最近毎日神社の入口の前を通る。
足元に銀杏の実。見上げると、まだイチョウの木に銀杏の実がついている。
歩道の上、降り積もった傍らの雪の中、あちこちに落ちてる。
去年、ここで拾った銀杏を茶碗蒸しに入れて大晦日に食べた。
市販のものよりクセがなく柔らかく、優しい美味しさだった様に思う。
その銀杏の大木があるのは国道の交通量が多い幹線道路だ。
日々通る自動車の排気ガスを吸い込んで、銀杏の実に影響してるかも知れないし、食べたら毒かも知れない。そう思う一方で、毎日食べるわけじゃ無いんだし、せっかくの自然の恵みなのだから…と少し不安を抱えながらも、もう一度だけ食べようと思った。
出かける時に、夫からポテトチップを買うよう頼まれていた。
スーパーに行ってポテチを買ったら、ポリ袋を余分に1枚もらって銀杏を拾おう。銀杏の実の匂いは強烈なので、おいそれとはさわれない。
スーパーへ行ってみると、週に1度の特売日だった。見過ごせない。
ポテトチップ1袋のはずが、両手に大荷物となった。
スーパーから出て、銀杏の木まで引き返す。
靴底で銀杏の果肉と種を分離させ、種をポリ袋で拾う。10個ほど拾って帰り道。いつもとは逆方向の道。
曇天の上に、日もやや暮れかかる。
このまま道なりに帰ると遠回りになる。天神山緑地の道を横切って近道しようと考えた。
夏場は良く散歩した道だが、雪道となると少々勝手が違う。
除雪されていない道。誰かが足で踏み固めた細い雪道。まるで平均台を渡るように、両手の荷物でバランスを取りながら進む。
道はあちこちへ枝分かれし、途中2匹の犬を連れた女性と遭遇した。
2匹のうち1匹のビーグルが立ち止まって動かない。こちらへ顔を向けている。私と犬までの距離は4~5メートル。
飼い主の方が「〇〇ちゃん、ほら行くよ」と数回声をかけるが、なかなか動かなかった。私がいるからかしら。
そんな事を考えながら、自分の行くべき道をどんどん進む。
真っ白な雪の上、迷路の様にあちこち枝分かれする道。雪原に一人ぼっち。
かたわらの林からカサカサカサと音がする。不安になって、辺りを立ち止まって見渡す。
大きな枯れ葉が付いたままの小さな木があった。風に吹かれてこすれた枯れ葉の音だった。
ああ日が暮れる。急がなくては。
なれない道をヨタヨタ歩いていると、少し先の林に鮮やかなきつね色。
キタキツネ!
天神山にキツネがいたとは。一瞬ボー然。あ、写真でも撮るか。スマホを出す。狐は逃げる様子もなく、私の進行方向の細い雪道に鎮座し、私と対峙した。
先程、ビーグルが立ち止まったのは、きっと狐の匂いに気づいていたのかも知れない。さすが猟犬だ。
可愛い顔して、狐がこちらを見ている。これは誰かに餌をもらった事がある様な雰囲気だ。
今日、特売で夫の好きな魚肉ソーセージを買った。あー、狐にあげたい。ダメダメダメ、絶対駄目!野生動物にエサやっちゃダメ。御法度。グッとこらえる。
私の心を読み取ったか、ちょこんと座っていた狐はもと来た林の中へ消えて行った。
私はスマホのシャッターをきり続けていた。
そう言えば、自宅マンションのそばでも随分前に狐を見かけて驚いた事があった。
藻岩山からこちらへ移動して来たのか。もしかしたら、住宅地のゴミなんかをあさりながら、ここまで生き延びているのかも知れない。
野生のキタキツネを見ることが出来て、とても嬉しかったが、今後の事も気になった。
キタキツネはエキノコックスの感染源であると言われている。彼らの“落とし物”糞の中にエキノコックスの虫卵が潜んでいる場合があるからだ。人の手指についたり、食物や水を介して口から入ると、エキノコックス症を発症してしまう。それも初期症状が現れるまで成人で10年かかるというのだから厄介だ。
狐が生息する場所での沢水は決して飲まないほうが良い。エキノコックスの虫卵が川に含まれている可能性があるから。
夫が20代後半の頃だったか、仕事で山に入り「のどが渇いたので沢の水を飲んだ」と帰宅してから聞いて、私は「エキノコックスにかかるかも知れない。症状が出るのは10年後だよ」なんて言いながら、すっかり忘れていた。症状が出ていないから、沢の水大丈夫だったんだなと、今頃思い出して検証したかたちとなった。
犬にも感染するので、ワンちゃん達も注意が必要だ。
夏場天神山緑地の芝生にじかに座るのは気をつけた方が良さそうだ。
手洗いはコロナで習慣づいているので、大丈夫そうだけど。
キツネの生息域に暮らしている方はご注意を。