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不知火検校の幸四郎―新橋演舞場 九月大歌舞伎

2013-09-29 23:09:44 | 観劇
不知火検校の悪の華、
幸四郎という役者の集大成のように思えるほど、役と芸風がピタッと決まっていました。
生まれ落ちたそのときから、悪に染められた因縁、
そこいらの悪党たあー、スケールがちがわー、と言わんばかり。

年齢とともに(少年時代の玉太郎君、大人顔負けの演技、松江さんのご子息、いい役者になりますね)
手口も金子もエスカレートしていきます。
そしてついに将軍家ご金蔵を謀ります、が…、
呆気なくご用、
おっとと、悪党の弱点、仲間の裏切り、だったか!
これがまた検校の想定外だったというのは、
詰めが甘いというか、徹底的に悪に成り切れてない、というか、
生首のお兄さん(橋之助)との仲間意識は壊れない、わけですし、
一匹狼ではない、ところが物足りないのね、現代人には…
まあ、芝居小屋にかけられないような、筋書きはご法度だったのかもしれませんね。

しかし、幸四郎の悪党ぶりは、お縄…で終わらないところ、
最後の、群衆に向かって吐き捨てる悪態、
そのびくともしない幸四郎の検校の、なんと哲学的であることか!
  てめいら、思い当たるだろうが…、
のセリフ、には参りました!

  ただただ面白くもない日常をちまちまと生きているだけの
  面白可笑しく大きいことをやってみることもできねえ、目明きのおまえら、…
といった人生哲学なのですが、
ちょうど、歌舞伎座の陰陽師、のなかで、
人はなぜ生きているのか、という問いに、

鳥が森で鳴くように、空に雲がかかるように、
人はただそこに存在していればいいんだ、

という、自然観、に共鳴したばかりの私としては、思わず苦笑、です。


もう一つの演目、馬盗人は、れっきとした長唄の舞踊なのですね。
踊りの主役は、馬です。
坂東流なのです、確かに足遣い、顔の表情、踊りになってました。
巳之助さん、若さあふれてきびきびとした振り、よかった。
翫雀さんとは微妙に振りが違います。
やっぱり三津五郎さんで見たかった!
田舎の熊五郎でも、踊りに品がでる、だろうなー
とつい思ってしまいました。

2013.09.25観劇


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