「あなた、何をやっているのよう!」
ジェシルは身を捩って縛めを外そうとする。しかし、びくともしない。
「何をしているのか、分からないの? ふふふ……」背後に立ち、ジェシルの腕を捩じ上げているミュウミュウは、小馬鹿にしたように笑う。「あなたを動けないようにしているのよ」
今までとは全く違うミュウミュウの口調と態度に、ジェシルは戸惑っていた。
「どうしたって言うのよ?」ジェシルは声を荒げる。「放しなさいよ!」
「はい、そうですかって、言うわけ無いじゃない!」
ジェシルは頭を勢い良く反らせた。、ジェシルの後頭部がミュウミュウの顔面を直撃した。しかし、それより一瞬早く、ミュウミュウがジェシルに背中を蹴り飛ばした。ジェシルはたたらを踏みながらも立ち止まると、ミュウミュウに振り返りながら腰の熱線銃に手を伸ばした。
「あら?」
ジェシルは、はっとして腰を見る。ホルスターが空だった。
「これでも探しているの?」ミュウミュウが言う。その手に、ジェシルの熱線銃があった。銃口はジェシルに向いている。蹴り飛ばした際に奪ったのだ。「あなたも意外と抜けているわねぇ……」
そう言うとミュウミュウは目を細めて笑った。ジェシルが見せる残忍な笑み以上に残忍さが漂う。ジェシルは悔しそうに下唇を噛んだ。
「ミュウミュウ、あなたって……」
「そうよ。わたしとオーランド・ゼムはグルなのよ」
ミュウミュウは言いながらオーランド・ゼムの隣に立ち、その肩に寄り添う。
「そう言う事なのだよ、ジェシル」オーランド・ゼムは言うと、光線銃の銃口をジェシルに向ける。「でも、グルと言う言い方は頂けないね、ミュウミュウ……」
「そうね、あなた……」ミュウミュウはオーランド・ゼムを見る。その眼差しは優しい。「グルなんて言い方、下品だわね」
「あなたたち……」ジェシルは二人を睨む。「最初から……」
「最初から…… と言うかね、話を持ちかけてきたのはミュウミュウの方だよ」オーランド・ゼムはミュウミュウを見る。「最初はリタを何とかしてほしいって話だった」
「わたしは、リタ様…… ああっ、もうこの呼び方は面倒くさいわねぇ」ミュウミュウはうんざりしたように苦笑する。「あのばあさんの世話係になったのはラッキーだったと思うわ。って言うか、わたしって、大人しくしていれば、そこそこ忠実な召使って感じに見えるじゃない? それを駆使して、ばあさんを騙したって言うのが真実ね」
ミュウミュウは笑う。ジェシルは無表情でミュウミュウを見つめている。
「『ラーントリア』のジョウンズは、わたしのポジションを狙っていたわ。もう、イヤらしいくらいにばあさんに媚々だったわね」ミュウミュウは小馬鹿にしたように笑う。「また、ばあさんも世間知らずなものだから、ジョウンズに乗せられて、わたしを追い出そうと考えたようだった。わたしは自分の保身を考えたわ。そんな時、オーランド・ゼムの事をばあさんに聞いたのよ。良い歳をしたばあさんが、小娘みたいな表情でさ、オーランド・ゼムの話をするわけよ。傑作だったわ」
「ちょっと、それはひどい言い方じゃないの?」ジェシルが言う。「あなたを拾ってくれた人なのよ!」
「拾ってくれたか……」ミュウミュウはジェシルを睨む。「それって良い所出身の連中の言い方よね? あのばあさんの物言いや仕草の端々にそんな雰囲気が出ていたわ。イヤだったわ。……オーランド・ゼムの話を聞いて、わたしは、わたしと同じようなにおいを感じたわ。いわゆる、根っから悪人って言うね……」
そう言うと、ミュウミュウはオーランド・ゼムを見る。オーランド・ゼムは照れくさそうに笑む。
