街を行き交う男も女も同じような服を着て、同じ髪型をし、同じ顔を見せていた。
まるで思考することを自ら拒んでしまったかのようだ。
人間の悩みや心配はどんどん単純化され、人間が生み出した文化はもはや、生きるためのものではなくなりただ便利な方へとばかり傾き、人間の脳を退化させ社会を腐敗させている。
まり子もまた考えるのを止めた。
だから何だというのだろう。
・・・・・・
こんなくだらないことへ考えが及ぶことにすら腹立たしい。
人生を問う哲学は、人間に何の意味ももたらさなかったし、教訓さえ与えてはいない。
理想主義達は時代を通り過ぎる風のようなものだ。
何故なら、人間の心を永続的に捉えることはできなかったからだ。
道標を失った人間は、これから何処へ行き何処へ向かうのだろうか。
エンジンの断続音を聞きながら、突然かん高い音を立てて止まる車の中で、眼の前を立ちはだかる信号の赤い点滅をまり子は凝視した。
「羊の群」・・・P101-P102
God Bless You ❣