それは3本の電線がこの所の暴風雪のせいなのか、ダラ~ンとU字型にたるんでいる。
降雪量が多かったので、地面も積もった雪で30センチ以上は高くなっている上に、車道を除雪した雪が積んである雪山も、かなり高くなっている。その雪山にあと少しでつきそうなほど、電線がたるんでいるのだ。ちょっと手を伸ばせば私でも届く位置にある。
電線。感電。危険!
雪山に登ろうとする子供もいるだろう。誤って手を触れたら大変だ。すぐ連絡しないと!
私が緊急事態だと慌てる側で夫は「大丈夫じゃないの」とのんびり構えている。
何か起きてからでは遅い。
帰宅後直ぐに連絡すべき場所を検索。
ほくでんネットワークを通じてフリーダイヤルから連絡した。
場所と状況を伝え、「電線に触れたら感電しますよね」と私は確認した。
その時北電の方が「電線じゃなくて、ケーブルの時もありますからねぇ…」と言う。
ケーブル。そうか、電線と一口に言っても、電気が通っているものばかりでは無い。電話線もあるのだった。自分の無知を思い知った。
電線について知っている事と言えば、むかし流行った「電線音頭」位のもので、なんの知識も無い。電線とケーブルを見分ける事も当然出来無かった。
電力会社の方には、「もし、ケーブルだったら申し訳ありません」と先に謝った。
現場の状況はこれから見に行ってくださるとのことだ。
「結果を報告しますか」と問われた。
瞬時に色々考えた。
もし、電線だった場合の報告内容を妄想する。
「ご通報ありがとうございました。安全に処置を施しました。今後このようなことが無いように気を付けます。」
というような連絡が来るだろう。
いやいや、この様な報告を受けるまでも無い。通報した以上ちゃんとやってくれるはずだから、わざわざご報告いただく必要もない。
また万一ケーブルだった場合
「ご指摘いただいた場所を確認したところ、ケーブルでしたので…」という報告も、それこそわざわざご報告いただく必要がそもそも無いし、申し訳無さに肩身が狭く、恐縮してしまう。
結局報告は不要である旨お伝えし、再度「ケーブルだったらごめんなさい」と重ねて謝って、電話を切った。
考えてみれば、あんな低い所に感電する様な危険な線を、そもそも設置するわけが無いよなぁと反省。
通報したのはお昼ごろ。それからどうなっただろうかと、気になった。暗くならない内にこの目で確かめようと思い、3時半頃、現場を見に行ってみた。
3本のたるんでいた線が、3つに束ねられて綺麗に整えられていた。
勘違いから始まった事ではあったが、どっちにしても電話して良かった。
もしかしたら、近場の人が適切な所へ連絡して、業者さんを呼んだ結果だったかも知れないけれど。
その場にしばらく佇んで、うまれて初めて電柱の電線類をじっくりと眺めて見た。
おびただしい量の電線だ。
ちょっとだけ調べてみたら、大まかに一番高い所にあるのが「高圧配電線」、ついで「低圧配電線」、一番下がインターネット、電話、ケーブルテレビなどの「通信線」、つまりケーブルと言うらしい。
ケーブルをたどってみると、個人宅にそのまま線が繋がっている場合もある。電気が通った電線なら、そんなこと無いもんなあ。垂れ下がった3本の電線は、明らかにケーブルだった。
電力会社と通信会社は電柱を共有する部分もあるから、今回の様なケースでは電力会社が確認した事実を通信会社に連絡するのだろうか。
子供の頃から知っていると思っていた電信柱について、ちょっとだけ知識を得た。
ちなみに関西電力によると、電柱の種類は電気の送電線がかかっているものを「電力柱(でんりょくちゅう)」、インターネット、電話など通信線がかかったものは「電信柱(でんしんばしら)」、送電線と通信線の両方がかかっているものを「共用柱(きょうようちゅう)」と言うらしい。
こんなに長いこと生きてきて、まだまだ知らない事ばっかりだなあと、自分の無知を改めて認識した出来事だった。