「ははは、わたしもね、ミュウミュウと初めて会った時、それを感じたよ。なので、ミュウミュウから『ラーントリア』のジョウンズを潰したい、ついでにリタも何とかしたいって話を聞いても驚かなかったよ。それからは話はとんとんと進んだね。……あ、もちろん内密でね」オーランド・ゼムは言うと、ムハンマイドを見た。「そして、その頃にムハンマイド君から連絡をもらったのだよ。彼とは彼の父上経由で知ったのだがね。良く父上が『とんでもない親不孝者だ』と愚痴をこぼしていてね、しかも天才だとも聞いていたから、興味があったのだよ」
「ムハンマイド!」ジェシルはムハンマイドを見る。それは咎めるような視線だった。「あなた、オーランド・ゼムとどういう関係なのよ? あなたも一味なの?」
「いや、そうではない」オーランド・ゼムが言う。「それはわたしが保証するよ」
「悪党の保証なんか、当てにならないわ!」ジェシルは口を尖らせる。「どうなのよ、ムハンマイド!」
「……ボクは」ムハンマイドはごくりと喉を鳴らす。「ボクに賛同してくれる良い人だと思っていた……」
「ははは、そう言ってもらえるとはね。嬉しい限りだ」オーランド・ゼムは愉快そうに笑う。「わたしとしては、いずれ何かの役に立つかもと、調子を合わせていただけだったのだがね。そうしたら、ある発明が完成しそうだと連絡があった」
「ムハンマイド!」ジェシルが声を荒げる。「何を作ったのよ!」
「ジェシル、君も見ただろう?」オーランド・ゼムが楽しそうに言う。「この星に来た時に攻撃を受けただろう?」
「あの攻撃もあなたが仕組んだの?」
「『フルーター』の一味かい? ……情報を漏らしていたのは、君の推察通り、わたしだ。ただ、わたしに目立って敵対する連中にだけ情報を流したのさ。特にあの連中は邪魔だった。ムハンマイド君の作った武器を試すのには丁度良いと思ってね」
「ムハンマイドが、使うって分かっていたの?」
「あの状況じゃ、試したくなるだろうさ。彼は天才だ。自分に絶対の自信を持っているのだからね」オーランド・ゼムはムハンマイドを見て、満足そうにうなずく。「予想以上のものだったよ」
ムハンマイドは複雑な表情だった。
つづく
ジェシルは身を捩って縛めを外そうとする。しかし、びくともしない。
「何をしているのか、分からないの? ふふふ……」背後に立ち、ジェシルの腕を捩じ上げているミュウミュウは、小馬鹿にしたように笑う。「あなたを動けないようにしているのよ」
今までとは全く違うミュウミュウの口調と態度に、ジェシルは戸惑っていた。
「どうしたって言うのよ?」ジェシルは声を荒げる。「放しなさいよ!」
「はい、そうですかって、言うわけ無いじゃない!」
ジェシルは頭を勢い良く反らせた。、ジェシルの後頭部がミュウミュウの顔面を直撃した。しかし、それより一瞬早く、ミュウミュウがジェシルに背中を蹴り飛ばした。ジェシルはたたらを踏みながらも立ち止まると、ミュウミュウに振り返りながら腰の熱線銃に手を伸ばした。
「あら?」
ジェシルは、はっとして腰を見る。ホルスターが空だった。
「これでも探しているの?」ミュウミュウが言う。その手に、ジェシルの熱線銃があった。銃口はジェシルに向いている。蹴り飛ばした際に奪ったのだ。「あなたも意外と抜けているわねぇ……」
そう言うとミュウミュウは目を細めて笑った。ジェシルが見せる残忍な笑み以上に残忍さが漂う。ジェシルは悔しそうに下唇を噛んだ。
「ミュウミュウ、あなたって……」
「そうよ。わたしとオーランド・ゼムはグルなのよ」
ミュウミュウは言いながらオーランド・ゼムの隣に立ち、その肩に寄り添う。
「そう言う事なのだよ、ジェシル」オーランド・ゼムは言うと、光線銃の銃口をジェシルに向ける。「でも、グルと言う言い方は頂けないね、ミュウミュウ……」
「そうね、あなた……」ミュウミュウはオーランド・ゼムを見る。その眼差しは優しい。「グルなんて言い方、下品だわね」
「あなたたち……」ジェシルは二人を睨む。「最初から……」
「最初から…… と言うかね、話を持ちかけてきたのはミュウミュウの方だよ」オーランド・ゼムはミュウミュウを見る。「最初はリタを何とかしてほしいって話だった」
