好きと言ってくれ
RICOH GR DIGITAL 4で撮影
子どもの頃近所にあった古い団地で私は遊んでいた。
多分探偵ごっこをしていて隠れる場所を探していたのだ。
夕日のさす2号棟階段の踊り場にグッタリしている少年を発見、
その団地内に住んでいるらしいので送っていこうと背負う。
外に出ると幾棟も新旧の建物が建ち並び、ああここは時間を飛び越える広場なんだと分かる。そこは夢の中で何度か来た場所なのだ。死者と生者が行き交う水飲み場だ。
少年は最も新しい棟の住人だった。その棟に階段はなく、エレベーターの縦横移動のみで各戸に行く。カプセル型の透明エレベーターが積み木遊びのように動く。
長い時間かかって屋上に出る。地上から遠く離れ、青い空がますます青い。神殿のような石の柱がそびえ、その間を雲が流れる。一抱えもある大きな向日葵が揺れている。
その光景に、地上の住人である私は、少年を背負ったまま声もなく見入る。
少年は、自分はここにこれからもずっと住むのだと言う。そして私にもここに住居を与えると。だが私は、青と白と黄色の光景の美しさに圧倒され、畏れ、ここは私がいる場所ではないと本能的に悟る。
少年を背負っているのでカメラが出せない。目に焼き付けておこうと向日葵の花を見つめる。