臨床をやっていると時々、患者の体から必要としている何かが浮かび上がってくると感じることがある。例えば、この間診た人。この人は左上肢を動かす(具体的には外転伸展させる)と肩に痛みが出るという。
左肩そのものに問題は検出されなかったので、より広い範囲で調べてみると、左半身の肩以外のさまざまな部位に「弱さ」があり、まずはそれらを処理した。が、それだけでは肩の痛みが改善しない。そこで改めて全身に眼を向けると、右の懸鐘(けんしょう)穴に反応が出ていた。それに続いて(同じ右の)下巨虚(げこきょ)穴も反応があった。
経絡で言うと懸鐘は胆経、下巨虚は胃経のツボだが、そういうことより懸鐘と下巨虚を結んだラインが気になった。で、そのラインに沿ってツボの反応を調べるとビンゴで、陰陵泉(いんりょうせん)穴で反応を検出した。そして右の懸鐘→下巨虚→陰陵泉のラインは、そのまま左肩に向かうのだ。
実際、これらのツボの反応を処理すると、左肩の痛みが完全に消えたわけではないが、痛みが出るまでの可動域が広がった。
こうしたことは間々あって、例えばある時、反応の出ていたツボに鍼を打っていた。鍼は皮膚面に対して垂直に打つ直刺と、斜めに打つ斜刺があって、この時は筋反射テストを使ってキネシオロジー的に打つ方向を決めて斜刺を使っていたが、鍼を打っていくと全体として円を描いているように見えた。どうやら、この時の患者は鍼云々というより、その部分に円を描くような何かが必要だったようだ。
逆に、施術していると何かのラインが浮かび上がってくるが、どこか欠けていることがある。そういう場合は、その欠けている部分を補うような何か(鍼でもテープでも、あるいは軽擦でも)を足してやると、思いのほかいい結果が得られたりする。
こうしたことはアナトミートレインとか経筋とかで説明がつくこともあるし、そうでないこともある。私自身はもう治療術とか治療理論の勉強はほとんどやっていないので、臨床はほぼアドリブの出たとこ勝負みたいになっているが、個人的には「まずアナトミートレインありき」とか「まず経筋ありき」でなく、その場で直感的に感じたことに従うことにしている。なぜなら、生物の体というものは人が都合よくしつらえた“理論体系”などで捉えられるものではないからだ。
「医学の知識なんて邪魔なだけで、ない方がいい」という一部の気功師やエネルギー・ワーカーに与する気は全くないが、私自身は臨床の場では可能な限りゼロでニュートラルな状態でいたいと思っている。
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