Sujak do 〜SujaのDNA〜

興味深く感じたことや読んだ書籍について書いたりしていきます。天然石については、一休み。

『安心して絶望できる人生』~辛い時にはユーモア一滴~

2025-01-21 14:42:04 | 本を読む
こんにちは
Sujaです

時折、相談される内容が深まるなか
精神障害やひきこもりについて勉強しようと
いろんな書物を読み探していたとき

『安心して絶望できる人生』
という本と出会いました

なんてパンチの効いたタイトルなんだろうと思い
思わず手に取り読み始めたのです

著者の向谷地生良(むかいやちいくよし)氏は
北海道の浦河町というところに
『べてるの家』
という精神疾患を抱えた人たちが生活する活動拠点を創設した人で
ソーシャルワーカーとして浦河赤十字病院で働いていた人です

この『べてるの家』では
統合失調症などの精神疾患を抱えた人たちが
自身の悩みや病についてグループで研究するという
『当事者研究』が盛んに行われています

そもそもみんな誰しも
人生に悩みや苦労は常に付いて回るもので

そのうえ精神的な病を抱える中
どうやって人並みで当たり前の苦労を経験しながら
精神疾患と付き合っていくかということが
『べてるの家』ではテーマになっています

日々、ミーティングと研究で自分自身の悩みや病に理解を深めて受け入れながら
自身や周りとバランスよく付き合っていく日々を送っています

この『当事者研究』は

精神疾患を持つ当事者自身が研究者の目を持って
自分自身と社会に目を向け、暮らしやすい場を創っていくことが目標で
当事者が自ら病名を考え研究結果を発表していきます
例えば
小泉元総理大臣の幻聴に恋してしまった人が名づけた自己病名が
『統合失調症ドラマティックタイプ』

実にユニークです

そして
幻聴のことは『幻聴さん』と親しみを込めて呼んでいるそうで

意地悪な事を言う幻聴さんに対し
「丁寧な物言いで丁重にお引き取り頂きましょう」というアドバイス通りに
「幻聴さん、お願いします。今日は疲れているのでもう休ませてください。幻聴さんもお休みください」と伝えると
幻聴さんの頻度が減ったり、優しい幻聴さんになるそうです

この研究やミーティングを重ねるにつれ、当事者にも少しずつ変化が生じ
「自分の行き詰まりに手ごたえを感じる」
「この困り方は良いセンいってるね」
「自分の悩みや不安に誇りを感じる」
「諦め方が上手くなってきた」
「悩みの多さに自信が出て来た」
「病気のスジが良いね」
「最近、落ち方がうまいね」
などと自他ともにそんな感想が出てくるユニークさには魅力に感じます

『悩み事』を『テーマ』に置き換え

「悩みを抱えているのではなく『テーマ』を与えられている」
という発想の転換によって
問題は解決しなくても、自己が損なわれない感覚を覚え
思いつめることなく『行き詰まり』に自信を持つようになるのです

実際に当事者研究をした人の感想が印象的でした

『自己肯定の感覚をつかんだとき、初めて「自分の荷物は自分のものだ」と気付いた。自分が自分の面倒を見て、自分が自分を助けはじめた時、初めて自己否定からくる問題行動で人間関係を壊すというサイクルから少しずつ抜け出しはじめたように思う』

