野間口徹さん主演、「VRおじさんの初恋」。
野間口さんは随分前から様々なドラマの脇役としてお馴染みの人だったが、ずっと名前を知らなかった。
何年前のことだったか、まだ息子が学生の頃だったと思うが、その時私が見ていたドラマに「野間口さんが出ているんだね」と息子が何気なく行った一言で、彼の名前を知ったのだった。
あまりドラマを見ない息子が注目している俳優という事で、子供が関心を持つモノにすぐに寄り添う母は、それ以来野間口さんを何と無く意識する様になった。
それで今回の夜ドラ「VRおじさんの初恋」も何気無く見始めたのだった。
会社では年下の上司に叱られている、さえないおじさんの遠藤直樹(野間口さん)が、帰宅後の楽しみは若い女の子のアバターになって、ひと気の無いVR(仮想現実)の世界で過ごす事だった。そこで、ホナミという美女のアバターと出会い、一緒に時を過ごすうちに、人生で初めて恋をするという展開だ。
そこまでは、何気無く見ていたのだが、ホナミが「もう会えない」と言ったことから、ナオキは現実世界のホナミに会いに行き…。
そこからは、ドラマの展開に興味津々で、平日の10時45分がとても楽しみになってきた。
これまでの人生あまり良いことが無かったと想像される、さえない中年のおじさんの初恋…そこからの展開が私には面白すぎる。
どうなっていくのか…たった、15分のドラマなのだがそこはNHK、毎回見応えが十分だ。やっと、物語の全体の半分に差し掛かったところだ。
現実が上手く行かなかったり、面白くないと現実逃避してしまう。
私も若い頃はそうだった。当時はVR等は無かったから、もっぱら映画を観たり、小説の世界へ浸ることで、日常から逃げていたなあと懐かしく思い出す。
VRには縁遠い私だが、娘が学生の頃に一度だけ体験したことがある。
二人でデパートに行った時、そのフロアーから何度も悲鳴が聞こえ、それに導かれる様にVRの体験イベント会場の前に行ったのだった。
悲鳴は、「血塗られた廃病院」での恐怖体験真っ最中の女子達の声だった。
私の好物、ホラー体験。でも娘はホラーが苦手。
VRの体験は他にもオートバイや川下りなどがあったが、体験するならやっぱりホラー。それを見抜いていた娘に促され、苦手なのに付き合ってくれた。
体験料は、一人1,200円位だったと思うが、またとない機会だ。二人で電車の様な空間に入り、シートに座りゴーグルを付け、ヘッドホンも装着したような気がする。
椅子が振動し、廃病院の中へ進み、おどろおどろしい光景が見える。右へ左へ首を動かすと周囲が全てヴァーチャルの世界。奥行きがある。
手元のレバーでコントロールしながら、病院内の好きな方向へ進むことが出来る。
はたから見たら実際のところ、私達はただ固定されたシートに座っているだけなのだろうけど…。
古びた病院内はどこもかしこも惨劇があった様に血塗られて、濃度のある血液が滴り落ちる音がした。おまけに予期せぬところから、不気味な血だらけの怪人が出てきて、私はデパートの一画のイベントであることも忘れて、盛大に何度も悲鳴を上げた。
終いには、恐ろしく大きな刀剣を振りかざした不気味な男に、脳天を割られてジ・エンド。その瞬間は、頭上に振り下ろされる刃物に一瞬身をすくめ、目をつぶった。最大の恐怖感だった。
ゴーグルを外し、恐怖の緊張がとけて、私はやたらと笑ったのを覚えている。楽しい恐怖体験だった(笑)。
体験した内容こそ違え、そんなVR体験があったからこそ、余計に「VRおじさんの初恋」のドラマにひかれるのかも。
「VRの世界」と「現実の世界」とが交差して行く、何とも奇妙な感覚が、ドラマを見る快感であるのかも知れない。
ああ、また私もVR体験してみたいなあ。今度は恐怖じゃなくて…不思議な世界を見てみたい。