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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 33

2022年08月05日 | 霊感少女 さとみ 2 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪
 さとみを包む青白い光が徐々に薄れて行く。薄れて行く中に、さとみが立っている姿が見えてくる。
「さとみちゃん!」
 百合恵が駈け寄ろうとした時、さとみの手が動いた。百合恵に止まるようにと言うように手の平を向ける。百合恵は思わず立ち止まる。
 青白い光が消えた。さとみは立っていた。
「さゆり……」さとみが言う。「あなたの負けよ」
「そんな、馬鹿な!」
 さゆりは吐き捨てるように言うと、もう一度両手の平をさとみに向けた。
「無駄よ!」さとみは言う。「効かないわ!」
「うるせぇ!」
 さゆりは怒鳴ると、衝撃波を打ち出した。青白い光が再びさとみを包む。しかし、さとみはその光から抜け出し、光の横に立った。驚いたさゆりは衝撃波を止めた。さとみはさゆりを見て、にやりと笑った。
「何で効かないんだよう!」さゆりが地団太を踏む。「くそう!」
「何度やっても無駄よ!」さとみが言う。「とは言うけど、何故効かないのか、わたしにも分からないのよねぇ……」
「自分の事だろうが!」
「そんなに怒ったって、分からないものは分からないんだから、仕方ないじゃない! 怒んないでよう!」
「怒るなって言って怒ってんじゃないのよう!」
「そう言って怒ってんのは、さゆりじゃない!」
 二人は睨み合う。
「さとみちゃん」百合恵が言う。「ひょっとして、あれじゃない? 片岡さんから借りたとかって言うペンダント」
「ああ、そうだわ!」さとみの顔がぱっと明るくなる。「そのお蔭ですね! 百合恵さんに着けてもらって大正解でした!」
 百合恵と家を出る時、母親が忘れ物と言って持って来たのが、片岡からのペンダントだった。細い金の鎖に白い大きな勾玉(まがたま)が付いていた。片岡から「さとみさん、これを身に着けていて下さい。完璧と言う訳ではありませんが、ある程度は守りとなるでしょう」と言われていた。学校へ来る前に、百合恵に着けてもらった(さとみはこういう装飾品を身に着けた事が無かったので、恐ろしいほど不器用だったのだ)。
 そのペンダントが、さゆりの衝撃波を無力にしていたのだ。
 さとみはごそごそと襟元に手を突っ込んで、ペンダントを取り出した。白い勾玉が夜目にも分かるくらい金色に輝いていた。
「くっ……」さゆりは忌々しそうな表情をし、松原先生が介抱してる片岡の方を見た。「あのじじいめぇ……」
「そんな言い方は失礼だわ!」さとみが口を尖らせる。「それで、どうするの? あなたが何をやっても、わたしを倒せそうにないんだけど? となると、約束通りにしてもらおうかしら?」
「約束ぅ?」
「そうよ」さとみは真顔になる。「あの世に逝くのよ」
「ふざけんじゃないわ! 絶対にイヤ!」
「やっぱり嘘つきなんだ……」
「こんなに力を持っているんだ。はい、そうですか、って、簡単に捨てられるわけないじゃないの!」
「元々持っていなかったんだから、捨てたって良いんじゃないの?」
「せっかく持ったんだから、放すもんか!」
「それは我がままだわ!」
「何と言われたって、放すもんか!」さゆりは言うと、何かを思いついたように、にやりと笑った。「……そうか、あんたがダメでも、他の連中には効くんだよねぇ……」
「どう言う事?」
「ははは、分かんないのかい? お前のお仲間にぶち当ててやるんだよ!」
 さゆりは両手の平を、みつたち、「百合恵会」のメンバーたちにと向けた。
「……さあて、誰から喰らわせてやろうか? わたしは今、とっても腹を立てているからねぇ…… 怪我だけじゃ済まないだろうさ!」
「そんな事はやめてよう!」さとみが言う。「もう充分でしょう?」
「足りない! 全然足りない!」
 さゆりは言うと朱音としのぶに両手の平を向けた。
「朱音ちゃん! しのぶちゃん! 逃げて!」
 さとみは叫ぶ。しかし、二人は恐怖で竦んでしまって動けない。いや、それだけでは無い、さゆりが何かの呪をかけていて、動けないのかもしれない。アイが堪らずに駈け出そうとしたが、麗子がアイの腕をつかんで離さない。麗子はぶるぶると震えている。
 さとみ朱音、しのぶの前に立った。そして、両手を左右に大きく拡げ、とうせんぼのような格好をした。
「あら、何の真似?」さゆりが、両手をぶらぶらと振りながら笑う。「わたしの打ち出すヤツってさ、曲がって当てる事も出来るんだよね。……だから、そんな事したって無駄なのよ! あはははは!」
 さゆりは笑うと、わざと別方向に衝撃波を放った。衝撃波は弧を描いて、朱音としのぶへと向いた。二人は悲鳴を上げているが、からだは動かない。
 と、楓が二人の前に現われた。素早く移動をしたのだ。衝撃波は楓を直撃した。青白い光が楓を包み込んだ。
 朱音としのぶは、自分たちの前で炸裂する衝撃波を驚いた顔で見ていた。二人には楓は見えないからだ。
「楓!」さとみは叫ぶ。「あああ、何て事!」


つづく

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