チョビに会いに 東寺へ行く。
例の大木の下で待ってると 今日はやけに人が多い。
待ってても来ないので 八幡殿へ行き 何時もの所に腰を下ろし
撮影準備をした。
№2の女ボス 切れ耳が近づいて来たので 挨拶をした。
周りを見ると 何故かニャンコ達があまり居ない。
ちゃりちゃりと 小石を踏む音が聞こえて来て…
左を見ると チョビが居る。
「何だよチョビ!待ってたんだぞ!」と言った。
チョビはおれに目もくれず 真っすぐ奥へと行くんだ。
すると「こんにちわ!」と声を掛けられ 上を向くと親子がいた。
男性とちっちゃい男の子だ。
「この猫を知ってるんですか?」と言われ 即「親友なんだよね」と言った。
袋を持っていて 中から何かを出し チョビの目の前に置いた。
チョビはそれを食べ始めた。
男性が「この猫 私の家で飼ってたんですよ」と言う。
びっくりした!
「毎日毎日探して…やっと情報をもらい 此処で会えたんです」と言った。
続けて「昨日会えたので 何時も付けてた首輪を付けたんです」と。
おれは昨日の出来事を 事細かく説明した。
男性は「そうだったんだ」と言い 黙ってしまった。
数分後 聞きもしないのに 男性は話を始めた。
東寺の近所らしく 家族はチョビと暮らしていた。
長女がとてもチョビを溺愛していた。
寝食を共にしてたと。
その家族の家から 5件目くらいの所に新居を建てた。
移り住んで数か月後…
長女が何時も通り 行って来ますと言って家を出たきり 帰ってこなかったと。
帰って来た時には 棺に収まっていたと言う。
それから数日後 チョビが居なくなった。
探すと 以前住んでた家に居たと言う。
毎日それを繰り返していた。
玄関先でうずくまって居ると。
探しては連れて帰るの繰り返しだと。
おれは話を聞いて 我慢してた。
堪えに堪えてた。
ある日 チョビが出て行ったきり 帰って来なかった。
何日も何週間も 何カ月も探したと。
とっくに諦めてた時 ある日近所の知り合いが「チョビは東寺に居る」と聞いて
昨日来たと言う。
話をしていて どのくらいの時間が過ぎたんだろうか…
男性が息子に「帰ろうか?」と言い おれに向かって
「色々と聞いて下さって ありがとうございました」と言った。
親子が歩き始めると チョビはおれの横に来た。
親子の後姿をじっと見ている。
男の子が振り向き「ばいば~~~い!ばいば~~~い!」と叫んだ。
おれに言ってるのか?それともチョビにか?
チョビはそれを見て天を仰ぎ「にゃう~にゃう~」と 悲しい声で泣く。
おれはチョビを抱き寄せ ぐしぐしぐしと体と頭を撫でた。
チョビは女好きじゃなかったんだ。
長女の温もりを 撫でてくれてた愛を…
これがチョビの人生だ。
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