野鳥を観察して冷え切った身体を温めるため、雪道を走ってスーパーへ向かった。その雪道は走るのに問題ないコンディションだった。
途中アップルパイが食べたくなって、お菓子屋さんに寄り、サックサクのアップルパイを買ってからスーパーへ。
買い物を終えて脇道へ入った時、道は車のスタッドレスタイヤで圧雪されて氷の様にツルツルになっていた。
いつも履いている革ブーツは滑らない。その事を常々夫に自慢していた。その滑らないはずのブーツで盛大に道路で転んだ。初転び。尻もちだったから良かったが、咄嗟についた両手の手首に負担がかかった。
壊れやすい「硝子の老年時代」へ突入中の私。壊れやすいんだから、お尻を守るより今度から手首を守らなくちゃ。
数年前、友人は足元が滑っただけで、転びもしないのに足首を折った。前の職場の方も昨年転び方が悪く、大腿骨の辺りを骨折した。
雪の上で転ぶのと違い、氷点下で氷に変化した地面は硬い。冬場の道に慣れた北海道人にとっても大変危険な路面状態だ。
通りかかった優しい女性に「大丈夫ですか」と声をかけられた。その一言がありがたかった。
実は数日前、私も年配の女性が転ぶ場面に遭遇していた。
傾斜のきつい坂道だったので、女性はなかなか起き上がる事ができなかった。それで私も声を掛けながら、手を差し出して立ち上がるお手伝いをしたのだった。
今日は特に滑る日だったらしい。
帰宅してから夫に滑って転んだことを話していると、テレビのニュースでも、路上で転ぶ人達の姿が次々映し出されていた。私だけじゃなかったんだな。札幌市内全般がツルツル路面だった様だ。
昨日まで若干気温が緩かったのが、今日のツルツル路面の原因だ。
車の冬用のタイヤがスパイクピンのタイヤからスタッドレスになって以来、道が滑りやすくなっているのも問題だ。
横断歩道の白線も非常によく滑る。あの白線を引く為の塗料、北海道仕様の滑らない素材を開発できないものだろうか。あの白線の上に粉雪でもうっすら積もろうものなら、100%滑って転ぶ。
道路上にある金属製のマンホールもよく昔滑った。
冬の路面は危険がいっぱいだ。
ラインで息子に初転びの報告をしたら、息子はすでに3回転んだと返ってきた。
息子の住む苫小牧は雪は少ないが、札幌より気温が低い事が多いので、本当に路面がツルツルだ。
かつて私も学生時代に苫小牧に住んでいたことがある。
高校生の時、滑って転んだ瞬間に右膝をつき、膝の皿の骨を一部骨折した事があった。
転んだ直後はものすごく痛かったのだが、腫れもしないのでそのままにしていた。その時は、まさか骨折しているとは夢にも思っていなかった。
ただ、膝のその部分がテーブルの角に当たったりすると、飛び上がるほど痛かった。何故こんなに痛いのかとは思っていたが、ぶつけなければ何事も無く日常を過ごせたので、そのままにしていたら何とか治った様だ。ただ、痛みがなくなった後、膝のお皿の欠けた部分が分離しているようで、皮膚の上から触ると小さな範囲でカケラが移動した。それも数年経つうちには、自然に接合した。
人間の治癒力はなかなかのものだ。
その膝の一部を骨折していたのを知ったのは、それから30年ほど後の事だ。
たまたま膝のレントゲンを撮ったときに、医師に「以前膝を骨折しましたね」と言われて、初めてあの時骨折していた事を知った。自分ものんきなものだと思う。
これから歳を重ねる毎に、足元も弱まっていく。転んだら寝たきりへつながるリスクも高くなる。
冬道のウォーキングも気をつけながら続けて行かなければならないなと、気を引き締めた。
夕食後のデザートタイムに買ってきたアップルパイを開けてみた。
サクサクのパイが崩れて欠けていた。転んだ時の衝撃だな。さしずめ私の身代わりといったところか。
パイ本体を取り出した後、やれやれと思いながら、袋の中のパイの欠片を口の中に全て振り入れた。もったいないもんね。