「三度の飯よりミーティング」を合言葉に、何かが生じる度にみんなで話し合う事を大事にしているそうです

所々にユーモアセンスをちりばめる手法はとても魅力的ですね
『苦しいのに笑える』
『絶望してるけど安心』
『泣きながら笑ってる』
そんな印象をうけました

辛い状況下でもユニークさを一滴落とすことで
心や思考が弛緩する効果があり
困難を受け入れるスペースがちょっとだけ出来るような気がします

経験がないから知りたい戦争の時代〜三浦綾子著『銃口』〜

2024-08-11 12:27:00 | 本を読む
こんにちは
Sujaです

もうすぐ終戦から79年になりますね。

私を含め大半の人たちが
戦時中の経験が無いことと思います。

近頃の私は
経験が無いからこそ知りたいと強く思い

小説を読む時も
昭和初期や戦前戦後の時代背景の小説を好んで読んでいます。

その中でも
三浦綾子著『銃口』は心に刻まれる作品です。


舞台は北海道の旭川。

昭和初期から終戦後まで主人公の男性が
この時代に翻弄されながらも
愛と慈しみを育んで生きようとします。

上下巻の文庫本で

上巻では主人公の幼少期から青年になり
教師という職業に就いて
やさしく明るい先生として理想の教師に邁進する日々をおくります。

読んでいても和やかな気持ちになり
純粋で素直な主人公に好感を抱きながら読み進めることができました。

しかし
上巻の終わりに差し掛かるころ

身に覚えもない事で警察に連れて行かれてしまい下巻へと続いていくのです。

下巻では
当時の時代ならではの理不尽さと不条理な現実に晒された
主人公の苦悩が描かれています。

その中で
『綴り方教育連盟事件』という事件を知りました。

調べると1940年から41年にかけて実際い起きた思想弾圧事件だということです。

この事件は
教師らが生徒に日常生活のありのままを綴り方(作文)で表現させる教育が
治安維持法違反になるとして
北海道で大勢の教師が逮捕されたそうです。

自由に表現するということが
資本主義の矛盾を自覚させ
階級意識を植え付け
共産主義教育をしようとしたとされたそうです。

これにはかなり衝撃をうけました。

日常の生活を自由に描くよりも
国家や天皇への思いを綴らせる教育を良しとしていた時代だったとは。

主人公は
この事件に関わってもいないのに
不幸にも逮捕され
取り調べや訊問を受け
半年以上留置されます。

読んでいても非常に辛く
読むスピードが一気にスローになってしまいました。

留置から解放されたとて
なかなか穏やかな日々には戻れません。

今度は
彼のもとに召集令状が届き
結婚を直前にして
主人公は満洲へ行くことになります。

ここから先を読み進めていくうちに
私はなんとなく
トルストイを読んでいるような錯覚に陥りました。

または聖書のたとえ話を読んでいるような気分になったのです。

著者自身クリスチャンだそうで
主人公の婚約者もキリスト教徒だったり
主人公自身が言動を振り返り
内省する様子などもあり
悟りや気づきを所々に織り交ぜたストーリーでした。

兵隊となった主人公は
非常に善良な上司たちに恵まれ
互いに尊敬と思いやりとで平和な人間関係を築いていくのです。

終戦となり
主人公は信頼する上司と共に
満洲から日本へと帰ろうとするのですが
困難な場面では幾度となく救いの手に助けられ
命からがら生還します。

終盤は「良かった良かった」と思いながら読み進めることができ
戦争を題材にした作品の中では
いずれまた読み返したい大切な作品になりました。
当時を知るには非常に参考になり
なにより美しいと感じた作品でした。

当時の避難所を考える〜東日本大震災から13年〜

2024-03-11 14:26:00 | 本を読む
こんにちは
Sujaです

東日本大震災から13年ですね

今回
避難所を題材にした書籍を読みました

垣谷美雨著『避難所』は
2011年3月11日に起きた
東日本大震災で被災した女性3人を通して
避難所での生活やボランティアとの関わり
未だ根強い男尊女卑の考えや家族の在り方など
きめ細やかに表現した作品でした

著者は
かなりの数の文献を参考にしているようなので
実際にそんなモデルがいるのではと思わせます

東日本大震災で被災した人たちのうち
今なお
避難生活を送っている人が3万人弱いるといいます
13年経っても未だ元通りに暮らせない人たちがそんなにいるんです

今年の元日に起きた能登半島地震で
避難生活を送っている人たちは
13年経った時
未だ避難生活を送っている人がいるのか
いないのか?
東日本大震災の教訓を活かして一人の取りこぼしもなく
救われることを切に願います

