形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

ガキ探検隊、多摩川側流跡を行く

2011-02-10 14:07:26 | Weblog

小学生の頃、多摩川大橋から上流に向かったほうに、土手から
川までの間がとても広いところがあった。 ススキなどの丈の
高い草が茫々で、人がほとんど入らない場所だった。 あるとき、
そこを友達3、4人と自転車に乗って土手から走り降り、草ぼうぼう
めがけて突っ込んでいった。

じきに草に阻まれて止まり、自転車を押して草の中を水際に向か
って歩いた。 ずっと川に近づいたと思った頃、先頭の友だちが
アッ!という声を上げて突然姿を消した。 あわてて駆け寄ると、
草の中に多摩川のかつて側流があったと思われる、長く乾いた溝があって、
その中に自転車もろとも転げ落ちていた。

そこは両側をおおう草で外からは見えず、幅は5、6メートルぐらい。
ゆるい傾斜のU字型の長い川跡になり、深さは大人の背丈ほどあった。 
溝の底で服をはたいている友達のところに降りていった私たちは、
無言のうちに興奮していた。 探検にぴったりのスゴイところを見つけたのだ。
「ここは秘密の場所だよ!」 みんな大賛成!!である
私たちはあたりを見回しただけで帰った。 探検にはそれなりの道具がいる。
大好きなオヤツを後にとっておくような気持ちだった。

それから数日後、ガキ探検隊は秘密を守り側流に集まった
それぞれが思い描く探険家の格好をしてきた。 どこから拾ってきた
のか、古ぼけたぶかぶかのヘルメットをかぶっている者、中には輪
っかに巻いた擦り切れたロープを、肩から斜めに掛けている者もいた。 
何のためのロープかわからないが、友だちにはそれが探検家の格好なのだ。

草のトンネルになっている、側流の底に降りた私たちはあたりを歩いてみた。
底は枯れ草が積もってふかふかしている。 ジャンケンで隊長を決め、
ガキ探検隊は片側に向かって歩き出したが、数十メートルのカーブの先で
意外にあっさりと出口に出てしまった。 そこは、川とは思ったより
離れていて、土砂などの堆積物があり、それが水を遮っていた。

みんなちょっとガッカリしたが、気を取り直して反対側に向かった。
そっちは私達を十分喜ばせるぐらい長かった。棒っきれを持って
身構えた隊長を先頭に、ソロリ ソロリと歩いていく。

私達を心配させていたのは、犬の死骸なんかあったらイヤだな~ 
ということである。 そのうち、仲間の一人が、人間のガイコツ なんか、
ないだろなぁ・・・・とつぶやいた。 とたんに私たちの頭の中に、
理科室のガイコツが浮かび、それが枯れ草の上に横たわっているのを想像した。

隊長以下全員の足取りが、ずっしり重くなりヘッピリ腰の度合いが増す。
みんなでできるだけ遠くを見ながら歩き、なんかヘンなものが見えたら、
ワッと逃げ出すかまえ。 さいわいなことに、あるのは枯れ草とゴミだけ
で事件もなく、探検隊は無事出口にたどりついた。
あれから40年近くたち、側流跡は今はどうなっているのかわからない。



形之医学・しんそう療方 東京小石川
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