「わたしは、リタ様…… ああっ、もうこの呼び方は面倒くさいわねぇ」ミュウミュウはうんざりしたように苦笑する。「あのばあさんの世話係になったのはラッキーだったと思うわ。って言うか、わたしって、大人しくしていれば、そこそこ忠実な召使って感じに見えるじゃない? それを駆使して、ばあさんを騙したって言うのが真実ね」
ミュウミュウは笑う。ジェシルは無表情でミュウミュウを見つめている。
「『ラーントリア』のジョウンズは、わたしのポジションを狙っていたわ。もう、イヤらしいくらいにばあさんに媚々だったわね」ミュウミュウは小馬鹿にしたように笑う。「また、ばあさんも世間知らずなものだから、ジョウンズに乗せられて、わたしを追い出そうと考えたようだった。わたしは自分の保身を考えたわ。そんな時、オーランド・ゼムの事をばあさんに聞いたのよ。良い歳をしたばあさんが、小娘みたいな表情でさ、オーランド・ゼムの話をするわけよ。傑作だったわ」
「ちょっと、それはひどい言い方じゃないの?」ジェシルが言う。「あなたを拾ってくれた人なのよ!」
「拾ってくれたか……」ミュウミュウはジェシルを睨む。「それって良い所出身の連中の言い方よね? あのばあさんの物言いや仕草の端々にそんな雰囲気が出ていたわ。イヤだったわ。……オーランド・ゼムの話を聞いて、わたしは、わたしと同じようなにおいを感じたわ。いわゆる、根っから悪人って言うね……」
そう言うと、ミュウミュウはオーランド・ゼムを見る。オーランド・ゼムは照れくさそうに笑む。
「ははは、わたしもね、ミュウミュウと初めて会った時、それを感じたよ。なので、ミュウミュウから『ラーントリア』のジョウンズを潰したい、ついでにリタも何とかしたいって話を聞いても驚かなかったよ。それからは話はとんとんと進んだね。……あ、もちろん内密でね」オーランド・ゼムは言うと、ムハンマイドを見た。「そして、その頃にムハンマイド君から連絡をもらったのだよ。彼とは彼の父上経由で知ったのだがね。良く父上が『とんでもない親不孝者だ』と愚痴をこぼしていてね、しかも天才だとも聞いていたから、興味があったのだよ」
「ムハンマイド!」ジェシルはムハンマイドを見る。それは咎めるような視線だった。「あなた、オーランド・ゼムとどういう関係なのよ? あなたも一味なの?」
「いや、そうではない」オーランド・ゼムが言う。「それはわたしが保証するよ」
「悪党の保証なんか、当てにならないわ!」ジェシルは口を尖らせる。「どうなのよ、ムハンマイド!」
「……ボクは」ムハンマイドはごくりと喉を鳴らす。「ボクに賛同してくれる良い人だと思っていた……」
「ははは、そう言ってもらえるとはね。嬉しい限りだ」オーランド・ゼムは愉快そうに笑う。「わたしとしては、いずれ何かの役に立つかもと、調子を合わせていただけだったのだがね。そうしたら、ある発明が完成しそうだと連絡があった」
「ムハンマイド!」ジェシルが声を荒げる。「何を作ったのよ!」
「ジェシル、君も見ただろう?」オーランド・ゼムが楽しそうに言う。「この星に来た時に攻撃を受けただろう?」
「あの攻撃もあなたが仕組んだの?」
「『フルーター』の一味かい? ……情報を漏らしていたのは、君の推察通り、わたしだ。ただ、わたしに目立って敵対する連中にだけ情報を流したのさ。特にあの連中は邪魔だった。ムハンマイド君の作った武器を試すのには丁度良いと思ってね」
「ムハンマイドが、使うって分かっていたの?」
「あの状況じゃ、試したくなるだろうさ。彼は天才だ。自分に絶対の自信を持っているのだからね」オーランド・ゼムはムハンマイドを見て、満足そうにうなずく。「予想以上のものだったよ」
ムハンマイドは複雑な表情だった。
つづく
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