宮澤賢治の里より

下根子桜時代の真実の宮澤賢治を知りたくて、賢治の周辺を彷徨う。

〈一〇六三〔これらは素樸なアイヌ風の木柵であります〕〉

2016年10月02日 | 『詩ノート』
一〇六三   〔これらは素樸なアイヌ風の木柵であります〕       五、九、
   これらは素樸なアイヌ風の木柵であります
   えゝ
   家の前の桑の木を
   Yの字に仕立てて見たのでありますが
   それでも家計は立たなかったのです
   四月は
   苗代の水が黒くて
   くらい空気の小さな渦が
   毎日つぶつぶそらから降って
   そこを烏が
   があがあ啼いて通ったのであります
   どういふものでございませうか
   斯ういふ角だった石ころだらけの
   いっぱいにすぎなやよもぎの生えてしまった畑を
   子供を生みながらまた前の子供のぼろ着物を綴り合せながら
   また炊爨と村の義理首尾とをしながら
   一家のあらゆる不満や慾望を負ひながら
   わづかに粗渋な食と年中六時間の睡りをとりながら
   これらの黒いかつぎした女の人たちが耕すのであります
   この人たちはまた
   ちゃうど二円代の肥料のかはりに
   あんな笹山を一反歩ほど切りひらくのであります
   そして
   ここでは蕎麦が二斗まいて四斗とれます
   この人たちはいったい
   牢獄につながれたたくさんの革命家や
   不遇に了へた多くの芸術家
   これら近代的な英雄たちに
   果して比肩し得ぬものでございませうか
             <『校本宮澤賢治全集第六巻』(筑摩書房)160p~より>
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《鈴木 守著作案内》
◇ この度、拙著『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)が出来しました。
 本書は『宮沢賢治イーハトーブ館』にて販売しております。
 あるいは、次の方法でもご購入いただけます。
 まず、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければ最初に本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円、送料180円、計680円分の郵便切手をお送り下さい。
       〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守    電話 0198-24-9813
 なお、既刊『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』につきましても同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。

『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』   ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』   ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』

『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』            ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著)

◇ 拙ブログ〝検証「羅須地人協会時代」〟において、各書の中身そのままで掲載をしています。


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