれば，女子の車も止まります。

又，顔を見合わせます。
今度こそ，女子の目は「どうぞ」のはずだったんですが・・・

“おっ，ストップ”　
『わっ，ストップ』

“もう！！　どうぞと目が言ってたじゃないか！！”　
『もう！！　どうぞと目が言ってたじゃありません』

こちらもムットしますが，女子の目もムットして見えます。


“なんだそりゃ，頭ぐらい下げろ”
仕方有りません。
手で合図して，先に女子を行かせてやることにしたんですが・・・
『プップ』
女子は，２度クラクションを鳴らして，真っ直ぐ前を向いて，頭も下げずに・・・


“おっ，紅葉真っ盛りだ”


途中立ち寄った「道の駅」で，真っ赤に染まっているモミジを見つけます。
モミジは葉を落とした広葉樹と緑の松に囲まれ，一段と艶やかです。
駐車場で，車から降りた３人の「女子」が，モミジを観て言っています。

『まぁ，綺麗』

“さっきの「今どき」女子と君たちも，
　　　　モミジも，同じだぞぅー　　何でも『盛り』は短いんだぞぅ”