紫苑の部屋      

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鎮魂の書、枕草子

2012-11-04 21:09:44 | 源氏物語
枕草子は、清少納言の鎮魂の書、
最後のほうにおかれた、300段
 やがては下るといひたる人に
  思ひだに かからぬ山のさせも草
  たれか伊吹の 里は告げしぞ


実方への鎮魂の歌を載せて終わる、少納言の思いに打たれたのでした。

枕草子は、今は亡き定子さまへの鎮魂のために書かれた、
それはもちろんそうなのです。
少納言の潔さは、定子への賛美に徹していたこと、
それを引き出すためにのみ、自分の“われぼめ”があること、
草紙から読み取れるにもかかわらず、
誤解を生む表現、
紫式部日記のような女房たちの目をものともせず、
栄光の地位から一気に零落していく定子一門にもかかわらず、
一切暗部を捨象、華やかな一面のみを称える、
亡き中宮さまへの鎮魂の書、であります。

でも、それだけではなかったのです。
かつて愛した人の、配流・無念の死に対する想い、
それを直接表現するのは風雅を解しないこと、
あるいは何か摂関家・帝に対して憚ることだったのかもしれません。

 …さしも草さしも知らじな燃ゆる思ひ
の実方の歌を受けた、
少納言の魂の声が聞こえてくるようです。

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