小学生の頃、多摩川大橋から上流に向かったほうに、土手から
川までの間がとても広いところがあった。 ススキなどの丈の
高い草が茫々で、人がほとんど入らない場所だった。 あるとき、
そこを友達3、4人と自転車に乗って土手から走り降り、草ぼうぼう
めがけて突っ込んでいった。
じきに草に阻まれて止まり、自転車を押して草の中を水際に向か
って歩いた。 ずっと川に近づいたと思った頃、先頭の友だちが
アッ!という声を上げて突然姿を消した。 あわてて駆け寄ると、
草の中に多摩川のかつて側流があったと思われる、長く乾いた溝があって、
その中に自転車もろとも転げ落ちていた。
そこは両側をおおう草で外からは見えず、幅は5、6メートルぐらい。
ゆるい傾斜のU字型の長い川跡になり、深さは大人の背丈ほどあった。
溝の底で服をはたいている友達のところに降りていった私たちは、
無言のうちに興奮していた。 探検にぴったりのスゴイところを見つけたのだ。
「ここは秘密の場所だよ!」 みんな大賛成!!である
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私たちはあたりを見回しただけで帰った。 探検にはそれなりの道具がいる。
大好きなオヤツを後にとっておくような気持ちだった。
それから数日後、ガキ探検隊は秘密を守り側流に集まった
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それぞれが思い描く探険家の格好をしてきた。 どこから拾ってきた
のか、古ぼけたぶかぶかのヘルメットをかぶっている者、中には輪
っかに巻いた擦り切れたロープを、肩から斜めに掛けている者もいた。
何のためのロープかわからないが、友だちにはそれが探検家の格好なのだ。
草のトンネルになっている、側流の底に降りた私たちはあたりを歩いてみた。
底は枯れ草が積もってふかふかしている。 ジャンケンで隊長を決め、
ガキ探検隊は片側に向かって歩き出したが、数十メートルのカーブの先で
意外にあっさりと出口に出てしまった。 そこは、川とは思ったより
離れていて、土砂などの堆積物があり、それが水を遮っていた。
みんなちょっとガッカリしたが、気を取り直して反対側に向かった。
そっちは私達を十分喜ばせるぐらい長かった。棒っきれを持って
身構えた隊長を先頭に、ソロリ ソロリと歩いていく。
私達を心配させていたのは、犬の死骸なんかあったらイヤだな~
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ということである。 そのうち、仲間の一人が、人間のガイコツ
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ないだろなぁ・・・・とつぶやいた。 とたんに私たちの頭の中に、
理科室のガイコツが浮かび、それが枯れ草の上に横たわっているのを想像した。
隊長以下全員の足取りが、ずっしり重くなりヘッピリ腰の度合いが増す。
みんなでできるだけ遠くを見ながら歩き、なんかヘンなものが見えたら、
ワッと逃げ出すかまえ。 さいわいなことに、あるのは枯れ草とゴミだけ
で事件もなく、探検隊は無事出口にたどりついた。
あれから40年近くたち、側流跡は今はどうなっているのかわからない。
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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