避難所での課題は山積で
救援物資の分配や
深刻なトイレ事情
衛生問題やプライバシーの問題
お風呂に入りたい
洗濯をしたい
温かい食べ物を食べたい

被災した上に
我慢しなくてはならないことが殊のほか多く
ストレスは溜まる一方です

作中で
パーテーションのない避難所で
乳飲み子を抱えた若い女性が
周囲の好奇な視線に戸惑いながらも
赤ちゃんにお乳を上げるのにも苦労する件があります

毛布を被って母乳をあげていると
女性の舅が「昔の女は人前でも堂々と乳さやったもんだ」と言い
毛布を払い除けようとする件は
鳥肌が立ちました

大切な人を亡くしたうえに
慣れない避難所生活を余儀なくされ
先のことを考える余裕すらない

けれど
生かされたのだから
生きていかなくてはいけない

考えなくてはいけない
どう生きるかを

難を避ける場所
避難所

言葉の通りのスペースになっているのか
細かな問題提起をしている書籍でした

時折
読み返したい1冊です

小説『レベッカ』は印象に残る一冊です

2024-01-07 14:40:00 | 本を読む
こんにちは
Sujaです

昨年1年間で読んだ本が66冊でした📖

月に約5冊程度読んでることになりますね

これはもう「趣味は読書です」
と言い切っていい量ではないでしょうか❓

殆どが図書館で借りたものか
サイクルで頂いたり
古本屋で安く買ったものなので

新作は読んでいないに等しいですのですが

本を読むのは大好きです

いえ

新聞も毎日欠かさず読むので
文字を読むのが大好きなのかもしれません

昨年66冊読んだ中で

印象深く脳裏に焼き付いている作品が何冊かありますが

今回はこれ
ダフネ・デュ・モーリアの『レベッカ


こちらは
1940年にヒッチコックが監督で映画化され
2020年にも別の監督によりリメイクされたようです

1938年に発表されたこの作品には
主人公の名前が出てきません

この斬新さに

ストーリーの中盤に気づき
名前を探して何ページも戻し読みするという羽目に陥りました

ストーリーを大まかに説明すると…

妻を事故で無くした男性マキシムと
若い女性が恋に落ち
結婚するのですが

彼はとても大金持ちの貴族で
後妻となった主人公の女性(わたしと表現されている)は
大豪邸のお屋敷で住むことになります

お屋敷内は先妻であるレベッカの趣味で整えられており

そのお屋敷で働く使用人たちの中には
レベッカのお付きの使用人で
彼女の死後もお屋敷を取り仕切るダンヴァ―ス夫人には馴染めず

主人公の女性(わたし)は
先妻レベッカの見えない影に精神的苦痛を感じ
追い詰められていくのですが
夫となったマキシムの隠された真実も明らかにされて・・・


主人公はごくごく普通の二十歳そこそこの女の子で
貴族の生活には楽しみが夢いっぱいに広がるのに
様にならないぎこちなさが垣間見えると思わず応援したくなります

そしてタイトルの『レベッカ』が
主人公の名前ではなくすでに亡くなっている先妻の名前というところも
衝撃的でした
レベッカという女性の人間性も私の想像を裏切ってくれて
とても面白い作品でした

読み進めていくうちに
映像化するとこのシーンはどんな感じだろう❓と想像するところが多々あり🎥
読み終えてすぐDVDを購入し鑑賞しました


1940年での映像化には限界があることは承知して観ましたので
非常に楽しめました

レベッカが回想として出演するのかなと期待していましたが
それは無い方が良いとヒッチコックは判断したのでしょう
そこは個人的に残念でした

東日本大震災から11年です。何を思いますか?

2022-03-11 13:39:00 | 本を読む
こんにちは
Sujaです

先週
図書館のDVDコーナーで
たまたま見つけた映画作品を借りました

タイトルは
『遺体~明日への十日間~』

東日本大震災で未曾有の災害にあった
岩手県釜石市が舞台となっています


廃校になった小学校の体育館に
次々と運ばれてくるご遺体

ご遺体の扱いやご遺族の接し方もままならない市の職員たちに
元葬儀社社員だった主人公(西田敏行)が
率先してボランティアとして働くストーリーです

この映画を観て
はたと気付きました

災害時の避難所などでは
役所の職員が
管理やまとめ役として配置されるのですが
ご遺体の安置所においても職員の人たちが配置される…

人の死に直面することなどあまりない役所の人間が

想像を絶するご遺体の姿に
どうすればいいのか茫然とするのは
当然のことだなと理解しました

人としての尊厳を重んじていても
状況に圧倒されて何も出来なくなることも理解できました

主人公は
ご遺体に話しかけ
濡れた毛布を取り換え
死後硬直した筋肉をほぐしながら姿勢を正して差し上げます

この映画は
石井光太さんというジャーナリストが書いた
『遺体~震災、津波の果てに~』
を元に制作されたものです


映画の中で
所々、リアル感があり
心打たれるセリフがあるのですが

書籍を読むと

実際に語られた言葉だと知り
本当に胸の詰まる想いになりました

テレビでの報道や新聞などで状況を知っていても
想いは共有できないのだと
今更ながらですが、理解しました

あの状況を経験した人の気持ちを
そう簡単にわかることなど出来ないのです

ただただ想像し
察することしか出来ません

東日本大震災から今日で11年になりますが
あの未曾有の災害を経験した人たちは

大変な事がいくつも有りながら
へこたれず
負けずに
前を向いて生きている

その人たちの姿から
私たちは
生きる勇気を与えられていると感じます


3月11日が来るたび
震災の犠牲になって亡くなってしまった方々へ祈りを捧げると共に
【いのち】を考え
【自然】を考え
【周りの人】の事を考える日になっています