深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

奥義

2024-12-02 11:25:51 | 一治療家の視点

キネシオロジーのセミナーの準備をしていたら、ふと鍼灸学校時代に教わった兵頭明先生のことが思い出された。

兵頭先生は中国まで行って中医学を学んだ方で、東京衛生学園では東洋医学概論や経絡経穴概論などを担当していた。その兵藤先生による1年の時の授業の一発目だったと思う。先生がいきなり「みんな、鍼の奥義を知りたい?」と聞いてきた。それに対して我々が「知りたい!」と返すと、「じゃあ」といって先生は「フェニックス」と呼ばれる鍼の奥義を教えてくれた。これは先生が中国で老中医から伝授されたもので、他言無用と言われたが最終的に「中国国外でなら教えてよい」と許可を得たという。

この「フェニックス」、ごく単純なものだが言葉で説明するのが面倒なので、いつか気が向いたら動画にしてアップするかもしれない(私の動画は見てる人も非常に少ないので、アップしても問題になることはないだろう)。ただ私自身は今、「フェニックス」をやってはいない。そのことも踏まえて思うのは…

恐らくさまざまな分野で、「それを身につければ名人、達人の領域に至る」奥義と呼ばれるものや、それに類するものはあるのだと思う。そういう奥義には、その道で相当な習熟がないとできないような高度なもの、複雑なものもあるかもしれないが、その多くは実は「フェニックス」のようにビックリするほど単純で、その日からできるようなものなのではないか(実際、「フェニックス」は鍼灸学校に入ったばかりの、まだまともに鍼すら持ったことのない1年生が教わって、すぐ実践できるようなものだ)。けれども、それをキチンと身につけて名人、達人の領域に至ることのできる人はほとんどいない。それはなぜか?

それを続けられないからだ。「フェニックス」も同じだが、それを教わったとおりにずっと実践できる人は、私を含めてほとんどいない。1日、2日、あるいは1週間くらいは可能だが、1か月、半年、1年と続けられる人は、まずいないのだ。兵頭先生もそれが分かってるから、学校に入りたての学生にフツーに奥義なんてものを教えることができるのである。実際、2年生だったか3年生だったかの授業で先生が「みんな、『フェニックス』やってる?」と尋ねてきた。そしてニヤッと笑みを浮かべて「やってないでしょ、ね! だから私は安心してみんなに奥義をペ~ラペラ話すことができるんですよ」と。

私が兵頭先生から学んだことは、そのことの本質に関わる秘中の秘とも言えるものは隠しておくのではなく、むしろペ~ラペラ話してしまってよい、ということだった。たとえ「これが奥義ですよ」と言ったところで、ほとんど誰も注目しないから。注目した人がいたとしても、ほとんどの人は実践しないから。実践する人がいたとしても、ほとんどの人が長くは続けられないから。

オカルトとは「隠されたもの」という意味だが、本当の真理や本質はむしろ隠されたものの中にあるのではなく、最もあからさまに開かれたものの中にあるのかもしれない。


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