結論だけいうとソ連、そして現ロシアはサンフランシスコ平和条約の受益国ではありませんけど
南樺太、千島列島及び北方領土を「事実上の自国領土」とすることによって(国際法上は違法な)利益を事実上得ています。
なので、サンフランシスコ平和条約に拘束される側である我が国がそれを追認した瞬間にロシアは
同平和条約第25条
この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第23条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第21条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によつても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない。
に反して、同条約の第2条(c)
日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
から利益を受けることになってしまいます。
で、それは認められないよ、というのが、いわゆる「ダレスの恫喝」(ダレスの勧告)と呼ばれるもの。
とにかく千島のソ連帰属を認めるということは認められない。いわんや択捉・国後まで含めて認めることなどは認められない。もしも日本がそういう態度をとる場合には、サンフランシスコ講和条約の第二十六条を注意してもらいたい。サンフランシスコ条約不参加の国とのあいだには、サンフランシスコ条約と同一の内容で日本が講和するのが原則であって、もしも条約で規定している以上に、その国に日本が譲歩するというならば、すでに条約を結んでいる国は日本に追加の代償を請求することができる
高野雄一『国際法からみた北方領土』(岩波ブックレット)P42より
言うまでもなく、ダレスのこの論法が成り立つためにはソ連がサンフランシスコ平和条約から利益を得ていないという前提が必要です。
だから、ソ連、そしてロシアは法理論上はサンフランシスコ平和条約に基づく日本国の南樺太、千島列島の放棄から利益を得ていないことになります。
が、実際にロシアは南樺太、千島列島、そして「北方領土」を「実効支配」しており、それを既成事実化しています。
さて、ロシア自身は南樺太、千島列島、そして「北方領土」はロシア領土として正式に編入されたとの見解であり、そのように主張していますが、根拠の一つとしてサンフランシスコ平和条約における日本国の「放棄」を挙げています。
ヤルタ協定とその合意事項は、一九五一年のサンフランシスコ講和条約で確認され、クリール列島に対する日本の帰属権の放棄が確定した。ソ連は同条約に調印しなかったから、ソ連がクリール列島を領有することはできない、とする日本の主張は根拠薄弱だ。講和条約で日本が列島の帰属を放棄したことは絶対的なものであり、その法的効果が及ぶ範囲は条約調印国にとどまらない。さらに日本側は、択捉、国後など四島がクリール列島に入らない、という論拠まで持ち出した。
しかし、連合国は、日本の北側国境は北海道の海岸線によって画定される、という認識をもっていたし、日本政府もかつて、四島はクリール列島の一部と認めていた。
つまりロシアの論法としては、自身はサンフランシスコ平和条約とは関係ないが、その結果としての日本国の放棄から自国が利益を受けるのはヤルタ秘密協定などの経緯からいっても当然であると考えているということになります。
サンフランシスコ平和条約の第25条により、明確に
この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない
と定義されているにもかかわらずです。
そして、それを日本国が「追認」することで、名実ともに晴れて自国領土として認められるのでなければ
日本国との平和条約は締結しないと言っているわけです。
いったん、ここまで。
南樺太、千島列島及び北方領土を「事実上の自国領土」とすることによって(国際法上は違法な)利益を事実上得ています。
なので、サンフランシスコ平和条約に拘束される側である我が国がそれを追認した瞬間にロシアは
同平和条約第25条
この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第23条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第21条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によつても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない。
に反して、同条約の第2条(c)
日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
から利益を受けることになってしまいます。
で、それは認められないよ、というのが、いわゆる「ダレスの恫喝」(ダレスの勧告)と呼ばれるもの。
とにかく千島のソ連帰属を認めるということは認められない。いわんや択捉・国後まで含めて認めることなどは認められない。もしも日本がそういう態度をとる場合には、サンフランシスコ講和条約の第二十六条を注意してもらいたい。サンフランシスコ条約不参加の国とのあいだには、サンフランシスコ条約と同一の内容で日本が講和するのが原則であって、もしも条約で規定している以上に、その国に日本が譲歩するというならば、すでに条約を結んでいる国は日本に追加の代償を請求することができる
高野雄一『国際法からみた北方領土』(岩波ブックレット)P42より
言うまでもなく、ダレスのこの論法が成り立つためにはソ連がサンフランシスコ平和条約から利益を得ていないという前提が必要です。
だから、ソ連、そしてロシアは法理論上はサンフランシスコ平和条約に基づく日本国の南樺太、千島列島の放棄から利益を得ていないことになります。
が、実際にロシアは南樺太、千島列島、そして「北方領土」を「実効支配」しており、それを既成事実化しています。
さて、ロシア自身は南樺太、千島列島、そして「北方領土」はロシア領土として正式に編入されたとの見解であり、そのように主張していますが、根拠の一つとしてサンフランシスコ平和条約における日本国の「放棄」を挙げています。
ヤルタ協定とその合意事項は、一九五一年のサンフランシスコ講和条約で確認され、クリール列島に対する日本の帰属権の放棄が確定した。ソ連は同条約に調印しなかったから、ソ連がクリール列島を領有することはできない、とする日本の主張は根拠薄弱だ。講和条約で日本が列島の帰属を放棄したことは絶対的なものであり、その法的効果が及ぶ範囲は条約調印国にとどまらない。さらに日本側は、択捉、国後など四島がクリール列島に入らない、という論拠まで持ち出した。
しかし、連合国は、日本の北側国境は北海道の海岸線によって画定される、という認識をもっていたし、日本政府もかつて、四島はクリール列島の一部と認めていた。
つまりロシアの論法としては、自身はサンフランシスコ平和条約とは関係ないが、その結果としての日本国の放棄から自国が利益を受けるのはヤルタ秘密協定などの経緯からいっても当然であると考えているということになります。
サンフランシスコ平和条約の第25条により、明確に
この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない
と定義されているにもかかわらずです。
そして、それを日本国が「追認」することで、名実ともに晴れて自国領土として認められるのでなければ
日本国との平和条約は締結しないと言っているわけです。
いったん、ここまで。