土曜日、雪の中、銀座へ行く。
和紙のふくろうの置き物が目に入ったので、お店に入る。
「ふくろう欲しいんですが」
「何にお使いですか」
「え」
「ビニール袋と紙袋とどんなのがよろしいでしょうか」
「いや、あの、袋ではなくてふくろうの置き物なんですが」
“ふくろを”と聞こえてしまったらしい。
「お次お待ちの方、ご注文お決まりでしたらおうかがいします」
「ロイヤルミルクカフェラテ」
ロイヤルミルクティとカフェラテがごっちゃになった。
出てきたのはカフェラテだった。
正しいです。
会社で、手のひらがかゆかったので、包むように包むように掻いてたら
爪が真っ黒になった。
手を洗うべきだな。
茶筒を取ろうと食器棚を開けると、トイレットペーパーが1個
置いてある。
なんで?
で、茶筒はどこ?
あった。
あっちの枕の横に見える。
じゃあ、あそこにあるはずの目覚まし時計はどこ?
あった。
下駄箱の上だ。
で、下駄箱の上には何があったんだっけか?
なに部屋ん中でオリエンテーリングしてんだ。
無精して、こし網無しで茶をいれると茶柱が立った。
喜んで慌てて飲んだら熱くて、「あちゃあちゃあちゃ」と声出したら茶柱が
口の中に刺さった。針金みたいに硬い茶柱。
なんだか今日はフタを取り落す。
乾燥パセリのキャップ、飲むヨーグルトのキャップ、柿渋歯磨きのキャップ、
ユーカリハーブオイルのキャップ、オロナイン軟膏のキャップ。
特にオロナインのキャップというかフタは、落としたあと便器で跳ねて戻ってきたから
よかったようなものの、混沌の中に着水してたら弱るところだった。
ドア開けて外へ出て、屈んで靴を履いて立ち上がったらお隣さんがエレベータを待っていた。
「ジュワッチ」
とっさに何を口走ってるんだか。
お隣さん、困ったような弱ったような目をそらしたいような顔してた。