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《東ニ病気ノコドモアレバ行ツテ看病シテヤリ》(「賢治詩碑」、平成27年10日5日撮影)
去る平成30年5月11日、
一般論として真実ではないこと、偽りのこと、極論でいえばウソというものは、それを発言した人にとどまることなく、第三者、他人を巻き込んでいく。
と、そして、 職員には地方公務員としての誇りやプライド、人間としての誇りやプライドもある。そこにも思いをはせてほしい。
と痛烈に言い切り、部下を守ろうとする毅然とした愛媛県の中村時広知事の記者会見がTV画面に流れていた。私は、流石と、人の上に立つ人はこのような人どであらねばならないし、そのような人が現実にいたのだと、抃舞した。しかも私は今、宮澤賢治の「真実」を主張しているが故にだろうか、学会のお偉方から理不尽な仕打ちを受けているだけに、ふと弱気になってしまうことがある自分をこれで励ますことができたからなおさらにであった。
そして、部下を守る同知事のこの発言は頗る天晴れだが、それは、「強権」に媚びることなく「真実」をこそ大切にするという同知事の姿勢の裏返しでもあろうから、できればその学会にもこのような人がいないだろうか、などとちょっと希ってもみた。
さらに、同知事の「ウソは他人を巻き込んでいく」という意味の発言も私には響いた。それはまさに、高瀬露に関しては、「真実ではないこと、偽りのこと。極論でいえばウソ」で塗り固められた『宮澤賢治と三人の女性』によって、客観的な根拠がないのにも拘わらず、結果的に露はとんでもない〈悪女〉にされてしまっているという実態があるからである。まさに同知事が憂えていることと同様で、その「ウソ」によって他人(露)をとんでもない事態に巻き込んでいったと言えるのである。
たしかに「ウソは他人を巻き込んでいく」し、結果とんでもないことまで引き起こしてしまう。賢治がそう願ったわけでもないはずなのに、何者かの思惑によって高瀬露の場合はそのウソに巻き込まれ、結果濡れ衣を着せられ、しかも重大な人権問題だというのに、いまだそれは晴らされていない。だからこそ、田舎の老いぼれ老人ではある私は、この度『本統の賢治と本当の露』を出版したのであり、その最大の目的は露の濡れ衣を晴らすためなのである<*1>。そしてその心情は、いみじくも中村知事が「職員には地方公務員としての誇りやプライド、人間としての誇りやプライドもある」と述べられていることとほぼ同じである。「中央」がこの重大な人権問題を等閑視しているから、「地方」の私はそれをやらねばならないし、もしかすればできるかもしれないと思っているのである。賢治に関する「真実」を知ってしまった「地方」の人間の矜恃が私をしてそうさせている。一人の人間として、そう簡単には誇りやプライドを捨て去るわけにはいかない。
また、同じく5月17日のあるTV番組で、一人の男性が勇気を持って語っている姿に私は感銘を受けた。その男性は、今大きな問題となっている「旧優生保護法のもとで取り進められた、障害者に対する不妊手術を実際に推進した」当事者の一人であり、
当時は何等疑問に思わずにお国のためにと思って一生懸命に取り組んだのだが、今になってその過ちに気付いた。そこで自分は今なすべきかを考え抜いた結果、当時のことを正直に公の場で語ることだ。
という意味のことを、顔も隠さずに正直に淡々とお話しなされていたからだ。まさに、箴言「過ちては改むるに憚ること勿れ」を地で行っているこの方の身の処し方に、過ちに気付きながらもつい取り繕ってしまいがちな私は、頭の下がる思いで番組を観ていた。もともと、私自身に無誤謬性を求めることは始めから無理なことは分かっているつもりだから、せめて過ちに気付いたならばこの人のようにありたいものだ自分に言い聞かせた。
それと同時に、従前の定説に対してこれには反例がございますよと異議申し立て<*2>をしても、何等再検証もせずに、その上逆に「学会に反対する人物」だと嘲弄したり、個人攻撃をしたりするという構図をもつ世界<*3>を私は嘆かずにはいられない。この箴言とは真逆のことが今そこで行われているからだ。
<*1:註> ちなみに、
さて、ここまでの私の一連の検証結果は現「賢治年譜」等とは大分異なっていたり、果ては正反対だったりということで、そう簡単には世の中から受け容れてもらえないであろうことは充分に覚悟している。そこには構造的な問題が横たわっていそうだからである。そこで、第一章の〝2.「賢治神話」検証七点〟等の真偽についてどう決着がつくかはまだまだ時間を要するだろうから歴史の判断を俟つしかないと思っている。しかし、巷間流布している〈高瀬露悪女伝説〉がもし捏造されたものであったとするならば、この件だけはそうはいかない。それは人権に関わる重大な問題であり、同〝2.〟の㈠~㈥等とは根本的に違うからである。そして懸念していたとおりで、この伝説は捏造されたものであることを私は実証してしまった。本章ではそのことをこれから報告することによって、本当の高瀬露を明らかにしてゆきたい。
〈『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版)111p〉<*2:註> 例えば、
露は客観的な根拠が全くないのにも拘わらず理不尽なことに〈悪女〉の濡れ衣を着せられてしまったのだった。よって、現状の〈悪女・高瀬露〉の全国的流布は冤罪であり、「賢治伝記」上の看過できぬ瑕疵である、と私は異議申し立てをしたい。
〈『本統の賢治と本当の露』135p~〉というように。
<*3:註> 残念なことだが、現実には、
私の検証結果は賢治の「年譜」や「定説」そして「通説」とは異なるものが多いし、たとい「仮説検証型研究」という手法で検証できたからといってそれが100%正しいと言えるのかと訝る人も多かろうから、今直ぐにはそれは無理だろうということは充分承知している。
〈『本統の賢治と本当の露』106p〉
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《『本統の賢治と本当の露』の広告 》(平成30年5月1日付『岩手日報』一面下段)
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この度、『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税))
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を出版いたしましたのでご案内申し上げます。
本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものです。
現在、岩手県内や東京の書店におきまして販売されおりますのでどうぞお買い求め下さい。
あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
電話 0198-24-9813
なお、〈目次〉は以下のとおりです。
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