事の始まりはヤフオクである。
私はコレクション癖があるから、宝の山の「エンタイヤ一括」というのを買った。
たしか100通で1000円くらい。
それほど期待せず、手紙の束をほぐして一通ずつ読んだ。
同じ受取人の手紙が続く。
福島県草野村(現いわき市)の某氏。
退屈しかかっていたが、とある手紙の差出人を見てぶっとんだ。
宮本常一(みやもとつねいち)。
え、まさか。
住所は東京都芝区三田綱町10渋沢子爵邸内アチックミューゼアム。
こりゃ本物だ。
民俗学の大家で全集も出ている。
ナニナニ「渋沢先生が7月19日にお宅を訪問されますのでお迎えを
お願いします。・・・ありあわせのおかずがあればよく特別のご準備はなさらぬよう」。
渋沢先生とは、当時彼が食客となっていた渋沢敬三(栄一の孫・日銀副総裁)のことだ。
これは私蔵すべきではないと判断し、ネットで売った。
結果は1万円を突破。
久々のホームラン。
続いて同じ条件のはがき5枚。
これも6000円以上。
買ってくださった方にはもちろん感謝しているが、私は次点の人に興味を持った。
別のものを私から買ったことがあるので住所は知っている。
間違いなく受取人の地元。
そこではっと思いだした。
古書業界誌で、平読書クラブ店主の追悼文を書いていた方なのでは。
こりゃ金銭を度外視してもお渡しすべきだったか。
しかしもう手遅れ。
現物は落札者に渡ってしまった。
願わくは購入者は死蔵せず、データを公開されんことを。
手紙を読みたい人はたくさんいることだろう。
本を読むよりナマナマしいから。
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