社内旅行を終えて、帰るまでの僅かな時間を利用して、札幌の街を二人でぶらついた。
昨年娘が帰省した時は、クレープ・シュゼットをごちそうになった。クレープ・シュゼットはいつか食べてみたいと思いながらも、中々手が出せなかったデザートだった。娘が私のささやかな夢を叶えてくれた。
そして今年は、札幌でも評判のシメパフェの店に行こうという。
シメパフェと言えば、最近情報番組の中で見た3,000円ほどのパフェが記憶に新しかった。3,000円のパフェは、私にとって身の丈に合ったパフェとは言えない。そんな頭にふとよぎった思いを、これから奢ってくれるという娘に向かって、ゴタゴタと言った。
娘がネットで調べながら、
「そんなに高くないパフェもあるよ」と言った。その一言で、先ずはとにかく行ってみようという事になった。
そこまでの一連の事を振り返ると、我ながらこだわりが強く、面倒臭い母である。
娘の案内で、駅前のデパートの飲食店のフロアーへ行き、暖簾のかかったお店に着いた。お店の名前を見て、
「あーっ、ここ、一度来てみたいと思っていたところだ！」
と思わず声に出た。
本店はすすきのにあるお店だと思うが、人気で駅前に出店したらしかった。
お店の中はカウンター席のみ。ピスタチオを使ったパフェが有名だということだった。
メニューを見てみると、良さげなパフェがあった。パフェと飲み物で1,500円ほど。これなら私の身の丈にあった値段だと思った。パフェの量も、値段に見合った物だと納得がいった。
私はケチな人間だろうか。
けち…中学生の時から使っている旺文社の国語辞典によると、
やたらに物をおしむこと。しみったれ。また、そういう人。
この定義から言うと、私は必要な時には必要なお金をすんなり出すし、やたらに物をおしむわけではないと思うのだが。
お金を使う時に支払う対象が値段に見合っているかどうか、納得がいく値段かどうか、よく吟味するクセがついているだけだ。それが私にとっては大事なのだ。尚且つ、自分の身の丈にあったものかどうか、そこも重要だ。
今から40年以上も前、OLだった頃、給料から実家へ月1万円か2万円を入れ、残りの給料を好きな様に使っていた。
一度、クリスマス時期だからと奮発して、フレンチレストランで当時8,000円のスペシャルディナーを食べた事があった。
フレンチと言えば、大きなお皿にチョコっとちっちゃいのがのってくるお料理である。8,000円ということもあり、前菜、スープ、魚料理、肉料理とフルコースで出たに違いないのだが、その時のコースメニューで記憶にあるのは、デザートのスフレだけだ。お腹が一杯で、やっとの思いで食べたスフレしか覚えていない。
何度か行っていたお店なので、コースメニューは美味しかったのだと思うけれど、後から思ったのは、8,000円も出して食べる事も無かったなと言うのが本当のところだ。
それ以来、外で食事をする時の金額に、何となく身の丈に合った限度額を設けるようになった。
そして今や、お気楽だったOL時代とは違い、シビアな年金暮らしである。
家計簿で言うと本来外食は「交際費」に入ったりもするが、夫婦で食べる外食は我が家では「食費」に含めている。
食費は総収入の20%から25%が理想的らしい。それに照らすと、出来れば20%に抑えたいところだが、毎回足が出て、どうしても25%になってしまう。
人によっては私はケチ臭い、器の小さい人間だと思われるかも知れないけれど、お金に限らず、限りある原資を有効かつ不足する事が無いように使うのは、人の使命だとも思っている。
これは子供の頃欲望のままに散財した反動の様な物だと思う。子供の頃の私は物欲の塊だった。何でも欲しがり、もらったお小遣いはすべて使い、さらに多くのものをねだり、父に買わせた。
身の程を知らずに父に「アメリカのディズニーランドに行きたい」「動物を見にアフリカに行きたい」等とねだりもしたが、結局、OLになって東京ディズニーランドで我慢し、アフリカ行きについては、アフリカへ行った知人が「出国する前に何種類もの予防接種をした」という事実に怖じ気付き、円山動物園で満足するようになった。
こうして私はこれからも身の丈にこだわりながら生活していく事と思う。実際の身の丈(身長)が骨粗鬆症で縮めば、信条の方の「身の丈」も縮むかも知れない。胃袋の方も縮んで行くだろうし。でも、人としての器は小さくならない様にしたいと思っている。
